税金

ガソリン減税25.1円はどこへ行ったか ― 価格は170円で止まっている

資源エネルギー庁の週次調査で、2026年10月19日のレギュラーガソリンの全国平均価格は170.2円でした。前週比プラス0.1円です。

その前の週は170.1円、その前は170.2円、その前は170.2円。2026年4月6日の調査から10月19日の調査まで27回、全国平均は167.4円から170.2円の間にしか動いていません。 振れ幅は2.8円です。

この間、ガソリンの暫定税率は廃止されています。2025年12月31日です。1リットルあたり25.1円の減税でした。

それでも価格は170円で止まっています。 減税の25.1円はどこへ行ったのか。資源エネルギー庁が毎週出している数字で分解します。

結論

暫定税率の廃止は、もう済んでいます。ただし価格が下がったのは廃止の日ではなく、その前です。廃止と同じ水準の値下げを補助金で先に実現しておき、廃止の日に補助金から税率へ置き換える、という順番で行われたからです。

そしていま、店頭価格の水準を決めているのは税率ではありません。原油価格の急騰を受けて、全国平均の小売価格に上限を置き、超えた分を全額補助する措置が入っているためです。価格は上限に張り付いています。

このとき、税率が下がったことで軽くなるのは、家計の支払額ではありません。上限まで価格を下げるために国が払う額です。減税が家計の支払額として現れるのは、補助金が終わる日です。

だから、いまのガソリン価格は「減税の結果」ではありません。 補助金が守っている水準であり、その下に減税後の税率が隠れています。この2つは、終わり方がまったく違います。補助金は予算措置で、税率は法律です。

計算の前提

項目条件
価格資源エネルギー庁「石油製品価格調査」の給油所小売価格(レギュラー・全国平均・現金価格・消費税込み)。原則として毎週月曜日調査・水曜日公表
直近2026年10月19日調査(2026年10月21日公表)
補助なし価格資源エネルギー庁の定義に従い「小売価格+その週の支給額」とする。2026年10月19日は170.2円+43.0円=213.2円で、公表値と一致する
支給額2026年10月22日から10月28日に適用する額は42.8円。2025年の期間ごとの額は「燃料油価格に関する支援策の推移」による
税率国税庁「揮発油税等の特例税率の廃止について」の表(1キロリットル当たり)と、財務省「自動車関係諸税・エネルギー関係諸税の概要(令和8年度)」の石油石炭税
消費税10%。揮発油税と石油石炭税は消費税の課税標準に含まれる(消費税法基本通達10-1-11)
税率引下げの価格への反映税率の引下げ分がそのまま価格に反映されることを前提に置く。 実際の転嫁率は本記事では検証していない
世帯のガソリン使用量総務省「家計調査」2025年・二人以上の世帯の実績。年間購入数量440.067リットル、年間支出金額72,474円。平均世帯人員2.87人
端数1リットル当たりの金額は小数第2位まで。年額は1円未満を四捨五入
計算は scripts/calc-gasoline-zantei-haishi.py を実行し、出力から転記しました。手計算はしていません。価格・支給額・税率・購入数量はすべて公式資料の実数で、架空の設例はありません。

① 暫定税率は、2025年12月31日に廃止された

国税庁は「揮発油税等の特例税率の廃止について」というページで、こう書いています。

令和7年12月に租税特別措置法の一部が改正されたことにより、揮発油税及び地方揮発油税(以下「揮発油税等」といいます。)の特例税率(合わせて53.8円/ℓ。以下「暫定税率」といいます。)が廃止され、揮発油税等の税率が次のようになりました。 国税庁「揮発油税等の特例税率の廃止について」(令和7年12月)

同じページの表です。

期間揮発油税地方揮発油税合計
~令和7年12月30日《暫定税率》48,600円5,200円53,800円(沖縄:46,800円)
令和7年12月31日~《本則税率》24,300円4,400円28,700円(沖縄:24,900円)
1キロリットル当たり。沖縄県の区域内にある揮発油の製造場から移出される揮発油等は税率が軽減されており、下がった幅も本土と違います(46,800円−24,900円=21,900円/キロリットル=21.9円/リットル)。

1リットルに直すと53.8円から28.7円になりました。下がった幅は25.1円です。

税率は1キロリットル単位で定められているので、53,800円と28,700円という表記になります。この2つの差25,100円を1,000で割った25.1円が、報道で「ガソリン減税25.1円」と呼ばれていた額です。

いまのガソリン1リットルにかかっている税は、これだけではありません。財務省「自動車関係諸税・エネルギー関係諸税の概要(令和8年度)」によると、石油石炭税が原油・石油製品に2,800円/キロリットル(本則2,040円/キロリットル)かかっています。

税1リットル当たり
揮発油税(本則)24.3円
地方揮発油税(本則)4.4円
石油石炭税2.8円
小計(消費税を除く)31.5円

この上に消費税10%が乗ります。

財務省の同じ資料の注3は「令和16年4⽉1⽇より、揮発油税の税率については24,000円、地⽅揮発油税の税率については4,700円となる」としています。合計は28,700円(28.7円/リットル)のままで、国と地方の取り分だけが変わります。本記事は合計で計算しているので影響を受けません。

② 下がったのは、廃止の日ではない

ここが報道と実績がずれるところです。資源エネルギー庁は、廃止の1か月以上前に、その理由を自分で説明していました。

Q2. 暫定税率が廃止されると、ガソリンの価格は25.1円下がるの? A. 暫定税率の廃止当日に、ガソリンの価格が25.1円下がるわけではありません。 2025年5月から、資源エネルギー庁では、ガソリンなどの燃料油価格について、定額を補助する支援を実施しています。この補助金を、2025年11月中旬から段階的に拡充していきます。これによって、ガソリンは12月中旬頃から、軽油は11月下旬頃から、順次、暫定税率を廃止するのと同じ水準の価格引き下げ効果が実現される見込みです。 資源エネルギー庁「ガソリンの暫定税率(当分の間税率)の廃止でガソリン代はどうなるの?」(2025年11月19日)太字は引用者

拡充の日程も同じページに書かれています。

具体的には、ガソリンについては11月13日に現行の補助金10円に5円が増額され、15円の補助金が支給されます。11月27日には20円の補助金が支給され、12月11日には、ガソリンの補助金は暫定税率による上乗せ分と同水準の25.1円になります。

つまり、補助金の額が暫定税率と同じ25.1円に届いたのは、廃止の20日前です。 12月31日に起きたのは、その25.1円の出どころが補助金から税率へ入れ替わったことです。

ただし、この入れ替えはぴったり中立ではありません。 資源エネルギー庁は補助なし価格を「小売価格+その週の支給額」と定義しているので、25.1円の補助金は店頭価格を25.1円下げる扱いになります。いっぽう揮発油税等は消費税の課税標準に含まれる(⑧)ので、25.1円の減税は店頭価格を27.61円下げます。同じ25.1円でも、税率のほうが2.51円だけ深く効きます。

実際にそうなっています。補助金が25.1円に届いた後も、価格は下がり続けました。

調査日レギュラー全国平均その期間の支給額
2025年12月15日159.7円25.1円
2026年1月19日154.7円なし(本則税率)

この5.00円の下がり方は、支給額25.1円の撤回(+25.1円)、暫定税率の廃止(−27.61円)、残り(−2.49円)に分かれます。2.51円は制度の入れ替えそのものが生んだ下げ幅で、残りの2.49円が原油側の動きと転嫁の遅れです。

なぜそうしたのか。理由は税制ではなく流通です。

A. 急激な価格変動による買い控えなどの流通の混乱を抑制するためです。 ガソリン価格が一気に大きく下がると買い控えが起こったり、その反動で急に需要が増えたりするなどして、流通の現場に混乱をまねいてしまうことがあります。給油待ちの渋滞や行列がおこってしまったり、ガソリンスタンドが一時的な在庫切れになったりすれば、ガソリンを必要とする人がかえって不便なことになりかねません。

③ 2025年11月から2026年1月の値下がりを、制度で分解する

週次調査の実績です。

調査日レギュラー全国平均その期間のガソリンへの支給額
2025年11月10日173.5円10円
2025年11月17日169.8円15円
2025年12月1日164.8円20円
2025年12月15日159.7円25.1円
2026年1月19日154.7円なし(税率へ置き換え)
支給額は資源エネルギー庁「燃料油価格に関する支援策の推移」の期間区分による。同資料は2025年12月31日から2026年3月18日までの対象油種を「軽油、灯油、重油、航空機燃料」としており、ガソリンは入っていない。

2025年11月10日の173.5円から2026年1月19日の154.7円まで、18.80円下がりました。 これを制度で分解します。

要素価格への効果
支給額が10円から0円へ(補助が減るので上がる)+10円
暫定税率の廃止(消費税込みで25.1円×1.1)−27.61円
2つの合計−17.61円
実際の変化−18.80円
説明できない残り(原油・為替など)−1.19円
支給額のほうに1.1倍を掛けていないのは、資源エネルギー庁が補助なし価格を「小売価格+支給額」と定義しており、支給額が消費税込みの店頭価格から1対1で引かれる扱いになっているためです(「計算の前提」)。いっぽう揮発油税等は消費税の課税標準に含まれるので、税率の引下げには1.1倍が付きます(⑧)。この非対称が、②で見た2.51円の差の正体です。

2つの制度変更で、実際の値下がりの93.7%が説明できます。 言い換えると、この2か月半に起きた値下がりは、原油や為替ではなく、ほぼ全部が制度の操作でした。

同じことを別の角度から見ると、もっとはっきりします。補助金を足し戻した「補助なし価格」で、税率をそろえて比べます。

調査日補助なし価格暫定税率がある状態に換算
2025年11月10日183.5円(173.5+10)183.5円
2026年1月19日154.7円(支給なし)182.31円(154.7+27.61)

差は1.19円です。補助金と税率の影響を取り除くと、この2か月半で原油側の価格はほとんど動いていませんでした。

④ 2026年3月、価格は1週間で29円上がった

ここで前提が変わります。

調査日レギュラーハイオク軽油灯油(18リットル・店頭)
2026年3月9日161.8円172.6円149.8円2,267円
2026年3月16日190.8円201.8円178.4円2,774円
差+29.0円+29.2円+28.6円+507円(1リットル当たり+28.17円)

すべての油種が、ほぼ同じ幅で上がっています。 税率や補助金の変更なら、油種ごとに額が違うはずです(ガソリンの暫定分は25.1円、軽油は17.1円、灯油への定額補助は5円)。同じ幅で動いたことは、原油の側の出来事であることを示しています。

2026年3月11日の総理のぶら下がり発言が、資源エネルギー庁の説明資料に抜粋で載っています。

今般のイラン情勢を受け、原油価格が足元で高騰する中、今週に入り、1バレル120ドルに迫る局面もございました。ちなみに、今日の原油価格は、おおむね1バレル90ドルに落ち着いておりますけれども、ガソリン価格が1リットル当たり200円を超える水準となる可能性も否めません。 資源エネルギー庁「イラン情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置について」(令和8年3月11日)に抜粋された高市総理ぶら下がり発言

⑤ いまの価格は、170円で止められている

同じ資料が、措置の中身を書いています。

具体的には、現在の燃料油補助金の基金残高を活用しガソリンについては、全国平均小売価格が、170円程度を超える見込みとなった場合には、その水準を超えないよう、170円を超える部分について10/10の補助を行う。 軽油・重油・灯油についてはガソリンと同額の補助を行う。 ※ 軽油については、暫定税率が廃止される4月1日まで、暫定税率相当の17.1円の補助に加えて、追加的に支給。 ※ 重油・灯油については、従前の5円の定額引下げ補助に代えて、ガソリンと同額の補助を行う。 ※ 航空機燃料については、従前の4円の定額引下げ補助に代えて、ガソリンの補助額の4割相当の支援とする。 資源エネルギー庁「イラン情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置について」(令和8年3月11日)太字は引用者

※の3行は、引用した2つの項目のすぐ下に原文で付いているものです。「ガソリンと同額」の係り方が油種で違います。重油・灯油は従前の5円に代えて同額、軽油は暫定税率が残っていた4月1日までは17.1円に加えて同額です。なお航空機燃料の割合は、その後2026年9月3日からガソリンの補助額の8割相当に変わっています(「燃料油価格に関する支援策の推移」)。措置の呼び方も、3月11日の説明資料では「イラン情勢を踏まえた」、いまの特設ページでは「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」です。

開始は「3/19(木)出荷分から」です。

価格の上限を170円に置き、超えた分を全額補助する。 これが、いまの価格の形を決めています。

050100150200(円)この週の木曜(3月19日)から170円の上限1702025年11月10日2025年12月15日2026年1月19日2026年3月9日2026年3月16日2026年4月20日2026年7月21日2026年10月19日
レギュラー全国平均

左から3つ目までが、補助金の拡充と暫定税率の廃止で下がっていった局面です。5つ目で急に跳ね上がり、その週の木曜から上限の措置が入ります。右の3つは高さがほとんど同じです。原油が動いても、上限で止められているからです。

レギュラーガソリンの全国平均価格(現金価格・消費税込み)。横軸は調査日で、間隔は日数に比例していません。

実績で確かめます。

期間調査の回数最低最高振れ幅平均
2026年4月6日調査〜2026年10月19日調査27回167.4円170.2円2.8円169.65円

半年以上にわたって、全国平均が170円の近くから動いていません。

「27回」は調査の回数で、暦の週数(29週)ではありません。本来の調査日である月曜日が祝日に当たる週は、調査が火曜日にずれます(この期間では2026年7月21日と2026年10月13日)。月曜と火曜が続けて祝日になる週は調査そのものがなく、2026年5月4日の週と2026年9月21日の週は週次ファイルに結果がありません(補完していません)。

支給額の決め方も公表されています。2026年10月21日公表の資料には、こう書かれています。

10月22日(木)から適用するガソリンの補助額は42.8円。 ※支給単価=翌週の想定ガソリン小売価格(今週の価格170.2円+前週の支給額43.0円+原油価格の変動分−0.4円)−基準価格170.0円

基準価格170.0円を引いた残りが、そのまま支給額になります。 170.2+43.0−0.4−170.0=42.8で、公表値と一致します。価格ではなく支給額が調整弁になっている、ということです。

上の注記は週ごとに動く部分だけを書いたものです。資源エネルギー庁「緊急的激変緩和措置の支給単価の算定方法変更について」は、算式を「支給単価=今週のガソリン全国平均小売価格+前週の支給単価+原油価格の変動【週次改定】+調整単価の変動【月次改定】−基準単価170円」と示しています。「調整単価」は、代替調達で元売事業者が国際市場価格を上回って支払う額などを月ごとに算定して乗せるもので、2026年7月2日の支給単価から適用が始まりました(7月分4.9円、2026年10月分は3.7円)。月が替わらない週は変動がゼロなので、上の週次の注記と一致します。したがって公表されている補助なし価格(小売価格+支給額)には、この調整単価の積み上がりも含まれており、原油の市場価格そのものではありません。

⑥ 170.2円の内訳

2026年10月19日の170.2円と、資源エネルギー庁が公表している補助なし価格213.2円を、税の内訳に分けます。

170.2円いまの小売価格213.2円補助金が無かった場合240.81円補助金が無く暫定税率も残っていた場合
いまの小売価格補助金が無かった場合補助金が無く暫定税率も残っていた場合
原油・精製・流通など123.23162.32162.32
揮発油税+地方揮発油税28.728.753.8
石油石炭税2.82.82.8
消費税15.4719.3821.89
合計170.2213.2240.81

左がこの週に実際に払っていた額です。真ん中との差43.0円が、この週に国が払っていた分です。右は暫定税率が残っていた場合で、いちばん下の帯(原油・精製・流通など)は真ん中とまったく同じ162.32円です。違うのは税の帯の高さだけで、そこが25.1円分、消費税まで入れて27.61円分だけ厚くなります。

レギュラーガソリン1リットルの内訳(2026年10月19日調査・全国平均・消費税込み)

いちばん下の帯が真ん中と右で同じ162.32円になるのは偶然ではありません。暫定税率の有無は、原油や流通の部分を1円も動かさないからです。 動くのは税の帯と、その上に乗る消費税だけです。

補助金43.0円の中身も分けられます。税抜の部分が39.09円、それに対応する消費税が3.91円です。補助金で価格が下がると、消費税も一緒に減ります。

⑦ 減税は、いま誰の負担を軽くしているか

ここが、この記事の本題です。

価格の上限が170円に固定されている間、税率が下がっても店頭価格は下がりません。上限で止まっているからです。下がるのは、上限まで価格を下げるために国が払う額です。

項目金額
2026年10月19日の補助なし価格213.2円
暫定税率が残っていた場合の補助なし価格240.81円(213.2+27.61)
基準価格170.0円まで下げるのに必要な支給額(暫定税率が残っていた場合)70.81円
同(いまの税率。213.2−170.0)43.2円
差27.61円

この27.61円が、暫定税率の廃止によって国が払わずに済んでいる額です。 家計の支払額ではなく、補助金の必要額が減っています。消費税を乗せた暫定税率の額と一致します。支給単価は基準価格を引いて決まるので、税率が下がった分だけ、そのまま必要な支給額が減ります。

比べているのは、どちらも「基準価格まで下げるのに必要な額」です。同じ週に実際に適用されていた支給額43.0円と並べてはいけません。算式のとおり支給単価は前週の時点の想定で決まるため、実現した小売価格170.2円は基準価格170.0円を0.2円だけ上回っています。この0.2円は想定とのずれであって、暫定税率とは関係がありません。

これは「減税が無駄になった」という意味ではありません。意味が変わっただけです。

  • 補助金が続いている間:減税は基金の減りを遅らせている
  • 補助金が終わった後:減税は店頭価格を25.1円(消費税込みで27.61円)低くする

減税の効果が家計の支払額として現れるのは、補助金が終わる日です。 それまでは、効いていないのではなく、別の場所で効いています。

⑧ ガソリンと軽油で、消費税の扱いが逆になっている

ここは税理士の領域です。同じ「暫定税率の廃止」でも、ガソリンと軽油で消費税の効き方が逆になります。

国税庁の消費税法基本通達10-1-11(個別消費税の取扱い)の原文です。

法第28条第1項《課税標準》に規定する課税資産の譲渡等の対価の額には、酒税、たばこ税、揮発油税、石油石炭税、石油ガス税等が含まれるが、軽油引取税、ゴルフ場利用税及び入湯税は、利用者等が納税義務者となっているのであるから対価の額に含まれないことに留意する。ただし、その税額に相当する金額について明確に区分されていない場合は、対価の額に含むものとする。 国税庁 消費税法基本通達10-1-11(個別消費税の取扱い)太字は引用者

揮発油税は課税標準に含まれます。だから25.1円の引下げは、消費税込みで27.61円の引下げ効果になります。

25.1円の中身は、揮発油税が24.3円(48,600円−24,300円)、地方揮発油税が0.8円(5,200円−4,400円)です。通達が名前を挙げているのは「揮発油税」までで、地方揮発油税は列挙の末尾の「等」に入るという読み方になります(通達に名指しの記載はありません)。国税庁は両者を合わせて「揮発油税等」と呼び、税率も合計で示しています。

軽油引取税は含まれません。納税義務者が利用者等だからです。だから17.1円の引下げに1.1倍は付きません。

油種暫定分消費税の扱い税込の引下げ効果
ガソリン(揮発油税等)25.1円課税標準に含まれる27.61円
軽油(軽油引取税)17.1円課税標準に含まれない(原則)17.1円(原則)

差は10.51円です(原則どおりに区分されている場合)。暫定分の差8.0円より、消費税の扱いの違いの分だけ開きます。

ただし書を読み落とさないことが大切です。 「その税額に相当する金額について明確に区分されていない場合は、対価の額に含むものとする」とあります。給油所の価格表示や領収書で軽油引取税の額が区分されていなければ、対価の額に含まれます。どちらになるかは、店の表示の仕方で決まります。

軽油の側の日付も押さえておきます。総務省「地方税法等の一部を改正する法律の概要」は「軽油引取税の当分の間税率を令和8年4月1日に廃止」としています。総務省「地方税制度|軽油引取税」の税率の欄は、いま「1キロリットルにつき15,000円」です。

同じ資料には、地方財政への対応も書かれています。

当分の間税率の廃止に係る安定財源確保(約5,000億円)が完成するまでの間、地方の財政運営に支障が生じないよう、地方財政措置において適切に対応 ※ 令和8年度地方特例交付金 軽油引取税:4,297億円 地方揮発油譲与税:296億円

⑨ 補助金と税率は、終わり方が違う

同じ25.1円の値下げでも、補助金で実現していた2025年11月から12月と、税率で実現しているいまとでは、続く確かさが違います。

補助金税率
根拠予算措置(基金)法律(租税特別措置法の改正)
終わるとき予算が尽きたとき、または政策判断法律を変えたとき
終了日公表されていない期限の定めはない

補助金の財源は、資源エネルギー庁「燃料油価格に関する支援策の推移」によると令和7年予備費7,948億円、令和8年第1次補正予算6,136億円で、2021年度からの累計予算額は9兆5,804億円です。

終了については、こう書かれているだけです。

中東情勢の動向やそれを受けた原油価格の水準も見極めながら、事態が長期化した場合には、今後とも支援の在り方を柔軟に検討する。 資源エネルギー庁「イラン情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置について」(令和8年3月11日)

期限は一次情報に書かれていないので、いつ終わるかは書けません。 書けるのは、終わったときに何が起きるかです。

2026年10月19日の実績値で言えば、補助金が外れた日の価格は補助なし価格の213.2円に近づきます。いまより43.0円高い水準です。そのときに、暫定税率の廃止が店頭価格を27.61円低くしている状態になります。 暫定税率も残っていれば240.81円だったからです。

あなたの数字で確かめる手順

① 1か月の給油量を出す

給油のレシートを1か月分合計します。リットル数が分からなければ、1か月のガソリン代を、そのとき払った1リットルの単価で割ります。

総務省「家計調査」の2025年の実績では、二人以上の世帯のガソリンの年間購入数量は440.067リットル、年間支出金額は72,474円です。月に直すと36.7リットルです。

支出金額を購入数量で割ると164.69円/リットルになり、資源エネルギー庁の調査価格より低く出ます。調査が給油所店頭の現金価格を取っているのに対し、家計調査には会員価格やセルフの価格が入るためです。本記事が家計への金額を出すのに使うのは数量のほうです。

② 2つの単価を掛ける

掛ける額意味
27.61円暫定税率の廃止(25.1円×1.1)。補助金が終わった後に店頭価格へ効く額
42.8円2026年10月22日から10月28日に適用される支給額。いま国が払っている額

③ 年額にする

月の給油量×12×単価です。家計調査の440.067リットルで計算すると、こうなります。

項目年月
暫定税率の廃止(27.61円)12,150円1,013円
いまの支給額(42.8円)18,835円1,570円
2つの合計30,985円2,582円

給油量別だとこうです。

月の給油量年間減税(27.61円)補助金(42.8円)合計
20リットル240リットル6,626円10,272円16,898円
30リットル360リットル9,940円15,408円25,348円
40リットル480リットル13,253円20,544円33,797円
50リットル600リットル16,566円25,680円42,246円
80リットル960リットル26,506円41,088円67,594円
100リットル1,200リットル33,132円51,360円84,492円

④ 世帯人員で差が出ることを見ておく

家計調査2025年の自動車等維持費(1か月)は、世帯人員で違います。

世帯人員自動車等維持費平均比
平均(2.87人)18,670円1.000倍
2人16,835円0.902倍
3人19,404円1.039倍
4人21,120円1.131倍
5人21,557円1.155倍
6人以上22,895円1.226倍
ガソリンだけの額ではありません。車検・駐車場代・修理代なども含む用途分類の金額です。家計調査の品目分類では世帯人員別のガソリン数量が公表区分として無いため、世帯人員による差の目安としてこの表を置きました。4人世帯のガソリン使用量が平均の1.131倍だ、という意味ではありません。

⑤ 自分で最新の数字を取る窓口

見るもの場所
週次の全国平均価格と補助なし価格資源エネルギー庁「石油製品価格調査 調査の結果」。原則毎週水曜14時公表
その週の支給額資源エネルギー庁「緊急的激変緩和措置」のページ。支給単価が毎週更新される
税率国税庁「揮発油税等の特例税率の廃止について」、財務省「自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料」
軽油引取税総務省「地方税制度|軽油引取税」

まとめ

  • ガソリンの暫定税率は2025年12月31日に廃止された。国税庁の表で、揮発油税48,600円+地方揮発油税5,200円=53,800円(1キロリットル)が、24,300円+4,400円=28,700円になった。1リットルでは53.8円から28.7円へ、25.1円の引下げ
  • 補助金の額が暫定税率と同じ25.1円に届いたのは、廃止の20日前だった。 資源エネルギー庁は補助金を2025年11月13日に15円、11月27日に20円、12月11日に25.1円と拡充した。理由は税制ではなく、買い控えと給油待ちの行列を避けるため
  • ただし補助金から税率への置き換えは、ぴったり中立ではない。 資源エネルギー庁の定義では25.1円の補助金は店頭価格を25.1円下げる扱いだが、揮発油税等は消費税の課税標準に含まれるので25.1円の減税は27.61円下げる。差は2.51円。 実際に12月15日の159.7円から2026年1月19日の154.7円へさらに5.00円下がり、その内訳は支給額の撤回+25.1円、暫定税率の廃止−27.61円、残り−2.49円だった
  • 2025年11月10日の173.5円から2026年1月19日の154.7円まで18.80円下がったが、そのうち17.61円は制度の操作で説明できる(支給額が10円から0円へ+10円、暫定税率の廃止−27.61円)。残りは1.19円で、原油側はほとんど動いていなかった
  • 2026年3月16日調査で、全国平均は1週間に29.0円上がった。 ハイオク+29.2円、軽油+28.6円、灯油+507円(18リットル。1リットル当たり+28.17円)と、全油種がほぼ同じ幅で動いており、税率や補助金ではなく原油の側の出来事だった
  • 2026年3月19日出荷分から「緊急的激変緩和措置」が始まった。全国平均小売価格が170円程度を超える見込みになったら、超える部分を10分の10補助するという内容。価格の上限を置く措置である
  • 実績では、2026年4月6日調査から10月19日調査までの27回の調査で、全国平均は167.4円から170.2円の間にしか動いていない。 振れ幅2.8円、平均169.65円。支給単価の算式も「基準価格170.0円」を引いて決めている
  • したがって、いまの価格を決めているのは税率ではなく上限である。 税率が下がっても店頭価格は下がらず、下がるのは上限まで価格を下げるために国が払う額。2026年10月19日の補助なし価格213.2円に暫定税率を戻すと240.81円で、基準価格まで下げるには70.81円の支給が必要になる。いまの税率なら43.2円で足りるので、差の27.61円が、減税によって国が払わずに済んでいる額(消費税を乗せた暫定税率の額と一致する)
  • 減税が家計の支払額として現れるのは、補助金が終わる日。 そのとき価格は補助なし価格の213.2円に近づくが、暫定税率が残っていた場合の240.81円よりは27.61円低い
  • 補助金と税率は終わり方が違う。 補助金は予算措置(令和7年予備費7,948億円、令和8年第1次補正予算6,136億円、累計9兆5,804億円)で、終了日は公表されていない。税率は法律で、期限の定めがない
  • ガソリンと軽油で、消費税の扱いが逆になる。 消費税法基本通達10-1-11は、揮発油税は課税標準に含まれるが軽油引取税は含まれないとしている。したがって税込の引下げ効果はガソリン27.61円、軽油17.1円で、差は10.51円。ただし「税額に相当する金額について明確に区分されていない場合は、対価の額に含む」というただし書があり、店の表示の仕方で変わる
  • 軽油引取税の当分の間税率は令和8年4月1日に廃止された(暫定分17.1円)。総務省の税率の欄はいま1キロリットルにつき15,000円。減収への対応として令和8年度地方特例交付金に軽油引取税4,297億円・地方揮発油譲与税296億円が計上され、安定財源確保(約5,000億円)が完成するまで地方財政措置で対応するとされている
  • 家計調査2025年の二人以上の世帯の実績(年間440.067リットル)で計算すると、暫定税率の廃止は年12,150円、いまの支給額42.8円は年18,835円、2つの合計で年30,985円になる

よくある質問

ガソリンの暫定税率は、結局いつ廃止されたのですか。

2025年(令和7年)12月31日です。国税庁「揮発油税等の特例税率の廃止について」は、令和7年12月に租税特別措置法の一部が改正されたことにより、揮発油税および地方揮発油税の特例税率(合わせて53.8円/ℓ)が廃止されたとしています。同じページの表では、令和7年12月30日までが暫定税率で揮発油税48,600円/キロリットル・地方揮発油税5,200円/キロリットル・合計53,800円/キロリットル、令和7年12月31日からが本則税率で揮発油税24,300円/キロリットル・地方揮発油税4,400円/キロリットル・合計28,700円/キロリットルです。1リットルに直すと53.8円から28.7円になったので、下がった幅は25.1円です。なお軽油引取税の当分の間税率は、総務省「地方税法等の一部を改正する法律の概要」が示すとおり令和8年4月1日に廃止されました。こちらの暫定分は1リットル17.1円です。

暫定税率が廃止された日に、ガソリン価格は25.1円下がったのですか。

下がっていません。資源エネルギー庁は廃止の前に、その理由を自分で説明しています。「暫定税率の廃止当日に、ガソリンの価格が25.1円下がるわけではありません」「2025年11月13日から2週間ごとに5円ずつ補助金を拡充します。最終的には、暫定税率による上乗せ分と同じ水準にまで補助金を引き上げます」。具体的には、ガソリンへの補助金が11月13日に15円、11月27日に20円、12月11日に25.1円と段階的に引き上げられ、暫定税率が廃止される前に値下げが先に進んでいました。急に価格が下がると買い控えや給油待ちの行列が起きて流通が混乱するためです。実際の週次調査でも、全国平均は2025年11月10日の173.5円から12月15日の159.7円へ、廃止の前に下がっています。12月31日の廃止は、補助金で実現していた値下げを税率へ置き換える日でした。ただし置き換えはぴったり中立ではありません。資源エネルギー庁の定義では25.1円の補助金は店頭価格を25.1円下げる扱いですが、揮発油税等は消費税の課税標準に含まれるので25.1円の減税は27.61円下げます。差の2.51円の分だけ、置き換えた後のほうが深く下がります。実際に12月15日の159.7円から2026年1月19日の154.7円まで、さらに5.00円下がりました(支給額25.1円の撤回で+25.1円、暫定税率の廃止で−27.61円、残り−2.49円)。

いまガソリン価格を抑えているのは、減税ですか、補助金ですか。

補助金です。2026年3月11日の総理指示に基づき、資源エネルギー庁は緊急的激変緩和措置を3月19日出荷分から始めました(3月11日の説明資料の題名は「イラン情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置について」、いまの特設ページの題名は「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」です)。内容は「ガソリンについては、全国平均小売価格が、170円程度を超える見込みとなった場合には、その水準を超えないよう、170円を超える部分について10/10の補助を行う」というものです。つまり価格の上限を170円に置き、超える分を全額補助します。実際に2026年4月6日調査から10月19日調査までの27回、全国平均は167.4円から170.2円の間に収まっており、振れ幅は2.8円しかありません。2026年10月19日調査の全国平均は170.2円で、同じ週に適用されていた支給額は43.0円、資源エネルギー庁が示す補助なし価格は213.2円です。価格の水準を決めているのは原油でも税率でもなく、170円という基準価格です。

では、25.1円の減税は誰の負担を軽くしているのですか。

いまのところ、家計の支払額ではなく、補助金の必要額を減らしています。価格の上限が170円に固定されているため、税率が下がっても店頭価格は下がりません。下がるのは「170円に抑えるために国が払う額」です。2026年10月19日調査の補助なし価格213.2円に、暫定税率が残っていた場合の消費税込み27.61円を足すと240.81円になります。この水準から基準価格170.0円まで下げるには70.81円の支給が必要です。いまの税率なら213.2円を170.0円まで下げるだけなので43.2円で足ります。差の27.61円が、暫定税率の廃止によって国が払わずに済んでいる額で、消費税を乗せた暫定税率の額と一致します。なお同じ週に実際に適用されていた支給額は43.0円でした。支給単価は前週の時点の想定で決まるため、実現した小売価格170.2円は基準価格を0.2円上回っています。比べるときは、どちらも「基準価格まで下げるのに必要な額」でそろえます。ただし、これは減税が無駄になったという意味ではありません。緊急的激変緩和措置が終われば価格の上限は外れ、そのとき店頭価格を決めるのは税率です。減税の効果は、補助金が終わる日に初めて家計の支払額として現れます。

補助金はいつまで続くのですか。

終了日は公表されていません。資源エネルギー庁の説明資料は「中東情勢の動向やそれを受けた原油価格の水準も見極めながら、事態が長期化した場合には、今後とも支援の在り方を柔軟に検討する」としており、期限を定めていません。財源は「燃料油価格激変緩和基金」の残高で、資源エネルギー庁「燃料油価格に関する支援策の推移」によると令和7年予備費7,948億円、令和8年第1次補正予算6,136億円が充てられ、2021年度からの累計予算額は9兆5,804億円です。ここで押さえておきたいのは、補助金と税率の違いです。補助金は予算措置なので、予算が尽きれば終わります。税率は法律なので、法律を変えなければ戻りません。同じ25.1円の値下げでも、補助金で実現していた2025年11月から12月と、税率で実現しているいまとでは、続く確かさが違います。

ガソリンと軽油で、減税の効き方は違うのですか。

違います。消費税の課税標準の扱いが逆です。国税庁の消費税法基本通達10-1-11(個別消費税の取扱い)は「法第28条第1項《課税標準》に規定する課税資産の譲渡等の対価の額には、酒税、たばこ税、揮発油税、石油石炭税、石油ガス税等が含まれるが、軽油引取税、ゴルフ場利用税及び入湯税は、利用者等が納税義務者となっているのであるから対価の額に含まれないことに留意する。ただし、その税額に相当する金額について明確に区分されていない場合は、対価の額に含むものとする」としています。揮発油税は消費税の課税標準に含まれるので、25.1円の引下げは消費税込みで27.61円の引下げ効果になります。軽油引取税は原則として含まれないので、17.1円の引下げに消費税の1.1倍は付きません。ただし、ただし書に注意が必要です。税額相当額が明確に区分されていなければ対価の額に含まれるので、給油所の表示や領収書で区分されているかどうかで扱いが変わります。

我が家ではいくらの話になるのですか。

総務省「家計調査」の2025年の実績では、二人以上の世帯のガソリンの年間購入数量は440.067リットル、年間支出金額は72,474円です。月に直すと36.7リットルです。この数量で計算すると、暫定税率の廃止による消費税込み27.61円は年12,150円、いまの支給額42.8円は年18,835円、2つの合計は年30,985円になります。ご自身の数字で出すには、給油のレシートで1か月の給油量を合計し、その12倍に27.61円と42.8円を掛けてください。月30リットルなら減税が年9,940円・補助金が年15,408円、月50リットルなら減税が年16,566円・補助金が年25,680円です。なお世帯人員が多いほど自動車関係の支出は増えます。家計調査2025年の自動車等維持費は1か月あたり平均18,670円に対して4人世帯は21,120円で、平均の1.131倍です(ガソリンだけの額ではなく、車検や駐車場代なども含みます)。

2026年3月に価格が急に上がったのは何だったのですか。

原油価格の急騰です。資源エネルギー庁の週次調査では、レギュラーの全国平均が2026年3月9日調査の161.8円から3月16日調査の190.8円へ、1週間で29.0円上がりました。同じ週にハイオクも172.6円から201.8円へ、軽油も149.8円から178.4円へ、灯油の店頭価格も18リットル2,267円から2,774円(1リットル当たり+28.17円)へ、ほぼ同じ幅で動いています。すべての油種がほぼ同じ幅で動いたことは、税率や補助金の変更ではなく原油の側の出来事であることを示します。2026年3月11日の総理のぶら下がり発言は「今般のイラン情勢を受け、原油価格が足元で高騰する中、今週に入り、1バレル120ドルに迫る局面もございました」「ガソリン価格が1リットル当たり200円を超える水準となる可能性も否めません」と述べており、この局面に対応して3月19日出荷分から緊急的激変緩和措置が始まりました。その後、全国平均は10月19日調査の170.2円まで20.6円下がっています。

出典

制度の内容は改正されることがあります。判断の際は必ず出典元の最新情報をご確認ください。