2026年9月18日、三菱UFJ銀行は短期プライムレートを年2.375%から年2.625%へ引き上げると発表しました。改定日は2026年11月2日です。
短期プライムレートの改定(改定日:2026 年11 月2 日(月)) 変更前 2.375% 変更後 2.625% 増減 +0.25% 三菱UFJ銀行「短期プライムレートの改定について」(2026年9月18日)
ところが、日本銀行の統計を見ると、その2.625%には、すでに到達している銀行があります。
| 2026年8月3日以降 | 短期プライムレート |
|---|---|
| 最頻値(5行のうち最も多くが採用) | 年2.375% |
| 最高値 | 年2.625% |
| 最低値 | 年2.375% |
三菱UFJ銀行が2026年11月に到達する水準に、別の銀行は2026年8月の時点で届いている。短期プライムレートは、銀行ごとに違う金利です。
結論
短期プライムレートは、日本銀行が決める金利ではありません。銀行が自分で決める金利です。日銀が公表しているのは、主要行の値を集めた統計であって、命令でも基準でもありません。
だから、水準がそろっていません。上がる日もそろいません。ニュースが「短期プライムレートが上がった」と伝えるとき、それは統計上の代表値が動いたという意味であって、あなたが借りている銀行がもう上げたという意味ではありません。
そして、上がったとしても住宅ローンの金利がその日に動くわけでもありません。短期プライムレートの改定日、基準金利の見直し日、返済への反映日は、それぞれ別に定められています。
したがって、自分の返済がいつ・いくら変わるかを知る方法は、自分の借入先の告知を読むことしかありません。 他行の発表も、統計の代表値も、その答えにはなりません。
計算の前提
| 項目 | 置いた条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 短期プライムレートの実績 | 日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」の最頻値・最高値・最低値 | 2026年9月11日現在の公表データ |
| 対象の5行 | みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行・りそな銀行・埼玉りそな銀行 | 同統計の注記 |
| 個別行の告知 | 三菱UFJ銀行 | 改定日・基準金利の見直し日を自行で公表している |
| 残高 | 3,000万円(架空の設例) | — |
| 残りの期間 | 35年(架空の設例) | — |
| 返済方法 | 元利均等返済、金利は全期間一定(架空の設例) | 比較のために置いた |
| 適用金利 | 年1.00%と年1.25%(架空の設例) | 0.25ポイントの差を見るために置いた |
日付・水準・日数はすべて公表資料の実績値です。 残高・期間・適用金利だけが、説明のために置いた架空の設定です。
なお、短期プライムレートの差がそのまま適用金利の差になるのは、引下げ幅が同じ場合に限ります。 住宅ローンの適用金利は「基準金利 − 引下げ幅」で決まり、引下げ幅は契約ごとの条件だからです。この記事の設例は「引下げ幅が同じなら」という置き方をしています。
日銀が公表しているのは、5行の最頻値・最高値・最低値
まず、日本銀行の統計が何を載せているのかを確かめます。注記にこう書かれています。
都市銀行(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行)が自主的に決定した金利のうち、最も多くの数の銀行が採用した金利および最高、最低の金利。 日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降」注1
読みどころは2つあります。
ひとつは「自主的に決定した」。日銀が決めているのではなく、各行が決めています。
もうひとつは「最も多くの数の銀行が採用した金利および最高、最低の金利」。つまり公表されているのは3つの数字であって、1つではありません。ニュースで「短期プライムレートは2.375%」と言われるとき、それは最頻値のことです。
同じ統計の注記には、最頻値が「不定」になる場合の説明もあります。
最も個数の多いデータが複数ある場合。 同上 注2
5行の値がばらけて、最も多い値が決まらない状態が、実際に記録されています。後で見ます。
最高値と最低値は、17年以上離れたまま
最高値と最低値の差を、実績で並べます。
| 期間 | 最高値 | 最低値 | 開き |
|---|---|---|---|
| 2009年1月13日〜2024年9月1日 | 年1.725% | 年1.475% | 0.25ポイント |
| 2024年9月2日〜2025年3月11日 | 年1.875% | 年1.625% | 0.25ポイント |
| 2025年3月12日〜2025年3月16日 | 年2.125% | 年1.625% | 0.50ポイント |
| 2025年3月17日〜2026年2月2日 | 年2.125% | 年1.875% | 0.25ポイント |
| 2026年2月3日〜2026年2月8日 | 年2.375% | 年1.875% | 0.50ポイント |
| 2026年2月9日〜2026年8月2日 | 年2.375% | 年2.125% | 0.25ポイント |
| 2026年8月3日〜(2026年9月11日現在) | 年2.625% | 年2.375% | 0.25ポイント |
17年以上、最高値と最低値は0.25ポイント離れたままです。 そして利上げの途中では、一時的に0.50ポイントまで開いています。
3本の線が重なっていないことが、この図の要点です。左端では最頻値と最低値が重なり、その上に最高値だけが離れています。右へ行くほど3本とも上がりますが、上下の間隔は開いたままです。つまり、どの時点を切っても『銀行によって違う』が成り立っています。
どの銀行が最高値で、どの銀行が最低値かは、この統計からは分かりません。 日銀は5行をまとめた代表値しか公表していないためです。自分の借入先の水準は、その銀行が出している短期プライムレートのページで確認することになります。三菱UFJ銀行の場合、専用のページに「年2.375%(2026年8月3日より適用)」と1行で書かれています。
15年7か月、動かなかった
もうひとつ、統計から読める事実があります。
最頻値は、2009年1月13日から2024年9月1日まで、年1.475%のまま動きませんでした。15年7か月です。
同じ期間に、同じ表の右端にある長期プライムレートは71回変わっています(年0.90%から年2.30%のあいだを動きました)。長期プライムレートは、みずほ銀行が自主的に決定・公表した金利として掲載されているものです。
| 短期プライムレート(最頻値) | 長期プライムレート | |
|---|---|---|
| 2009年1月13日〜2024年9月1日の変更回数 | 0回 | 71回 |
| その間の水準 | 年1.475%で一定 | 年0.90%〜年2.30% |
| 2026年9月時点 | 年2.375%(2026年8月3日〜) | 年3.40%(2026年9月10日〜) |
「ずっと変わらなかったもの」という印象は、2024年までは正しかったのです。 ただし2024年9月2日に動いてからは、2026年8月3日までの約2年で最頻値が年1.475%から年2.375%まで上がりました。三菱UFJ銀行は2026年11月2日に年2.625%とすることを発表しています。長く動かなかったことは、今後も動かない理由にはなりません。
同じ利上げでも、上がる日はそろわない
次に、5行が同じ日に動くのかを見ます。日銀の統計は実施日ごとの記録なので、同じ利上げの局面で何日かかって全行が動いたかを数えられます。
| 局面 | 最頻値が動いた日 | 最低値が動いた日 | かかった日数 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 2024年9月2日 | 2024年9月2日 | 0日 |
| 2025年 | 2025年3月3日 | 2025年3月17日 | 14日 |
| 2026年2月 | 2026年2月2日 | 2026年2月9日 | 7日 |
| 2026年8月 | 2026年8月3日 | 2026年8月3日 | 0日 |
そろう回と、そろわない回があります。 2025年の局面では14日かかりました。
その途中では何が起きていたか。統計はこう記録しています。
| 実施日 | 最頻値 | 最高値 | 最低値 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月3日 | 年1.875% | 年1.875% | 年1.625% |
| 2025年3月12日 | 不定 | 年2.125% | 年1.625% |
| 2025年3月17日 | 年1.875% | 年2.125% | 年1.875% |
5行の値がばらけて、最も多い値が決まらなかったということです。この状態が5日間続いています。2026年2月にも同じことが起きました(2月3日から8日まで)。
つまり、ニュースが「短期プライムレートが上がった」と伝えた時点で、自分の銀行がまだ上げていないという状態は、実際に起きています。
上がったあと、住宅ローンに届くまで
短期プライムレートが上がったとして、住宅ローンの金利はいつ動くのか。三菱UFJ銀行は、2026年9月18日付の告知でこう書いています。
2026年9月18日発表の「短期プライムレートの引き上げ」に伴い、2026年12月1日より住宅ローンの変動金利の基準金利を見直しします。 三菱UFJ銀行「【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて」
ただし、この「2026年12月1日」が自分の契約の基準日になるとは限りません。 同じ告知は読者を借入時期で2つに分けています。すでに借りている人(告知の見出しでは「2026年11月30日以前に当行住宅ローンをお借り入れの方」)については、金利の種類ごとに「直近の金利見直しの基準日」を別々に定めた表が置かれています。
変動金利(毎月型)|直近の金利見直しの基準日 2026年12月1日|新利率の適用開始日 2027年1月の返済日の翌日(2027年2月の約定返済分より反映) 変動金利(年2回型)|直近の金利見直しの基準日 2027年4月1日|新利率の適用開始日 2027年6月の返済日の翌日(2027年7月約定返済分より反映) 三菱UFJ銀行「【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて」
年2回型の基準日は2027年4月1日で、基準金利が見直される2026年12月1日ではありません。 日付を並べるとこうなります。
| 段階 | 日付 |
|---|---|
| 日銀が政策金利の引き上げを決定 | 2026年9月18日 |
| 同行が短期プライムレートの改定を発表 | 2026年9月18日 |
| 短期プライムレートの改定日 | 2026年11月2日 |
| 住宅ローンの基準金利の見直し | 2026年12月1日 |
| 金利見直しの基準日(毎月型) | 2026年12月1日 |
| 新利率の適用開始(毎月型) | 2027年1月の返済日の翌日 |
| 返済に反映(毎月型) | 2027年2月の約定返済分 |
| 金利見直しの基準日(年2回型) | 2027年4月1日 |
| 新利率の適用開始(年2回型) | 2027年6月の返済日の翌日 |
| 返済に反映(年2回型) | 2027年7月の約定返済分 |
これから借りる人は、この表ではありません。 同じ告知は、2026年12月1日以降に借り入れる場合を別に書いています。
2026年12月1日以降に当行住宅ローンをお借り入れの方 2026年12月の基準金利は、2026年11月30日に発表します。以降、毎月1日を基準日とし変動金利の基準金利を見直します。 三菱UFJ銀行「【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて」
同じ告知の中で、借入時期によって基準日の決まり方が違います。 表だけを読むと取り違えます。
改定日と、返済に届く日は別です。 この4段階が何日かかるかは「日銀の利上げは住宅ローンにいつ効くか」で実績を数えています。
なお、届いたあとも毎月の返済額がすぐに変わるとは限りません。同じ告知にこうあります。
変動金利かつ元利均等返済で借入中の場合、10月1日を基準とした5年間は返済額に変更はありません(返済額の元金分と利息分の割合は変わります)。 三菱UFJ銀行「【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて」
いわゆる5年ルールです。ただし、この一文には条件が2つ付いています。「変動金利」で、かつ「元利均等返済」であることです。 同行は金利タイプの説明ページで、当てはまらない場合をはっきり除いています。
元金均等返済で借入の場合は、5年ルール・125%ルールはありません。 三菱UFJ銀行「住宅ローンの金利タイプ」
元金均等返済で借りているなら、据え置きはありません。 新しい利率が適用された時点から、返済額そのものが増えます。
引用にある「10月1日」は、5年を数える起点です。同じページにこう書かれています。
10月1日を1回経過する毎に1年経過したものとみなします。 三菱UFJ銀行「住宅ローンの金利タイプ」
以下は、5年ルールが効く場合(変動金利かつ元利均等返済)の話です。この場合に増えるのは返済額ではなく、返済額のうち利息に回る分になります。残高別に見るとこうです。
| 残高 | ひと月の利息の増加 | 1年あたり |
|---|---|---|
| 2,000万円 | 4,167円 | 50,000円 |
| 2,500万円 | 5,208円 | 62,500円 |
| 3,000万円 | 6,250円 | 75,000円 |
| 3,500万円 | 7,292円 | 87,500円 |
| 4,000万円 | 8,333円 | 100,000円 |
0.25ポイントの差は、35年でいくらか
短期プライムレートが銀行によって0.25ポイント違う、という話に戻ります。引下げ幅が同じなら、その差はそのまま適用金利の差になります。
残高3,000万円・残り35年・元利均等返済・金利は全期間一定(すべて架空の設例)で計算すると、こうなります。
| 適用金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 | うち利息 |
|---|---|---|---|
| 年1.00% | 84,686円 | 35,568,120円 | 5,568,120円 |
| 年1.25% | 88,226円 | 37,054,920円 | 7,054,920円 |
| 差 | 3,540円 | 1,486,800円 | 1,486,800円 |
scripts/calc-tanpura-kaitei.py の出力。毎月の返済額は元利均等返済の式で求め、円未満を四捨五入しています。総返済額は毎月の返済額 × 420回です。実際の契約では最終回で端数を調整するため、この計算とはわずかにずれます(この設例では、四捨五入した返済額で420回払うと年1.00%で146円、年1.25%で61円だけ払い過ぎになります)。
毎月では3,540円ですが、35年では約149万円になります。ただしこれは「引下げ幅が同じなら」という置き方の数字です。
実際には、短期プライムレートが高い銀行が引下げ幅を大きく取っていれば、適用金利は同じになります。したがって、短期プライムレートの水準だけを銀行間で比べても、借入条件の比較にはなりません。 比べるべきは適用金利であり、自分の引下げ幅は契約書に書かれています。
この記事で押さえるべきは、水準の高低ではなく、**「短期プライムレートは銀行ごとの金利であって、共通の基準ではない」**という一点です。
あなたの数字で確かめる手順
① 自分の借入先の短期プライムレートを見る
日銀の統計ではなく、その銀行が出しているページを見てください。三菱UFJ銀行の場合は「短期プライムレート」という専用ページがあり、「年2.375%(2026年8月3日より適用)」のように、水準と適用開始日が1行で書かれています。
ニュースや他行の発表を自分の銀行の話として読まないこと。最高値と最低値が0.25ポイント離れている以上、代表値は自分の銀行の値ではありません。
② 改定日と、基準金利の見直し日を分けて読む
告知には複数の日付が出てきます。混ぜないでください。
- 短期プライムレートの改定日(三菱UFJ銀行の今回の告知では2026年11月2日)
- 住宅ローンの基準金利の見直し日(同2026年12月1日)
- 自分の契約の金利見直しの基準日(同、2026年11月30日以前に借りた人は、毎月型が2026年12月1日、年2回型が2027年4月1日。2026年12月1日以降に借りる人は毎月1日)
- 新利率の適用開始日(同、毎月型は2027年1月の返済日の翌日、年2回型は2027年6月の返済日の翌日)
- 返済に反映される月(同、毎月型は2027年2月、年2回型は2027年7月の約定返済分)
金利の種類は告知の表の行が違うだけで、見落としやすいところです。 自分がどちらなのかは「ご返済のお知らせ」で確認できると同行は書いています。
③ 自分の引下げ幅を契約書で確認する
適用金利は「基準金利 − 引下げ幅」です。引下げ幅が変わらなければ、基準金利の上昇はそのまま適用金利に乗ります。引下げ幅は契約ごとの条件で、銀行の告知には書かれていません。 契約書で確かめてください。
④ 残高に上げ幅を掛けて、12で割る
ひと月の利息の増加は「残高 × 上げ幅 ÷ 12」です。残高3,000万円で0.25ポイントなら、30,000,000 × 0.0025 ÷ 12 = 6,250円。変動金利かつ元利均等返済なら、この分だけ元金の減りが遅くなります。返済額そのものは5年ルールで据え置かれます。
まとめ
- 短期プライムレートは日銀が決める金利ではない。日銀が公表しているのは、主要5行(みずほ・三菱UFJ・三井住友・りそな・埼玉りそな)の最頻値・最高値・最低値という統計
- 銀行によって水準が違う。 最高値と最低値の差は、2009年1月13日から2026年9月11日現在まで0.25ポイントあり、利上げの途中では0.50ポイントまで開いた時期が2回ある(2025年3月12日〜16日、2026年2月3日〜8日)
- どの銀行が高いかは日銀の統計からは分からない。 自分の借入先が出しているページで確認する
- 最頻値は2009年1月13日から2024年9月1日まで年1.475%で動かなかった。15年7か月。同じ期間に長期プライムレートは71回変わっている
- 動き始めたのは2024年9月2日。2026年8月3日に最頻値は年2.375%、最高値は年2.625%
- 同じ利上げでも実施日はそろわない。 2025年の局面は14日、2026年2月の局面は7日かかった。その間、最頻値は「不定」と記録されている
- 三菱UFJ銀行は2026年9月18日付で、短期プライムレートを年2.375%→年2.625%(改定日2026年11月2日)、住宅ローンの基準金利の見直しを2026年12月1日からと発表した
- 返済に届くのは、同行の告知では毎月型が2027年2月、年2回型が2027年7月の約定返済分。金利見直しの基準日も別で、毎月型が2026年12月1日、年2回型は2027年4月1日
- 返済に届く日は借入時期でも違う。上の日付は2026年11月30日以前に借りた人の話で、2026年12月1日以降に借りる人は毎月1日が基準日(2026年12月分の基準金利は2026年11月30日に発表)
- 届いても、変動金利かつ元利均等返済なら返済額は5年ルールで据え置かれる。増えるのは利息に回る分で、残高3,000万円・0.25ポイントならひと月6,250円
- 5年ルールが付くのは「変動金利」かつ「元利均等返済」のときだけ。 同行は「元金均等返済で借入の場合は、5年ルール・125%ルールはありません。」と明記している。元金均等返済なら据え置きは無く、返済額そのものが増える
- 適用金利が0.25ポイント違うと、残高3,000万円・35年・元利均等の設例では毎月3,540円、総額1,486,800円の差(架空の設例)
- ただし短期プライムレートの差がそのまま適用金利の差になるのは、引下げ幅が同じ場合に限る。比べるべきは適用金利で、引下げ幅は契約書に書かれている