税金

就業者負担軽減支援金とは ― 2027年4月に始まる給付は誰に届くか

2026年(令和8年)9月8日、内閣官房の「「給付付き税額控除」に関する国と地方の協議の場」(第3回)に、**「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(案)」**が示されました。全16ページです。その3日後の9月11日、第4回の協議の場に、同じ題名の修正版が示されています。 どちらも日付欄が「令和○年○月○日」のままの「案」でした。

そして2026年9月15日、この大綱は閣議決定されました。

この記事は9月11日版の大綱(案)を読んで書いたものです。 閣議決定版(令和8年9月15日)と全文を突き合わせ、字句が動いた4か所は本文の引用を差し替えました(一覧は末尾の【2026年9月16日 追記】)。それ以外の引用は、案と閣議決定版で一字も違いません。以下の「大綱(案)」という表記は、いまは「大綱」と読み替えてください。 以下の引用はすべて9月11日版(第4回・資料2)で確認しています。 9月8日版との違いは、かぎ括弧の位置や「市町村」を「市区町村」に直すといった表記の整理が大半で、支給要件・支援額の決め方・費用の負担割合に変更はありません。実質的に足されたのは2か所です。ひとつは消費税側で、レジシステムの移行・改修を行う中小企業等への支援と「緊急時における消費税率の変更に柔軟に対応できるシステムの普及促進」(第二 一6(注))。もうひとつは検討事項で、国と地方の役割分担について「国の役割を拡大する方向で」「本制度の導入後速やかに」協議するという文言(第四 四3)が加わりました。

食料品の消費税を1%にする措置と一緒に語られてきた「所得に連動したきめ細かな給付」に、名前が付きました。「就業者負担軽減支援金」です。

こうした考え方の下で、必要な法制上の措置等を可及的速やかに講ずるため、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」を以下のとおり、定めることとする。

2026年8月5日に閣議決定された基本方針では、給付は「所得に連動したきめ細かな給付」としか呼ばれていませんでした。大綱(案)は、そこから一段細かいところまで書いています。 支給要件は四つ、支援額の決め方は六段階、認定と支払いの手順、費用の負担割合まで並んでいます。

それでも、いちばん知りたいことは書かれていません。

結論

決まったのは「もらえる条件の形」と「どう届くか」であって、いくらもらえるかではありません。

条件の骨格は具体的です。所得に下限と上限があること、税と社会保険料の負担が一定以上あることが要件に入っていること、配偶者の所得も見ること、子どもの数で額が変わること。そこまでは読み取れます。

ところが、その条件に入る数字と、支援額そのものは、ひとつも入っていません。 大綱(案)は該当箇所のたびに「検討して定める」と書いています。多くには「恒久財源の確保と併せて」という条件まで付いています。財源の議論が終わるまで、自分がいくら受け取れるかは計算できません。

もうひとつ、条件の適用が最初の2年と3年目以降で違います。 使わない要件があり、子どもの数え方も狭くなっています。同じ制度の名前で、当初と本格導入では対象が変わります。

一方で、届き方は決まりました。 手続きの主体、回数、税金がかかるかどうか、差し押さえられるかどうかまで書かれています。そして請求しなくても認定される道があり、その分かれ目は今日の時点で確認できます。

以下、大綱(案)の原文で順に確認します。

計算の前提

項目内容
主資料内閣官房「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(案)」(「給付付き税額控除」に関する国と地方の協議の場・資料2)
資料の日付第3回(2026年9月8日)で初めて示され、第4回(2026年9月11日)に修正版が提出。引用は9月11日版による(どちらも日付欄は「令和○年○月○日」のままの案だった)。2026年9月15日に閣議決定され、閣議決定版と突き合わせて字句が動いた4か所を差し替えた
状態令和8年9月15日 閣議決定済み。法律はまだない(案の段階で7か所に付いていた「(地方と協議中)」は、閣議決定版では全部消えている)
税制パラメータ令和8年分(給与所得控除の最低保障額74万円)
社会保険料協会けんぽ令和8年度・東京都(9.85%)+子ども・子育て支援金(0.23%)+厚生年金保険料率(18.3%)+雇用保険料率(労働者負担 5/1,000)。40歳未満・介護保険第2号被保険者でない場合
最低賃金厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金全国一覧」
本記事は給付側(支援金)だけを扱います。食料品の消費税1%の側は「食料品の消費税1%は2027年4月から ― 我が家の食費はいくら変わるか」と「食料品の消費税1%、何が対象で何が対象外か」で扱っています。

もらえる条件は四つ。最初の2年は三つしか使いません

大綱(案)「第三 就業者負担軽減支援金の支給等」の「一 支援金制度の導入」「1 支給要件」が、対象者を四つの要件で定めています。

(1)個人を単位として支給することとし、諸外国との比較を通じて純負担率の改善が必要であることが明らかとなった中低所得の現役勤労者に着目し、以下の①から④までの要件に該当する者を対象とする。

四つを整理すると、次のようになります。

#見るもの条件閾値の名前
①勤労所得(前年の給与収入に応じて算定した額+一定額を超える事業所得・業務に係る雑所得)閾値を超えること所得下限額
②前年の合計所得金額閾値以下であること所得上限額
③当該年度の住民税額を基礎として算定した金額+前年分の自己の負担すべき社会保険料に係る控除額 − 前年中の公的年金等の収入額閾値を超えること純負担基準額
④配偶者の前年の合計所得金額(基準日に配偶者がいた場合)閾値以下であること配偶者所得上限額
①の「一定額を超える事業所得及び業務に係る雑所得」の「一定額」にも、金額は入っていません。大綱(案)は「就労とみなせる水準として定める額を超える場合に勤労所得として合計するよう定める」としているだけです。事業所得や副業の雑所得がある人は、その所得が①に算入されるかどうかがまだ決まっていません。

これに加えて、住所の要件があります。

(3)(1)にかかわらず、支援金の支給要件に該当する者(以下「受給資格者」という。)が基準日現在において日本国内に住所を有しないときは、支給しない。

基準日は1月1日です。 大綱(案)は要件④の中で「1月1日(以下「基準日」という。)」と定義しています。

最初の2年間は、④を使いません

ここが見落としやすいところです。 要件の直後に、次の注が付いています。

(注)令和9年度及び令和10 年度の支援金については、上記①から③までの要件を満たす者を対象とし、②扶養児童については、16 歳未満の扶養親族とする(以下同じ。)。また、③純負担基準額及び就業促進特例加算(下記2(1)③)について、社会保険料控除額により適用する。

令和9年度・令和10年度令和11年度から
使う要件①②③①②③④
配偶者の所得を見るか見ない見る
扶養児童の範囲16歳未満の扶養親族19歳未満の居住者である扶養親族

配偶者の所得を見ないということは、最初の2年は「世帯としては高所得だが本人の所得は低い」ケースも、①から③を満たせば対象に入り得るということです。 逆に令和11年度からは、配偶者の所得が閾値を超えると本人が外れます。

子どもの数え方も、最初の2年は狭くなっています。 16歳未満なので、高校生年代の子は入りません。理由は閣議決定された基本方針が書いています。「子育て世帯への支援の観点から16 歳から18 歳までの被扶養者の情報を把握するなど、追加的な情報確保の仕組みも必要となる」ためです。

扶養児童の人数は、こども加算の額だけでなく②の所得上限額の判定にも効きます。大綱(案)は所得上限額を「19 歳未満の居住者である扶養親族(以下「扶養児童」という。)の有無及び数に応じて定める額」としているためです。子どもが多いほど、上限が上がる設計になっています。

「税と社会保険料を払っていること」が条件に入っています

要件③は、この制度の性格を決めている部分です。

③ 当該年度の住民税額を基礎として算定した金額と前年分の自己の負担すべき社会保険料に係る控除額との合計額から前年中の公的年金等の収入額を控除した金額が、我が国の純負担率の状況を考慮して定める額(以下「純負担基準額」という。)を超えること。

「一定額以下であること」ではなく、「超えること」です。 税と社会保険料の負担が軽い人は、この要件で外れます。

理由は目的規定にあります。

租税及び社会保険料の合計額から現金給付の合計額を控除した額の収入の額に対する割合(以下「純負担率」という。)を踏まえ、所得の額等に応じた支援金を支給することにより、働くことにより生活の向上を実感できる社会の形成に寄与することを目的とする。

払っている税と社会保険料に対して受け取る現金給付が少ない層を、狙って埋める制度です。 大綱(案)は続けてこう書いています。

具体的な純負担基準額は、所得下限額を超える現役勤労者が通常負担する税・社会保険料(被用者保険、国民健康保険等)の水準を踏まえて定める。これにより、就労し、純負担が現役並みである中低所得の高齢者も対象とする。

年齢で線を引かず、負担の重さで線を引いています。 働いていて現役並みの負担をしている高齢者は入り、負担が軽ければ現役でも入りません。

令和9年度・令和10年度は、この③を「社会保険料控除額により適用する」とされています。当該年度の住民税額の把握が間に合わない部分を、社会保険料控除額で代用する形です。

大綱(案)の「106万円」は、消えるほうの壁ではありません

大綱(案)は、支援額に上乗せする「就業促進特例加算」の説明で、いわゆる「年収の壁」を注記で定義しています。

(※2)令和7年度における全国で最も低い地域別最低賃金(時給1,023 円)に、被用者保険の短時間労働者の適用労働時間(週20 時間)を乗じて、年間の収入(所得)に換算すると、給与収入106 万円(所得32 万円)となる。また、この場合の社会保険料負担は約16 万円程度である。なお、国民年金第3号被保険者が年収130 万円になり、国民年金第1 号被保険者になった場合、税・社会保険料負担を差し引いた手取りが回復する水準は年収約160 万円程度。

時給1,023円は実在の数字です。 厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金全国一覧」で、高知・宮崎・沖縄の3県が1,023円で、これが全国で最も低い額です(全国加重平均は1,121円)。

そのうえで、この注記の計算を再現します。

1,023円 × 20時間 × 52週 = 1,063,920円

「給与収入106万円」はここから出ています。 では「所得32万円」はどうでしょうか。

1,063,920円 − 740,000円(給与所得控除の最低保障額)= 323,920円

32万円になりました。 ここで使った740,000円は、令和8年分の給与所得控除の最低保障額です。改正前の額で引くと、一致しません。

1,063,920円令和8・9年分74万円1,063,920円令和10年分以後69万円1,063,920円改正前65万円
令和8・9年分74万円令和10年分以後69万円改正前65万円
給与所得控除(最低保障額)740,000690,000650,000
給与所得(=所得)323,920373,920413,920
合計1,063,9201,063,9201,063,920

棒の高さは3本とも同じです(給与収入1,063,920円)。変わるのは色の境目の位置だけで、上の帯が「所得」にあたります。大綱(案)が書いた「所得32万円」になるのは、いちばん左の74万円で引いたときだけです。改正前の65万円で引くと41万円になり、原文と合いません。

給与収入1,063,920円(1,023円×20時間×52週)を、給与所得控除の最低保障額ごとに分けたもの。控除額は国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」による。

この注記は、令和8年分の税制を前提に書かれています。 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」は「給与所得控除について、65万円の最低保障額が74万円に引き上げられました」としており、その表では令和8年・令和9年分だけが74万円、令和10年分以後は69万円が下限になります。その改正を織り込んだ数字だということが、逆算で確認できます。

ただし、この106万円は「残っている壁」ではありません

注意が要るのはここです。 社会保険の賃金要件、いわゆる106万円の壁そのものは、無くなる予定です。厚生労働省は「賃金要件(いわゆる年収106万円の壁)は令和8(2026)年10月に撤廃予定」としています。

撤廃の理由も、大綱(案)の計算と同じ発想です。 全都道府県の最低賃金が上がったため、週20時間働けば自動的に月額8.8万円(賃金要件の水準)に届くようになり、金額で線を引く意味が無くなった、というものです。

つまり大綱(案)の「106万円」は、超えると保険料が発生する境目ではなく、「週20時間という適用ラインを金額に置き換えるといくらか」を示した参照値です。 賃金要件が無くなれば、106万円という金額そのものが判定に使われる場面は無くなります。

ただし「労働時間だけで決まる」わけではありません。厚生労働省の資料は、短時間労働者が社会保険に加入する要件を四つ挙げており、撤廃されるのは①の賃金要件です。残るのは「②週の所定労働時間が20時間以上であること」「③勤め先が従業員数(厚生年金保険の被保険者数)51人以上の企業であること(企業規模要件)」「④学生ではないこと」の三つです。ただし③も、残り続けるわけではありません。 同資料は「今後、企業規模要件も段階的に縮小、撤廃されます」として、51人以上(現在)→36人以上(令和9年10月から)→21人以上(令和11年10月から)→11人以上(令和14年10月から)→**10人以下(令和17年10月から)**という道筋を示しています。最後の段階まで進めば、勤め先の規模を理由に対象から外れる人はいなくなります。さらに同資料は、最低賃金法の減額特例の対象となる短時間労働者のうち月額賃金8.8万円未満の人は「原則社会保険に加入しない」としています。**ただしこの人たちも「申出により任意で加入することは可能」**と書かれています。 被扶養者の認定に使う130万円のほうは残ります。106万円と130万円の違いは「扶養の壁は2026年に組み替わる ― 106万円の壁が消える日」で整理しています。

社会保険料「約16万円程度」を計算する

同じ注記が書いている「約16万円程度」を、令和8年度の実際の料率で確かめます。月給が8万8,660円(1,063,920円 ÷ 12)なので、標準報酬月額は88,000円です。 厚生年金保険法第20条の等級表で、報酬月額93,000円未満は第一級(標準報酬月額88,000円)にあたります。

協会けんぽの「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」(東京支部)の第4(1)等級の行を、そのまま書き写します。

保険料料率全額本人負担(折半額)
健康保険(協会けんぽ・東京都)9.85%8,668.0円4,334.0円
子ども・子育て支援金0.23%202.4円101.2円
厚生年金保険18.3%16,104.00円8,052.00円
月計12,487.2円
厚生年金保険料率18.3%は、厚生年金保険法第81条第4項が「平成二十九年九月以後の月分 千分の百八十三・〇〇」と定めた率です。健康保険料率は都道府県ごとに違い、令和8年度の東京都は9.85%です(令和7年度は9.91%でした)。子ども・子育て支援金の0.23%は全国一律で、令和8年4月分(5月納付分)から加わります。

年額にすると、こうなります。

12,487.2円 × 12 = 149,846円(健康保険・子ども子育て支援金・厚生年金)
1,063,920円 × 5 ÷ 1,000 = 5,320円(雇用保険・労働者負担)

合計 155,166円

「約16万円程度」と整合します。 給与収入1,063,920円に対して14.6%です。

健康保険料率は都道府県で異なるため、地域によって数千円の幅が出ます。介護保険第2号被保険者(40歳から64歳まで)はさらに介護保険料率が加わります。

就業促進特例加算が効く帯

大綱(案)は、この加算の対象をこう定めています。

就業促進特例加算は、勤労所得が被用者保険の短時間労働者の適用ライン(※2)から「年収の壁」による可処分所得の減少が回復する水準までであって、被用者保険の適用に伴い生じる社会保険料相当額を支払った者を対象とする。

注記の数字を当てはめると、下端が給与収入106万円、上端が年収約160万円ということになります。 ただしこれは注記が示した例であって、加算の対象となる所得の範囲そのものが原文に金額で書かれているわけではありません。

そしてこの加算は時限措置です。

いわゆる「年収の壁」(※1)に直面する者及び同程度の社会保険料負担のある者に対しては、第四「検討等」の四6 の取組により「年収の壁」が解消するまでの時限的な措置として、上記①及び②による支援額に加えて、就業を特に促進するための加算(以下「就業促進特例加算」という。)を支給する。

「四6」が指しているのは、国民年金第3号被保険者に係る制度の見直しと、厚生年金保険・健康保険の適用範囲の拡大の更なる推進、そして「その他の就業支援及び関連する制度の改革」です。 大綱(案)は、これらを「次期年金法改正までに結論を得る」としています。

支援額の決め方は六段階。ただし数字は一つも入っていません

支援額は、次の六段階で決まる設計になっています。

段階内容入るべき数字
①勤労所得が逓増開始額以下なら定額逓増開始額/定額支援額
②逓増開始額を超え逓増終了額までは一定の割合で逓増。その後は定額逓増終了額/支援基本額
③「年収の壁」に直面する者に就業促進特例加算(①及び②による支援額に加えて支給)加算の額
④扶養児童があればこども加算(定額)加算の額
⑤合計所得金額が逓減開始額を超えた場合の逓減逓減開始額/逓減率
⑥端数処理1,000円単位(切上げ)で確定
⑤は「逓減開始額を超えたら必ず減る」という書き方ではありません。原文は「支援基本額(扶養児童を有する場合はこども加算との合計額)から合計所得金額に応じて一定の割合(逓減率)で逓減した額が上記①から④までによる額を下回るときは、当該逓減した額を支給する」です。逓減後の額が①〜④で出した額を下回って初めて、低いほうに置き換わります。

六段階のうち、金額が確定しているのは⑥の端数処理だけです。

⑥ 支援額は、**1,000 円単位(端数切上げ)**とする。

①の逓増開始額については、水準の手がかりが注記で示されています。

① 所得把握に係る執行上の課題を踏まえ、勤労所得が、個人住民税所得割が課税される水準(※)を踏まえて定める額(以下「逓増開始額」という。)以下である者に対しては、定額(以下「定額支援額」という。)とする。

(※)単身者の個人住民税所得割の非課税限度額は、所得45 万円(給与収入119 万円)

この45万円も、地方税法から出せます。 地方税法附則第3条の3第4項は、市町村民税の所得割を課すことができない範囲を「三十五万円にその者の同一生計配偶者及び扶養親族……の数に一を加えた数を乗じて得た金額に十万円を加算した金額」と定めています。

35万円 × 1(単身)+ 10万円 = 45万円
45万円 + 74万円(給与所得控除の最低保障額)= 119万円

ここでも74万円が使われています。 大綱(案)の注記は、令和8年分の税制で一貫して書かれています。

ただし「踏まえて定める」であって、逓増開始額が45万円だと書いてあるわけではありません。

どうやって届くか

手続きは決まりました。 大綱(案)「三 認定、支給、支払等」が定めています(案の段階では、この項目に「(地方と協議中)」が付いていました。閣議決定版では外れています)。

項目内容
認定する人基準日現在の住所所在地の市町村長(特別区長を含む)
原則受給資格者の請求に基づく認定
例外公的給付支給等口座登録者は、市町村長が職権で認定できる
運用「支給事務の運用においては、職権認定の処理を原則とする」
支給回数毎年1回(年度を単位)。ただし令和11年度だけは2回
支払時期認定または(4)の決定の日から起算して二月以内
税金「租税その他の公課は課することができない」
差押えできない。ただし国税の滞納処分は除く
生活保護収入認定の対象とする

ここでいちばん実益があるのは、職権認定の条件です。

(2)市町村長は、受給資格者であること及び支援金の額が明らかである公的給付支給等口座登録者については、(1)にかかわらず、職権で認定することができるものとする。この職権認定は、申請書への口座情報の記載や通帳の写し等の添付が不要となるなど、受給資格者と市町村双方の事務負担の軽減と円滑な支給につながるほか、公的給付支給等口座登録の推進にも寄与する。このため、支給事務の運用においては、職権認定の処理を原則とする。

ただし、請求できる期間はまだ決まっていません。 大綱(案)は「(1)の請求、(2)の職権認定及び(4)の決定については、市町村の事務負担等を考慮して期限を定める」としているだけです。請求で受け取るつもりの人は、期限が後から決まることを前提にしておく必要があります。

公的給付支給等口座、いわゆる公金受取口座を登録しているかどうかが、手続きの重さを分けます。 大綱(案)は国の側の対応として「申請なしで支援金の支給を受けられるなど、公的給付支給等口座登録のメリットについて必要な広報等を行う」「デジタル庁の口座情報登録・連携システムにおける口座実在確認等の機能の実装や照会対応能力の強化等の取組を実施する」ことも挙げています。

令和11年度だけは2回に分けて支給されます

支給回数は「毎年1回」ですが、これには例外が付いています。

(注)令和11 年度中に支給される支援金については、上記支給のほか、上記2(1)注に記載の令和11 年4月支給の2回とする。

その「令和11年4月支給」の中身は、支援額を定める段の注に書かれています。

令和11 年度中に支給される支援金については、飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げの終了時に、令和11 年度以降の支援金に円滑に接続するため、令和11 年4月に、年度替わりの地方自治体の事務負担を十分考慮しつつ、令和10 年度受給資格者に対して令和11 年度以降の制度による支援額の半年分相当額を基本とした額を先行して支給する。その後、令和11 年度の受給資格者に対して当該支援額の半年分相当額を基本とした額を支給する。

食料品の消費税1%が終わる2029年(令和11年)3月末の直後に、いったん半年分相当が前倒しで出る、という設計です。 受け取るのは「令和10年度の受給資格者」なので、つなぎの2年間に対象だった人が、本格導入の判定を待たずに先に受け取ります。 案の段階では、この項目にも「(地方と協議中)」が付いていました。閣議決定版では外れています。

生活保護では収入として認定されます

他制度に響かせないための土台として挙げられているのは、非課税の定めのほうです。そして例外が一つ明記されています。

4 一3(9)の取扱いにより、既存の社会保障制度の支給要件等に影響を及ぼさないようにする。生活保護制度においては、支援金を収入認定の対象とする。

ここで引かれている「一3(9)」は「支援金に対して、租税その他の公課は課することができない」という非課税の定めです。差押禁止は同じ一3の**(8)**で、この文が根拠として挙げているものではありません。似た位置にある二つの取扱いなので、係り先を原文の番号で確認しました。

費用は国と地方で分ける

その3分の2以上を国が負担し、残余のうち2分の1ずつを都道府県と市町村がそれぞれ負担することとし、費用の負担割合の決定に際しては地方と協議する。

国が3分の2、都道府県が6分の1、市町村が6分の1という配分になります(「3分の2以上」なので、国の割合はこれ以上になり得ます)。案の段階では、この項目にも「(地方と協議中)」が付いていました。閣議決定版では外れています。ただし原文の「費用の負担割合の決定に際しては地方と協議する」という一文は、閣議決定版にもそのまま残っています。

まだ決まっていないもの

大綱(案)を読んで数えると、金額と閾値の空欄は十三か所あります。

#空欄原文の書きぶり
1所得下限額「特に課税所得の把握、事業所得を含めた総合的なバランス等を勘案して定める」
2事業所得・雑所得を勘案する下限(名前が付いていない)「就労とみなせる水準として定める額を超える場合に勤労所得として合計するよう定める」
3所得上限額「公平性の観点から恒久財源の確保と併せて検討して定める」
4純負担基準額「通常負担する税・社会保険料……の水準を踏まえて定める」
5配偶者所得上限額「税制及び社会保険制度の状況を踏まえて設定する」
6定額支援額「税及び社会保険料の負担等を考慮して定める」
7逓増開始額「個人住民税所得割が課税される水準を踏まえて定める」
8逓増終了額「就業の促進等の必要性や……効果、就業促進特例加算との接続を考慮して定める」
9支援基本額「こども加算額と併せて検討し定める」
10就業促進特例加算の額「総合的なバランス等を勘案して定める」
11こども加算の額「支援基本額と併せて検討し定める」
12逓減開始額「所得上限額と併せて検討し定める」
13逓減率同上
2だけは、大綱(案)が名前を付けていません。要件①の「一定額を超える事業所得及び業務に係る雑所得」の「一定額」がこれにあたります。概要(資料3)でも「事業所得・業務に係る雑所得は、就労とみなせる水準として定める額を超える場合に勤労所得として合計する」と独立の項目として挙げられています。事業所得や副業の雑所得がある人にとっては、その所得が要件①に算入されるかどうかを決める線引きですが、金額はまだありません。

額に関する総額の枠だけは、書かれています。

具体的には、令和9年度及び令和10 年度中に支給される支援金については、支援金全体として要する費用が飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲となるよう定める。

「支援金全体として」です。 ある世帯が払った食料品の消費税1%分がその世帯に返る仕組みではありません。国全体の給付総額を、飲食料品の消費税1%相当分の枠に収めるという意味です。

財源については「特例公債に頼らず、補助金等及び租税特別措置の適正化その他の歳出及び歳入全般の見直しにより恒久財源を確保することとし、予算編成改革の具体化の状況も踏まえつつ、早期に結論を得る」とされています。上の表の多くが「恒久財源の確保と併せて」検討するとされているのは、この議論と結び付いているためです。

あなたの数字で確かめる手順

額は計算できませんが、要件の形に自分を当てはめることはできます。 手元に用意するのは3つです。

1. 源泉徴収票を出す。

「支払金額」が要件①の給与収入にあたる部分、「社会保険料等の金額」が要件③の社会保険料控除額にあたる部分です。事業所得や業務に係る雑所得がある場合は、確定申告書の該当欄も見ます。

2. 住民税の決定通知書(特別徴収税額の決定通知書)を出す。

要件③の「当該年度の住民税額を基礎として算定した金額」に対応します。所得割額を見ます。

3. 1と2を足して、公的年金等の収入額を引く。

(住民税額を基礎として算定した金額)+(社会保険料控除額)−(公的年金等の収入額)

この形が要件③です。 純負担基準額が決まっていないので合否は出ませんが、自分の数字がどのくらいの水準にあるかは分かります。

4. 16歳未満の子の人数を数える。

令和9年度・令和10年度は16歳未満です。高校生年代の子はここに入りません。 令和11年度からは19歳未満に広がります。

5. 公金受取口座を登録しているか確認する。

これだけは、いまの時点で結果が変わる項目です。 登録していれば職権認定の対象になり得ます。登録の有無はマイナポータルで確認できます。

要件④(配偶者の所得)は令和9年度・令和10年度には使われません。令和11年度からの制度では、基準日に配偶者がいた場合にその合計所得金額を見ます。

【2026年9月16日 追記】大綱が閣議決定されました

2026年(令和8年)9月15日、この大綱は閣議決定されました。 内閣官房「社会保障国民会議」のページに「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(令和8年9月15日閣議決定)」として、本文(全16ページ)と概要資料が掲載されています。

9月11日版(案)と閣議決定版を、全文で突き合わせました。 制度の骨格は変わっていません。支給要件の四つ、支援額の六段階、こども加算の年齢、費用の負担割合(国が3分の2以上、残余を都道府県と市町村で2分の1ずつ)、十三か所の空欄は、すべてそのままです。

変わったのは、次の点です。

① 「案」でなくなりました。 表題から「(案)」が取れ、日付欄の「令和○年○月○日」が「令和8年9 月15 日 閣議決定」になりました。

② 「(地方と協議中)」が、7か所すべて消えました。 案の段階では、次の7項目に付いていました。

#項目
1地方消費税の減収を地方特例交付金で補塡すること(第二)
2令和11年4月の先行支給の具体的な執行(第三 一2)
3認定、支給、支払等(第三 一3)
4費用の負担等(第三 二)
5市町村の事務を法定受託事務とすること(第三 三1)
6確定申告書・源泉徴収票・住民税申告書・給与支払報告書の様式変更(第三 三3)
7支援金制度に係る国による情報システムの整備等(第四 一)

本文中で「この項目には『(地方と協議中)』が付いています」と書いた3か所は、いずれもこの一覧に含まれます。 閣議決定版では外れました。

ただし「地方と協議する」という本文の文言そのものは残っています。費用の負担割合については「費用の負担割合の決定に際しては地方と協議する」、令和11年4月の先行支給については「地方自治体の事務負担を考慮した具体的な執行等については、地方と協議する」と、閣議決定版にも書かれています。消えたのは「この項目はまだ協議中である」という注記のほうで、協議そのものが終わったと書かれているわけではありません。

③ 就業促進特例加算が、何の上に乗るのかが変わりました。 ここが唯一、金額に効き得る変更です。

9月11日版(案)閣議決定版
就業促進特例加算「②による支援額に加えて」「上記①及び②による支援額に加えて」

①は定額支援額(勤労所得が逓増開始額以下の人)、②は支援基本額(逓増する帯から上の人)です。 案の書き方では、加算が乗るのは②だけと読めました。閣議決定版は①も並べています。定額支援額の帯にいる人にも加算が乗ることが、はっきりしました。

もっとも、加算の対象は別に「勤労所得が被用者保険の短時間労働者の適用ラインから『年収の壁』による可処分所得の減少が回復する水準までであって、被用者保険の適用に伴い生じる社会保険料相当額を支払った者」と定められています。①の帯と加算の帯が実際にどれだけ重なるかは、逓増開始額も加算の帯も金額が決まっていないので、いまは分かりません。

④ 字句の整理が3か所ありました。 記事の引用はいずれも閣議決定版に差し替えてあります。

箇所9月11日版(案)閣議決定版
就業促進特例加算の対象「回復する水準の所得までであって」「回復する水準までであって」
注記(※2)の末尾「年収約160 万円。」「年収約160 万円程度。」
支払いの条文参照「認定又は(5)の決定の日から」「認定又は(4)の決定の日から」
3つ目は、案が参照する項番号を誤っていたものの訂正です。(4)は「前年度までに認定をした者が当該年度においても支給要件に該当しているときは、その者の当該年度における支援金の額を決定する」という項で、(5)は請求・職権認定・(4)の決定の期限を定める項です。二月以内に支払う起算点は(4)の決定のほうだと、閣議決定版で確定しました。

⑤ それでも、額はまだ決まっていません。 十三か所の空欄は一つも埋まっていません。そして根拠となる法律もまだありません。 財務省「これまでに決定した消費税に関する法律等」に載っている最も新しい項目は令和元年10月1日のままで、第221回国会の財務省提出法案5件にも消費税率に関する法律案はありません。

閣議決定は「政府としてこの内容で法案を作る」という決定であって、制度の成立ではありません。 支援額が計算できるようになるのは、法律と政令で金額が入ったあとです。

まとめ

  • 2026年(令和8年)9月8日、内閣官房の「「給付付き税額控除」に関する国と地方の協議の場」(第3回)に**大綱(案)**が示され、給付に「就業者負担軽減支援金」という名前が付いた。3日後の9月11日(第4回)に修正版が出ており、本記事はそちらで引用を確認している
  • 9月11日版までは「案」だったが、2026年9月15日に閣議決定された。 案の段階で7か所に付いていた「(地方と協議中)」は、閣議決定版では全部消えている。ただし根拠となる法律はまだない
  • 支給要件は四つ。①勤労所得が所得下限額を超える/②合計所得金額が所得上限額以下/③住民税額+社会保険料控除額−公的年金等収入が純負担基準額を超える/④配偶者の合計所得金額が配偶者所得上限額以下。加えて基準日(1月1日)に国内に住所があること
  • 令和9年度・令和10年度は①〜③だけを使う。 配偶者の所得は見ない
  • 要件③は「負担が一定以上あること」を求める。 税・社会保険料の負担が軽い人は外れる。逆に、働いていて現役並みの負担がある高齢者は入る
  • こども加算の対象は、最初の2年が16歳未満、令和11年度から19歳未満。 高校生年代の子は最初の2年に数えられない
  • 大綱(案)の「給与収入106万円(所得32万円)」は再現できる。1,023円×20時間×52週=1,063,920円、そこから令和8年分の給与所得控除74万円を引くと323,920円。改正前の65万円で引くと41万円になり原文と合わない
  • ただしこの106万円は「残っている壁」ではない。 社会保険の賃金要件は2026年10月に撤廃予定。ただし短時間労働者の加入要件はほかに週20時間以上・企業規模51人以上・学生でないことが残るので、「労働時間だけで決まる」わけではない。企業規模要件のほうも令和17年10月の「10人以下」まで段階的に縮小・撤廃される予定
  • 同じ注記の「社会保険料約16万円程度」も再現できる。標準報酬月額88,000円で年155,166円(健康保険・子ども子育て支援金・厚生年金149,846円+雇用保険5,320円)
  • 支援額の決め方は六段階。金額が確定しているのは**1,000円単位(端数切上げ)**という端数処理だけ
  • 金額と閾値の空欄は十三か所。 多くが「恒久財源の確保と併せて検討して定める」とされている。うち一つは大綱(案)が名前も付けていない「就労とみなせる水準として定める額」で、事業所得・副業の雑所得を勤労所得に算入するかどうかの線引きにあたる
  • 令和9年度・令和10年度の総額は「支援金全体として要する費用が飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲」。世帯ごとの精算ではない
  • 届き方は決まった。市町村長が認定し、毎年1回、認定等の日から二月以内に支払う。非課税で差押えもできない(国税の滞納処分を除く)。ただし生活保護では収入認定の対象。既存制度に影響を及ぼさない根拠として挙げられているのは**非課税の定め(一3(9))**であって、差押禁止(同(8))ではない
  • 令和11年度だけは支給が2回。 令和11年4月に、令和10年度の受給資格者へ本格導入後の支援額の半年分相当額を基本とした額が先行して支払われる
  • 【追記】閣議決定版で、就業促進特例加算が乗る先が「②による支援額」から「上記①及び②による支援額」に変わった。 定額支援額(①)の帯にいる人にも加算が乗ることがはっきりした。ほかに字句の整理が3か所。制度の骨格・十三か所の空欄は変わっていない
  • 公金受取口座(公的給付支給等口座)を登録していれば職権で認定できる。 大綱(案)は「支給事務の運用においては、職権認定の処理を原則とする」としている。いま準備できることがあるとすれば、この登録の確認

よくある質問

就業者負担軽減支援金とは何ですか。

2027年(令和9年)4月から始まる予定の、個人に対する現金給付の名前です。2026年(令和8年)8月5日に閣議決定された「『給付付き税額控除』の制度導入の基本方針」では「所得に連動したきめ細かな給付」としか呼ばれていませんでしたが、2026年9月8日に内閣官房の「『給付付き税額控除』に関する国と地方の協議の場」(第3回)へ示された「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(案)」で、この名前が付きました(同じ題名の修正版が、3日後の9月11日の第4回にも示されています)。大綱(案)は「中低所得の現役勤労者に着目して、その負担軽減を通じて、所得に応じて、これまでよりも一層手取りが増えるようにするとともに、いわゆる『年収の壁』などによる『働き控え』を緩和することを通じた就労促進を図るため、これまでにない『所得に応じたきめ細かな給付』を行う新たな制度として、就業者負担軽減支援金(以下『支援金』という。)を導入する」としています。食料品の消費税を1%にする措置と組み合わせて「実質ゼロ化」を目指す、その給付側にあたります。なお、この大綱は2026年(令和8年)9月15日に閣議決定されました。案の段階では日付欄が「令和○年○月○日」のままでしたが、閣議決定版の1ページ右下は「令和8年9 月15 日 閣議決定」となっています。ただし根拠となる法律はまだありません。財務省「これまでに決定した消費税に関する法律等」に載っている最も新しい項目は令和元年10月1日のままで、第221回国会の財務省提出法案5件にも消費税率に関する法律案はありません。

いくらもらえるのですか。

決まっていません。大綱(案)は支援額の決め方を六段階まで書いていますが、その段階に入る金額と所得の閾値は、いずれも「検討して定める」とされたままです。具体的には、所得下限額、所得上限額、純負担基準額、配偶者所得上限額、定額支援額、逓増開始額、逓増終了額、支援基本額、就業促進特例加算の額、こども加算の額、逓減開始額、逓減率の十二か所と、事業所得・業務に係る雑所得を勤労所得に合算する下限(「就労とみなせる水準として定める額」。大綱(案)が名前を付けていない十三か所目)が空欄です。支援額を決める部分は、まとめて「恒久財源の確保と併せて検討し定める」とされています(所得上限額については「公平性の観点から恒久財源の確保と併せて検討して定める」と個別に書かれています)。決まっているのは、支援額が1,000円単位(端数切上げ)であること、年度を単位として支給されること、そして令和9年度と令和10年度については「支援金全体として要する費用が飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲となるよう定める」という総額の上限だけです。ある世帯が払った食料品の消費税1%分がその世帯に返る仕組みではありません。

誰がもらえるのですか。所得が低いほど多いのですか。

単純に所得が低いほど多い制度ではありません。大綱(案)が挙げる支給要件は四つで、①前年の給与収入に応じて算定した額と一定額を超える事業所得・業務に係る雑所得との合計額(勤労所得)が所得下限額を超えること、②前年の合計所得金額が所得上限額以下であること、③当該年度の住民税額を基礎として算定した金額と前年分の自己の負担すべき社会保険料に係る控除額との合計額から前年中の公的年金等の収入額を控除した金額が純負担基準額を超えること、④1月1日(基準日)現在で配偶者がいた場合はその配偶者の前年の合計所得金額が配偶者所得上限額以下であること、です。①は下限、②は上限なので、所得が低すぎても高すぎても対象から外れます。さらに③は「税と社会保険料を一定以上負担していること」を求めるものなので、負担がごく軽い人は要件を満たしません。制度の目的が純負担率(租税と社会保険料の合計額から現金給付の合計額を控除した額の収入に対する割合)の改善に置かれているためです。なお令和9年度と令和10年度の支援金は、①から③までの要件を満たす者が対象とされ、④の配偶者要件は使われません。

子どもがいると増えますか。何歳までが対象ですか。

こども加算があります。大綱(案)は「扶養児童がある場合には、上記①から③までによる支援額に加え、扶養児童の有無及び数に応じた定額のこども加算を支給する」としています。ここでいう扶養児童は「19歳未満の居住者である扶養親族」です。ただし注意が要る点があり、令和9年度と令和10年度の支援金については「②扶養児童については、16歳未満の扶養親族とする」とされています。つまり最初の2年間は16歳未満だけが数えられ、高校生年代の子は加算に入りません。19歳未満に広がるのは令和11年度からです。加算の額そのものは「諸外国と我が国の純負担率の差を踏まえつつ、②の支援基本額と併せて検討し定める」とされ、まだ決まっていません。なお扶養児童の人数は、②の所得上限額の判定にも使われます。大綱(案)は所得上限額を「19歳未満の居住者である扶養親族の有無及び数に応じて定める額」としているためです。

申請しないともらえませんか。何か準備できることはありますか。

原則は請求ですが、請求しなくても認定される道が用意されています。大綱(案)は「受給資格者は、支援金の支給を受けようとするときは、その受給資格について、その請求に基づき基準日現在における住所所在地の市町村長の認定を受けなければならないものとする」としたうえで、「市町村長は、受給資格者であること及び支援金の額が明らかである公的給付支給等口座登録者については、(1)にかかわらず、職権で認定することができるものとする」と定めています。さらに「支給事務の運用においては、職権認定の処理を原則とする」とまで書かれています。公的給付支給等口座、いわゆる公金受取口座を登録していれば、申請書への口座情報の記載や通帳の写しの添付が不要になるということです。いま準備できることがあるとすれば、この登録の有無を確認しておくことです。なお支給回数は「毎年1回」とされ、認定または(4)の決定の日から起算して二月以内に当該年度分が支払われます。ただし令和11年度だけは例外で、大綱(案)は「令和11年度中に支給される支援金については、上記支給のほか、上記2(1)注に記載の令和11年4月支給の2回とする」としています。その令和11年4月の支給は、つなぎの制度から本格導入へ切れ目なくつなぐため、令和10年度受給資格者に対して「令和11年度以降の制度による支援額の半年分相当額を基本とした額」を先行して支払うものです。

支援金に税金はかかりますか。ほかの制度に影響しますか。

税金はかかりません。大綱(案)は「支援金に対して、租税その他の公課は課することができないものとする」としています。また「支援金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないものとする」と定め、差押えも原則としてできません。ただし「国税の滞納処分(その例による滞納処分を含む。)により差し押さえる場合はこの限りではない」という例外が付いています。ほかの制度への影響については、大綱(案)は「一3(9)の取扱いにより、既存の社会保障制度の支給要件等に影響を及ぼさないようにする」としています。ここで挙げられている「一3(9)」は非課税の定めのほうで、差押禁止(同(8))ではありません。ただし一つ例外が明記されており、「生活保護制度においては、支援金を収入認定の対象とする」とされています。生活保護を受けている世帯では、支援金がそのまま上乗せになるわけではありません。

大綱(案)に出てくる「106万円」は、なくなるはずの壁のことですか。

違います。大綱(案)は就業促進特例加算の対象を説明する注記で「令和7年度における全国で最も低い地域別最低賃金(時給1,023円)に、被用者保険の短時間労働者の適用労働時間(週20時間)を乗じて、年間の収入(所得)に換算すると、給与収入106万円(所得32万円)となる」と書いています。これは残っている壁の金額ではなく、週20時間という適用ラインを金額に置き換えたものです。社会保険の賃金要件(いわゆる106万円の壁)そのものは、厚生労働省が「賃金要件(いわゆる年収106万円の壁)は令和8(2026)年10月に撤廃予定」としており、2026年10月に無くなる予定です。撤廃の理由も、全都道府県の最低賃金が上がって週20時間働けば自動的に月額8.8万円に届くようになったことなので、大綱(案)の計算と同じ発想です。なお、この注記の「所得32万円」は令和8年分の給与所得控除(最低保障額74万円)で計算した値で、改正前の65万円で引くと41万円になり一致しません。

出典

制度の内容は改正されることがあります。判断の際は必ず出典元の最新情報をご確認ください。