2026年3月31日、NISAの口座開設可能年齢の下限を撤廃する法律が成立しました。 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)で、成立した日と公布された日はどちらも同じ2026年3月31日です。実際に動き出すのはその先で、①のとおり令和9年1月1日と決まっています。財務省が付けた概要には、1行だけこう書かれています。
財務省「『所得税法等の一部を改正する法律案』について」(令和8年2月)1ページ。NISA の拡充(つみたて投資枠の口座開設可能年齢を0~17 歳に拡充(年間投資枠は60 万円、非課税保有限度額は600 万円))
それから半年近くたった2026年9月25日の時点でも、金融庁のNISA特設ウェブサイトにはこう書かれたままです。
金融庁「NISAを知る」。国税庁「No.1535 NISA制度」も「18歳以上(口座開設の年の1月1日現在)」のままです。日本国内に住んでいる18歳以上*の方ならどなたでも開設できます。 *利用する年の1月1日時点で18歳以上の成人の方が対象
制度そのものは、いまも広がり続けています。金融庁が2026年8月31日に出した令和9年度税制改正要望には、令和7年12月末時点で口座数2,821万口座、買付額の合計71.4兆円という実績が載っています。
結論
変わるのは「何歳から持てるか」だけではありません。 入り口の年齢制限がなくなる代わりに、出口に鍵がかかります。 18歳以上のNISAは、いつ売っていつ引き出しても自由です。未成年者の枠はそうではありません。売ること自体はできますが、そのお金を口座の外へ出すことが、一定の年齢まで制限されます。
鍵は二段階で開きます。 先に開くのは、教育費や生活費の支払に充てるという用途を書類で示したときだけ通れる、細い方の鍵です。用途を問われない鍵が開くのは、その何年も後です。
そして、入れられる年数は、子どもでいられる年数よりずっと短くなっています。 年間に入れられる額と、ためておける総額の両方に上限があり、その二つを割り算すると、口座を持てる期間の半分ほどで天井に届きます。残りの期間は、売って空きを作らないかぎり買い足せません。
しかも、禁じられているのは持ち出すことだけではありません。 口座の中の商品を人にあげることも、売った代金を別の場所で受け取っておくことも、同じ期間はできません。条文はこれらを並べて書いていて、どれか1つでも守れなくなった時点で口座そのものが閉じられます。
鍵を壊したときの罰は、その年の利益にとどまりません。 口座を開いた日にさかのぼって、それまでに出た利益と受け取った分配金がまとめて課税されます。しかも、そこで損が出ていた場合は「なかったもの」として扱われます。
買えるものも狭くなります。 一定の投資信託だけで、個別の株式は買えません。成長投資枠を同時に持つことができないからです。
最後に、この制度にはまだ通り名しかありません。 法律に書かれている名前と、これから金融機関が使う呼び名は、たぶん違うものになります。
計算の前提
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 根拠となる法律 | 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)。令和8年3月31日成立・同日公布 |
| 条文上の名前 | 未成年者特定累積投資勘定(租税特別措置法第37条の14) |
| 施行日 | 令和9年1月1日(同法附則第1条第5号ロ) |
| 年間投資枠 | 60万円(その年に受け入れた取得対価の額の合計) |
| 非課税保有限度額 | 600万円(その年に受け入れた取得対価の額の合計額と、前年12月31日時点の購入の代価の額に相当する金額との合計額で判定) |
| 買えるもの | 公募等株式投資信託の受益権のみ |
| 比較する現行制度 | 18歳以上のNISA(国税庁No.1535)、ジュニアNISA(同) |
| 設例の子 | 2027年6月15日生まれ(架空の例示。実在しない) |
| 値動き | 考えない。 すべて簿価(買った値段)で数える |
| 計算 | scripts/calc-kodomo-nisa-2027.py を実行し、出力を転記 |
① 法律はもう成立している ― 動き出すのは令和9年1月1日
「予定」ではありません。 財務省の「第221回国会における財務省関連法律」は、所得税法等の一部を改正する法律案について、成立日・公布日とも令和8年3月31日、施行日を令和8年4月1日(別段の定めがあるものを除く)と記録しています。
その「別段の定め」がここに当たります。同法の附則第1条は、第5号で次の規定を令和9年1月1日から施行するとしています。
所得税法等の一部を改正する法律 附則第1条第5号ロ。太字は引用者。租税特別措置法第37条の14がNISAの規定です。五 次に掲げる規定 令和九年一月一日 (中略)ロ 第七条中租税特別措置法第九条の八の改正規定、同法第九条の九第一項の改正規定、同法第二十五条の二の改正規定、同法第三十七条の十四の改正規定、(後略)
法律案要綱も、口座を開ける期間そのものを同じ日で区切っています。
財務省「所得税法等の一部を改正する法律案要綱」第7 1(3)イ。イ 非課税口座の口座開設可能年齢の下限を撤廃するとともに、その口座に設けようとする勘定がロ(イ)の未成年者特定累積投資勘定である場合の口座開設可能期間を令和九年一月一日以後の期間とする。
つまり2026年のうちに、この勘定を設けるための非課税口座を開くことはできません。 対象になる年も限られています。
同要綱 第7 1(3)ロ。特定非課税管理勘定が成長投資枠です。(イ)非課税口座には、未成年者特定累積投資勘定(特定累積投資勘定のうち、非課税口座を開設している居住者等がその年一月一日において十八歳未満である年及び出生した日の属する年の各年において設けられるものをいう。以下同じ。)を設けられる。 (ロ)未成年者特定累積投資勘定は、令和九年以後の各年においてのみ設けられることとし、その設けられるべき金融商品取引業者等の営業所に開設している非課税口座以外の非課税口座に設けることはできない。また、特定非課税管理勘定は、未成年者特定累積投資勘定とは同時に設けられない。
最後の一文が効きます。 成長投資枠を同時に持てないので、未成年者特定累積投資勘定を設けた年は、その非課税口座で個別株を買えません。受け入れられるのは、次に引くとおり公募等株式投資信託の受益権だけです。
② 年60万円・上限600万円 ― 18歳以上の半分と3分の1
条文の側の書き方はこうです。
同要綱 第7 1(3)ロ(ハ)a。太字は引用者。a その居住者等の非課税口座に未成年者特定累積投資勘定が設けられた日から同日の属する年の十二月三十一日までの間に当該非課税口座が開設された金融商品取引業者等への買付けの委託等により取得した特定累積投資上場株式等で、当該期間内の取得対価の額の合計額が六十万円を超えないもの(特定累積投資上場株式等を当該非課税口座に受け入れた場合に、当該合計額及び前年十二月三十一日に未成年者特定累積投資勘定に受け入れている特定累積投資上場株式等の購入の代価の額に相当する金額として一定の金額の合計額が六百万円を超えることとなるときにおけるその特定累積投資上場株式等を除く。)
2つの上限が別々に書かれています。 前半が年間の上限、括弧の中が総額の上限です。
総額のほうの読み方に注意してください。 括弧の中は「当該合計額及び前年十二月三十一日に……受け入れている特定累積投資上場株式等の購入の代価の額に相当する金額……の合計額が六百万円を超えることとなるとき」です。前年末の簿価だけを見るのではなく、その年に入れた分を足した合計で判定します。 前年末の簿価だけで判定するなら、前年末にちょうど600万円あっても「超えて」はいないので、その年にもう60万円入れられることになってしまいます。実際はそうなりません。
判定に使うのが時価ではなく簿価(買った値段)である点は、18歳以上のNISAと同じです。値上がりしても枠は減りません。
| 未成年者特定累積投資勘定 | 18歳以上のNISA | |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 60万円 | つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=360万円 |
| 非課税保有限度額 | 600万円 | 1,800万円(うち成長投資枠1,200万円) |
| 買えるもの | 公募等株式投資信託の受益権のみ | 上場株式等(つみたて投資枠は一定の投資信託) |
| 成長投資枠との併用 | できない | できる |
| 口座を開ける年 | 令和9年以後 | 制度は恒久化 |
年間投資枠はつみたて投資枠のちょうど半分、非課税保有限度額は3分の1です。
19年あるのに、買えるのは10年
ここから設例で数えます。2027年6月15日生まれの子について、勘定を設けられる年を数えると、出生した2027年から、1月1日に18歳未満である最後の年である2045年まで、19年間あります。
一方、毎年60万円ずつ買って一度も売らなければ、600万円 ÷ 60万円 = 10年で総額の上限に届きます。
線が水平になるのは9歳の年(2036年)からです。ここで非課税保有限度額の600万円に届くので、以降は売って空きを作らないかぎり1円も買い足せません。線が平らなまま終わる10歳から18歳までの9年が、口座はあるのに買い足せない期間です。
| 年 | その年に入れられる額 | 年末の簿価残高 | |
|---|---|---|---|
| 0歳〜9歳 | 2027年〜2036年 | 各年60万円 | 60万円ずつ増えて600万円 |
| 10歳〜18歳 | 2037年〜2045年 | 0円 | 600万円のまま |
scripts/calc-kodomo-nisa-2027.py の出力から転記。満年齢は各年の12月31日時点。
入れられない年が9年あります。 年間投資枠を掛けると540万円分で、これは非課税保有限度額600万円に迫る大きさです。上限まで使うつもりなら、出生した年から始める必要はありません。 10年分の余裕があります。
逆に、18歳以上のNISAで1,800万円を埋めるのに必要な年数は、つみたて投資枠だけを使うと15年、成長投資枠と合わせて年360万円を入れると5年です。未成年者枠の10年は、その中間に置かれています。
③ 出口の鍵 ― 「基準年」の前年12月31日まで
ここがこの制度のいちばん大きな特徴です。 売ったお金を口座の外へ出せません。
同要綱 第7 1(3)ロ(ホ)。(ホ)未成年者特定累積投資勘定で管理される特定累積投資上場株式等は、非課税口座を開設した居住者等の基準年の前年十二月三十一日までは、当該特定累積投資上場株式等を当該非課税口座以外の口座に移管等をすることはできない。ただし、次に掲げる年の区分に応じそれぞれ次に定める場合は、この限りでない。
その「基準年」の定義と、売った代金の置き場所は、その1つ前に書かれています。
同要綱 第7 1(3)ロ(ニ)。太字は引用者。(ニ)未成年者特定累積投資勘定で管理される特定累積投資上場株式等につき支払を受ける配当等及び当該特定累積投資上場株式等の譲渡の対価に係る金銭その他の資産については、非課税口座を開設した居住者等がその年三月三十一日において十八歳である年(以下「基準年」という。)の前年十二月三十一日までは、特定課税未成年者口座(当該居住者等が非課税口座を開設している金融商品取引業者等の営業所又は当該金融商品取引業者等の関連会社の営業所に開設した預貯金口座又は預り金の管理口座をいう。以下同じ。)において管理しなければならない。
そのただし書に、年で区切った例外が置かれています。ひとつは災害等、もうひとつは教育費・生活費です。
同要綱 第7 1(3)ロ(ホ)a・b。太字は引用者。a 当該居住者等がその年三月三十一日において十二歳である年(以下「特定基準年」という。)の前年以前の各年 当該居住者等が、災害、疾病その他のやむを得ない事由(以下「災害等事由」という。)に基因して当該未成年者特定累積投資勘定に係る特定累積投資上場株式等及び特定課税未成年者口座内の金銭その他の資産の全てを払い出す場合 b 当該居住者等の特定基準年以後の各年 aに定める場合及び当該居住者等が、当該非課税口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所の長に特定累積投資上場株式等の移管等を依頼する旨、当該移管等の基因となる事由(当該居住者等の教育費又は生活費の支払に充てるためのものに限る。)その他の事項を記載した書類を提出して当該特定累積投資上場株式等の移管等をする場合
「かつ」ではなく、年で切り替わる「又は」です。 特定基準年より前は災害等事由だけ、特定基準年以後はそれに教育費・生活費が加わります。しかも災害等事由のほうは「全てを払い出す場合」と書かれていて、一部だけ出すことはできません。
ただし、この2つで打ち止めではありません。 要綱の書き方はここで終わっていますが、成立した法律の条文を見ると、aに当たる部分は「災害等による返還等」に続けて「その他政令で定める事由による当該移管又は返還」で終わっています。
租税特別措置法第37条の14第5項第6号ホ(1)(i)(令和9年1月1日施行の条文。e-Gov法令検索の法令APIで取得)。太字は引用者。(i)当該居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、その年三月三十一日において十二歳である年(……)の前年以前の各年 災害、疾病その他の政令で定めるやむを得ない事由による当該移管又は返還で……特定累積投資上場株式等及び金銭その他の資産の全てについて行うもの(……「災害等による返還等」という。)その他政令で定める事由による当該移管又は返還
つまり例外は「災害等」と「教育費・生活費」の2つに閉じておらず、政令が定める事由がもう1つの枠として開いています。 その中身は令和8年政令第98号の要綱からは読み取れませんでした(⑧参照)。この記事では、一次情報で中身まで確認できた例外が2つある、という言い方にとどめます。
設例の子で、基準年と特定基準年の2つを数えます。
| 年 | 何が起きるか | そのときの子 |
|---|---|---|
| 2027年 | 勘定を設けられる最初の年 | 生まれた年 |
| 2040年 | 特定基準年。 教育費・生活費の支払に充てるためなら、書類を出して移管等ができる | この年の4月に中学校の学年が始まる |
| 2045年12月31日 | ここまでが移管等の制限の期間 | 高等学校の最後の学年の途中 |
| 2046年 | 基準年。 用途を問われる制限が外れる | この年の3月に高等学校の学年が終わる |
scripts/calc-kodomo-nisa-2027.py の出力から転記。学年との対応は学校教育法第17条(満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満12歳に達した日の属する学年の終わりまで)、同法第56条(高等学校の修業年限は全日制の課程については3年)、学校教育法施行規則第59条(小学校の学年は4月1日に始まり翌年3月31日に終わる)・第104条(高等学校に準用)から、この設例について計算したもの。
制限が外れるのは、高等学校の最後の学年の1月です。 大学の入学金や授業料の支払に間に合う形にはなっています。ただしそれより前に使いたい場合は、特定基準年以後であること(設例では中学校に上がる年から)と、用途が教育費または生活費であることの2つを満たす必要があります。
特定課税未成年者口座のほうにも、同じ形の制限が付いています。
同要綱 第7 1(3)ロ(ヘ)a。a 当該居住者等の特定基準年の前年以前の各年 当該金銭その他の資産を非課税口座における特定累積投資上場株式等の取得のために払い出す場合及び(ホ)aに定める場合
売った代金でもう一度買うことはできます。 出せないだけです。
制限は「出さない」だけではない ― 贈与と、代金の置き場所
要綱を読むと制限は移管等の1つだけに見えますが、条文は3つ並べています。 基準年の前年12月31日までに守るべきこととして、移管・返還のほかに2つあります。
租税特別措置法第37条の14第5項第6号ホ(令和9年1月1日施行の条文。e-Gov法令検索の法令APIで取得)。太字は引用者。ホ 未成年者特定累積投資勘定に記載若しくは記録又は保管の委託がされる特定累積投資上場株式等は、当該居住者又は恒久的施設を有する非居住者の基準年の前年十二月三十一日までは、次に定めるところによること。 (1)当該特定累積投資上場株式等の当該口座から他の保管口座への移管又は……返還(……を除く。)をしないこと。 (2)当該特定累積投資上場株式等のニに規定する方法以外の方法による譲渡で政令で定めるもの又は贈与をしないこと。 (3)当該特定累積投資上場株式等の譲渡の対価(……)又は当該特定累積投資上場株式等に係る配当等として交付を受ける金銭その他の資産(政令で定めるものを除く。)は、その受領後直ちに当該特定課税未成年者口座に預入れ又は預託をすること。
(2)が効きます。 口座の中にある投資信託を人にあげることはできません。祖父母が孫のために入れた分を、あとで別の孫に回す、といったことができないということです。売るときの方法も、(ニ)に定められた方法(金融商品取引業者等への売委託など)に限られます。
(3)は「直ちに」と書かれています。 売った代金や分配金を、いったん別の口座で受け取っておく、という扱いはできません。
この3つは、次の④で見る罰の引き金でもあります。 条文は、ホに掲げる要件のどれか1つでも満たさなくなった時点で、非課税口座と特定課税未成年者口座の両方を廃止すると定めています。
同条第5項第6号ヘ。太字は引用者。ヘ 当該口座につきホに掲げる要件に該当しないこととなる事由又は災害等による返還等が生じた場合には、これらの事由(……「非課税口座等廃止事由」という。)が生じた時に当該口座及び当該口座と同時に設けられた特定課税未成年者口座を廃止すること。
④ 鍵を壊したときに課税されるのは、その年の利益ではない
「引き出したとき」だけではありません。 法律はこれを「契約不履行等事由」と呼びますが、条文の定義は、③で見た要件のどれかを満たさなくなったこと(贈与や、代金を特定課税未成年者口座に入れなかったことを含みます)と、口座の廃止の両方を指しています。
同要綱 第7 1(3)ロ(ト)。太字は引用者。(ト)(前略)契約不履行等事由(これらの口座内の特定累積投資上場株式等及び金銭その他の資産をこれらの口座から(ホ)及び(ヘ)の取扱いに反する払出しをしたこと又はこれらの口座の廃止(災害等事由によるもの及び出国による非課税口座の廃止を除く。)をいう。以下同じ。)が生じた場合には、当該契約不履行等事由が生じたことによる非課税口座の廃止の際、特定累積投資上場株式等の譲渡又は特定累積投資上場株式等に係る配当等の支払があったものとして、次の金額に対して百分の十五の税率により源泉徴収を行う。
要綱は「払出しをしたこと」と書いていますが、条文はそう書いていません。 成立した法律の条文は、③で見た要件に当てはまらなくなったこと自体を引き金にしています。
租税特別措置法第37条の14第6項(令和9年1月1日施行の条文。e-Gov法令検索の法令APIで取得)。太字は引用者。第5項第6号ホが③の3つの要件、同項第10号ロが特定課税未成年者口座側の要件です。……契約不履行等事由(特定非課税累積投資契約若しくは特定課税未成年者口座管理契約若しくはこれらの履行につき前項第六号ホ若しくは第十号ロに掲げる要件に該当しない事由が生じたこと又は非課税口座若しくは特定課税未成年者口座の廃止(災害等による返還等が生じたことによるもの及び出国による非課税口座の廃止を除く。)をしたことをいう。……)
したがって、引き出さなくても引き金を踏むことがあります。 口座の中の投資信託を贈与したとき、定められた方法以外で売ったとき、売った代金や分配金を特定課税未成年者口座に入れなかったときが、いずれもこれに当たります。
課税される金額は、その取引の利益ではありません。
- 次の3つを足し、そこから同じ期間の取得対価の額等(取得対価のほか、取得に要した費用と譲渡に要した費用)の合計を引いた金額
- 口座を開いた日から廃止した日までに売った対価の合計
- 同じ期間に他の保管口座へ移管等がされたものの、その移管等の時の価額の合計
- 廃止した日に持っている分の、その日の時価の合計
- 口座を開いた日から契約不履行等事由が生じた時までの間に支払を受けるべき配当等の合計額
つまり口座の一生分がまとめて精算されます。 そして、そこで損が出ていても救われません。
同要綱 第7 1(3)ロ(チ)。(チ)(ト)aの譲渡所得等の金額の計算上損失が生じた場合には、その生じた損失の金額はなかったものとみなす。また、(ト)bの配当所得の金額から控除することもできない。
この「損失はなかったものとみなす」は、18歳以上のNISAと同じ扱いです。 国税庁No.1535の注2も、非課税口座で生じた損失は損益通算も繰越控除もできないと書いています。詳しくは新NISAで含み損になったら何が起きるかにまとめています。
なお税率について、財務省の令和8年度税制改正の大綱は、個人住民税を含めた形で書いていました。
財務省「令和8年度税制改正の大綱」21ページ。この記事で条文として確認できたのは所得税分の百分の十五だけです。当該払出しがあった日において公募等株式投資信託の受益権の譲渡又は公募等株式投資信託の配当等の支払があったものとして、次の金額に対して20%(所得税15%、個人住民税5%)の税率により源泉徴収(特別徴収)を行うこととする。
⑤ 大綱から法律になるまでに、例外の幅が広がった
大綱と成立した法律を並べると、災害の例外の書き方が変わっています。
| 令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日) | 法律案要綱(令和8年2月20日提出) | |
|---|---|---|
| 特定基準年より前の例外 | その居住する家屋が災害により全壊したことその他これに類する事由(当該事由が生じたことにつき税務署長の確認を受けた場合に限る。) | 災害、疾病その他のやむを得ない事由 |
| 用途を書く払出しの理由 | 学校等の入学金又は授業料その他の当該居住者等の教育費又は生活費の支払 | 当該居住者等の教育費又は生活費の支払に充てるためのもの |
「家屋の全壊」から「災害、疾病その他のやむを得ない事由」へ広がりました。 税務署長の確認という手続は、省令の側に残っています。
財務省「租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令要旨」(令和8年財務省令第21号)第1 1(2)。太字は引用者。非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置について、災害等の事由が生じたことにつき所轄税務署長の確認を受ける場合の手続の細目を定めるとともに、特定累積投資上場株式等移管等依頼書及び特定課税未成年者口座払出依頼書の記載事項の細目等を定める。
書類の名前まで決まっています。 教育費・生活費のために動かすときに出すのが、この2つの依頼書です。政令のほうも、災害、疾病その他のやむを得ない事由の細目を定めると書いています(令和8年政令第98号)。
誰がこの書類を出すのかについて、大綱には注が付いていました。
財務省「令和8年度税制改正の大綱」20ページ。(注) 上記の書類提出手続は当該居住者等の親権者等が行うとともに、上記の書類には特定事由に基因して払い出すことについて当該居住者等の同意を得たことを証する書類を添付しなければならない(下記ホ(ロ)の書類提出手続についても同様とする。)。
手続をするのは親権者等で、そこに子ども本人の同意を証する書類を添える、という組み立てです。 ただし、成立した法律の条文と法律案要綱には、この注に当たる文言がありません。条文は依頼書の記載事項を「その他の財務省令で定める事項」としており、省令要旨も「記載事項の細目等を定める」と書くだけです。したがって、この同意書の扱いが最終的にどうなったかは、省令の本文を見ないと確定できません(⑧参照)。
⑥ ジュニアNISAとの違い
| ジュニアNISA(終了) | 未成年者特定累積投資勘定 | |
|---|---|---|
| 対象 | 18歳未満(口座開設の年の1月1日現在)またはその年に出生した居住者等 | その年1月1日において18歳未満である年および出生した日の属する年 |
| 投資できた期間 | 平成28年から令和5年まで | 令和9年以後 |
| 年間投資額 | 80万円 | 60万円 |
| 非課税期間 | 最長5年間 | 定めなし |
| 買えるもの | 上場株式等 | 公募等株式投資信託の受益権のみ |
| 払出しの制限 | 2024年以降は年齢・事由を問わず全額払出し可(ただし一部だけは不可で、口座は廃止される) | 基準年の前年12月31日まで移管等の制限あり |
年間に入れられる額は減り、ためておける期間は長くなり、出口は厳しくなりました。 ジュニアNISAが最後に払出し制限を外したのとは、逆向きの設計です。
⑦ お金の出どころ ― 贈与税の110万円との関係
子どもが自分で稼いだお金でないかぎり、入れるお金は親か祖父母から出ます。
国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」。贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から暦年課税に係る基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。
年間投資枠60万円は、基礎控除額110万円の範囲に収まります。 差は50万円で、その年にほかの贈与がなければ、贈与税はかかりません。
ただし2つ注意があります。 ひとつは、110万円はもらう側で合計するということです。祖父母からの贈与がある年は、それも足して判定します。贈与税の110万円は2種類あるに詳しく書きました。
もうひとつは、口座の名義を子にしただけで贈与が成立するわけではないということです。国税庁No.4402は「贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です」と書いています。「取得したとき」です。 誰のお金で、誰の意思で入れたのかが問われます。この枠には基準年まで動かせないという制限が付きますから、少なくとも「親がいつでも引き出して使える」状態にはなりません。
⑧ まだ分からないこと
この記事の時点で、一次情報からは読み取れないことが4つあります。
1つ目は、金融機関がいつ受付を始めるかです。 法律の施行は令和9年1月1日ですが、金融庁のNISA特設ウェブサイトも国税庁No.1535も、2026年9月25日の時点では18歳以上のままの記述です。どちらかが更新されたときに、この記事も更新します。
2つ目は、3月31日と4月1日の前後に誕生日がある場合の基準年・特定基準年です。 条文は「その年三月三十一日において十八歳である年」という書き方をしています。年齢がいつ加算されるかは年齢計算ニ関スル法律の問題で、この日付の前後に誕生日がある子については、基準年が1年ずれる可能性があります。この記事の設例に6月生まれを使ったのはそのためです。 この点を明示した官公庁の資料は、執筆時点では見つけられていません。
3つ目は、政令・省令に委ねられた部分です。 条文は、災害等以外の「その他政令で定める事由による当該移管又は返還」を例外として置いていますが(③参照)、その事由の中身は令和8年政令第98号の要綱からは読み取れません。同じく、大綱の注にあった「書類提出手続は親権者等が行う」「本人の同意を証する書類を添付する」が最終的にどうなったかも、条文が「財務省令で定める事項」としているため、省令の本文を見ないと確定できません(⑤参照)。この記事では、いずれも「条文がそう書いているところまで」で止めてあります。
4つ目は、呼び名です。 「こどもNISA」も「ジュニアNISA」も法律の言葉ではありません。ジュニアNISAの条文上の名前は未成年者口座(租税特別措置法第37条の14の2)でした。今回の枠の条文上の名前は未成年者特定累積投資勘定です。金融機関が何と呼ぶかは、まだ決まっていません。
あなたの数字で確かめる手順
- 子の生年月日から、勘定を設けられる年を数える。 出生した年と、1月1日時点で18歳未満である年です。令和9年(2027年)より前の年は数に入りません。
- 基準年を出す。 その年の3月31日に18歳になっている年です。移管等の制限は、その前年の12月31日まで続きます。誕生日が3月31日や4月1日の前後にある場合は、⑧のとおり1年ずれる可能性があります。
- 特定基準年を出す。 その年の3月31日に12歳になっている年です。ここから、教育費・生活費の支払に充てるためであれば、書類を出して動かせるようになります。
- 入れられる年数を出す。 600万円 ÷ その年に入れる予定額 で、何年で天井に届くかが出ます。年60万円なら10年です。
- 1で数えた年数から4を引く。 それが、口座はあるのに買い足せない年数です。
- その年に子が受け取る贈与を合計する。 110万円を超えないか、祖父母からの分も含めて確認します。
まとめ
- NISAの口座開設可能年齢の下限を撤廃する法律は、すでに成立している。 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)が令和8年3月31日に成立・公布された。ただし租税特別措置法第37条の14の改正規定の施行は令和9年1月1日で、未成年者特定累積投資勘定を設けられるのも令和9年以後の各年に限られる
- 年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円。 18歳以上のNISAのつみたて投資枠120万円の半分、非課税保有限度額1,800万円の3分の1にあたる
- 買えるのは公募等株式投資信託の受益権だけ。 成長投資枠(特定非課税管理勘定)を同時に設けられないので、個別株は買えない
- 毎年上限まで買って売らなければ10年で天井に届く。 2027年6月15日生まれという設例では勘定を設けられる年が19年あり、残り9年・540万円分は使いようがない。出生した年から始めなくても間に合う
- 基準年(その年3月31日において18歳である年)の前年12月31日まで、口座の外へ移せない。 一次情報で中身まで確認できた例外は、災害、疾病その他のやむを得ない事由による全部の払出しと、特定基準年(その年3月31日において12歳である年)以後の教育費・生活費のための移管等の2つ。条文はこれに加えて「その他政令で定める事由」を置いており、そこは閉じていない
- 禁じられているのは持ち出すことだけではない。 条文は、移管・返還をしないこと、贈与をしないこと、譲渡の対価や配当等を受領後直ちに特定課税未成年者口座に預入れ・預託することの3つを並べている。どれか1つでも満たさなくなった時点で、非課税口座と特定課税未成年者口座の両方が廃止される
- その場合、口座を開いた日からの利益と配当等がまとめて精算され、百分の十五の税率で源泉徴収される。 そこで損が出ていても、その損はなかったものとみなされる。引き金は「引き出し」に限らないので、要綱の「取扱いに反する払出し」という書き方よりも条文のほうが広い
- 大綱から法律になる間に、災害の例外は「家屋の全壊」から「災害、疾病その他のやむを得ない事由」へ広がった。 手続の細目は令和8年政令第98号と令和8年財務省令第21号にある
- 年間投資枠60万円は、贈与税の暦年課税の基礎控除額110万円の範囲に収まる。 ただし110万円はもらう側で合計して判定する