住宅ローン・金利

未払利息とは何か ― 発生する金利水準を自分で計算する

短期プライムレートは、2024年9月から4回上がりました。**累計で0.90%**です。

適用日短期プライムレート変動
2009年〜2024年8月1.475%据え置き
2024年9月2日1.625%+0.15%
2025年3月3日1.875%+0.25%
2026年2月2.125%+0.25%
2026年8月3日2.375%+0.25%

こうなると、「未払利息」という言葉を目にする機会が増えます。返済額を全部利息に充てても足りず、元金が1円も減らない状態のことです。

ただし、これがいくらの金利で起きるのかは、あまり書かれていません。

結論

未払利息が発生する金利は、計算できます。 毎月の返済額と、その時点のローン残高が分かれば出ます。返済予定表を見れば、どちらも書いてあります。

そして計算してみると、この水準を決めているのは借入額ではないことが分かります。借入額が増えれば返済額も残高も同じ倍率で増えるため、比が変わらないからです。決めているのは、残っている返済期間です。

さらにこの水準は、返済が進むほど上がっていきます。 残高が減る一方で、返済額は据え置かれるためです。つまり未払利息は、借りて間もない時期に集中する問題です。

そして金利が上がること自体が、この水準をわずかに引き下げます。 元金の減りが遅くなり、残高が本来より多く残るためです。

本記事は、今後の金利の見通しを示すものではありません。自分のローンがどの位置にいるかを計算するところまでを扱います。

計算の前提

項目条件
借入額3,500万円
借入時期2024年1月
借入条件35年・元利均等・変動金利
当初の適用金利年0.475%(優遇後)
金利の反映短期プライムレートの改定を、次の見直し時期(4月・10月)に反映
返済額5年ルールにより据え置き
計算する時点2026年10月(下記のとおり将来の時点)

★2026年8月3日の引上げ(+0.25%)が、2026年10月の見直しでそのまま反映されたとした場合を計算します。 本記事の公開時点ではまだ反映されていないため、**以下の1.375%は「2026年10月の想定適用金利」**です。

住宅ローンの5年ルール」では2021年10月に借りたケースを計算しました。本記事は、金利が上がる直前に借りた人を想定しています。

未払利息が発生する金利の出し方

その月の利息が、毎月の返済額を上回ったときに発生します。

その月の利息 = 残高 × 適用金利 ÷ 12

利息 > 毎月返済額 になるのは
  残高 × 適用金利 ÷ 12 > 毎月返済額
  ⟺ 適用金利 > 毎月返済額 × 12 ÷ 残高

したがって、こうなります。

未払利息が発生する金利 = 毎月返済額 ÷ 残高 × 12 × 100(%)

必要なのは2つの数字だけです。 どちらも返済予定表に載っています。

前提の条件で計算する

毎月返済額は90,469円です。この金額は5年ルールで据え置かれています。

時期適用金利返済前の残高その月の利息元金に充てる分発生する金利
2024年1月(借入)0.475%35,000,000円13,854円76,615円3.102%
2024年10月0.625%34,309,376円17,869円72,599円3.164%
2025年4月0.875%33,873,213円24,699円65,770円3.205%
2026年4月1.125%33,080,806円31,013円59,455円3.282%
2026年10月(想定)1.375%32,723,236円37,495円52,973円3.318%

返済額90,469円は一度も変わりません。 変わるのは内訳です。利息が13,854円から37,495円へ増え、元金に充てられる金額が76,615円から52,973円まで減ります。

90,4692024年1月90,4682024年10月90,4692025年4月90,4682026年4月90,4682026年10月(想定)
2024年1月2024年10月2025年4月2026年4月2026年10月(想定)
元金に充てる分76,61572,59965,77059,45552,973
利息13,85417,86924,69931,01337,495
合計90,46990,46890,46990,46890,468

5本とも高さが同じ=返済額は変わっていません。上に乗っている利息が増えた分だけ、下の元金が削られています。未払利息は、この利息の部分が棒の高さ全体を超えてしまった状態です。

借入3,500万円・35年・当初の適用金利0.475%で2024年1月に借りた場合の、毎月返済額90,469円の内訳(短期プライムレートの実績を各見直し時期に反映。2026年10月は想定)。

34回返済した時点(2026年10月の返済後)の残高は32,670,263円です。ここから発生する金利を出します。

90,469 ÷ 32,670,263 × 12 × 100 = 年3.323%
数値
2026年10月の想定適用金利1.375%
未払利息が発生する金利3.323%
1.948%

これまでに実際に起きた上昇幅は0.90%でした。 その約2.16倍がさらに必要という位置になります。

これは2026年10月を想定した位置関係であって、今後の見通しではありません。

借入額を変えても、発生する金利は変わらない

ここが誤解されやすい点です。

借入額毎月返済額発生する金利
2,500万円64,621円3.102%
3,500万円90,469円3.102%
5,000万円129,241円3.102%
8,000万円206,786円3.102%

すべて同じです。 借入額が2倍になれば毎月返済額も残高も2倍になり、割り算の結果が変わらないためです。

「借入額が大きいから未払利息が心配」という心配の仕方は、この点では的を外しています。 借入額が大きいことのリスクは別にありますが、未払利息の発生水準はそこでは決まりません。

決めているのは「残りの期間」

期間が長いほど毎月の返済額が小さくなるので、発生する金利も低くなります。

借入期間毎月返済額発生する金利
35年90,469円3.102%
30年104,333円3.577%
25年123,754円4.243%

そして同じローンでも、返済が進むほど上がっていきます。

051015(%)5710051015(年)
35年で借りた場合30年で借りた場合25年で借りた場合

3本の線は、右に5年ずらすと重なります。残っている返済期間が同じなら、発生する金利も同じになるためです。どの線も右に行くほど急に上がる=返済が進むほど未払利息は起きにくくなります。

借入3,500万円・当初の適用金利0.475%で借りた場合に、未払利息が発生する金利がどう動くか(借入期間別・当初金利のまま推移した場合)。

3本の線は、5年ずらすと重なります。 35年ローンの5年後(残り30年)と、30年ローンの借入直後(残り30年)は、どちらも3.577%です。

残っている期間が同じなら、発生する金利も同じということです。

金利が上がること自体が、水準をわずかに下げる

金利が上がると元金の減りが遅くなり、残高が本来より多く残ります。 割り算の分母が大きくなるので、発生する金利は下がります。

34回返済後残高発生する金利
金利が上がらなかった場合32,378,020円3.353%
上の表のとおり上がった場合32,670,263円3.323%

減らなかった元金は292,243円、発生する金利は0.030ポイント下がります。

金額としては小さいものです。 ただし、金利上昇が「利息を増やす」だけでなく「未払利息のラインを引き寄せる」方向にも効いていることは、構造として知っておく価値があります。

あなたの数字で確かめる手順

① 返済予定表から2つの数字を取る

必要なのは「毎月の返済額」と「現在の残高」だけです。 返済予定表(償還予定表)か、金融機関のアプリ・インターネットバンキングで確認できます。

② 割り算する

未払利息が発生する金利(%)= 毎月返済額 ÷ 現在の残高 × 12 × 100

③ 適用金利との差を見る

差がそのまま「あと何%上がったら」の答えです。 短期プライムレートは2024年9月からの累計で0.90%上がっているので、その何回分にあたるかを見ると、距離の感覚がつかめます。

④ 5年ルールがあるかを確認する

5年ルールがなく、金利の変更のたびに残りの期間に応じて毎月返済額を計算し直すタイプのローンでは、通常、この仕組みによる未払利息は発生しません。 利息が返済額を上回るという状態にならないためです。

ただし「5年ルールがない」というだけで、必ず返済額が計算し直されるとは限りません。 実際の取扱いは、契約時の金銭消費貸借契約書か、借入先の商品説明書で確認してください。

⑤ 返済額の見直しが来たら、もう一度計算する

見直しで返済額が上がれば、発生する金利も上がります。 分子が大きくなるためです。5年ごとの見直しのたびに、①〜③をやり直してください。

まとめ

  • 未払利息は「その月の利息が毎月の返済額を上回った状態」。元金が1円も減らない
  • 発生する金利は「毎月返済額 ÷ 残高 × 12 × 100」で出る。返済予定表の2つの数字だけで計算できる
  • 借入額では変わらない。 2,500万円でも8,000万円でも、35年・当初0.475%なら年3.102%
  • 決めているのは残っている返済期間。残り35年で3.102%、残り30年で3.577%、残り25年で4.243%
  • 返済が進むほど上がる。 借入から20年たてば年6.9%まで上がっても発生しない。借りて間もない時期に集中する問題
  • 前提の条件では、2026年10月の想定適用金利1.375%に対して発生する金利は年3.323%。差は**1.948%**で、これまでの上昇幅0.90%の約2.16倍がさらに必要
  • 金利上昇は元金の減りを遅らせるので、発生する金利をわずかに下げる(前提の条件では0.030ポイント)
  • 5年ルールがなく、金利変更のたびに返済額を計算し直すタイプのローンでは、通常この仕組みによる未払利息は発生しない。 そのかわり返済額がすぐに増える。取扱いは契約書・商品説明書で確認する

未払利息は、発生するかどうかを心配する前に、いまどれだけ離れているかを測れます。 返済予定表さえあれば、割り算ひとつで出ます。

よくある質問

未払利息とは何ですか?

その月の利息が毎月の返済額を上回り、返済額を全部利息に充てても足りない状態です。元金が1円も減らないどころか、払いきれなかった利息が未払いのまま残ります。変動金利型で5年ルール(金利が上がっても5年間は毎月の返済額を据え置く取扱い)を採用しているローンで起こり得ます。5年ルールがなく、金利の変更のたびに残りの期間に応じて毎月返済額を計算し直すタイプのローンでは、通常この仕組みによる未払利息は発生しません。返済額そのものがその時点で増えるためです。ただし取扱いは契約条件によるので、金銭消費貸借契約書か商品説明書で確認してください。

未払利息が発生する金利は、どう計算しますか?

「毎月の返済額 ÷ 現在のローン残高 × 12 × 100」で概算できます。返済予定表に載っている今の残高と、実際に引き落とされている金額を入れるだけです。たとえば残高3,267万円・毎月90,469円なら、90,469 ÷ 32,670,263 × 12 × 100 で年3.323%となります。適用金利がこの水準を超えると、その月の利息が返済額を上回ります。

借入額が大きいほど、未払利息は発生しやすいのですか?

いいえ。借入額は関係ありません。借入額が2倍になれば毎月の返済額も残高も2倍になるので、「返済額 ÷ 残高」は変わらないためです。実際に借入2,500万円・3,500万円・5,000万円・8,000万円のいずれも、35年・当初金利0.475%なら発生する金利は同じ年3.102%になります。発生する金利を決めているのは、借入額ではなく「残っている返済期間」と「当初の金利」です。

どういう人が発生しやすいのですか?

残りの返済期間が長い人です。期間が長いほど毎月の返済額が小さくなり、「返済額 ÷ 残高」が小さくなるためです。当初金利0.475%で計算すると、残り35年なら年3.102%、残り30年なら年3.577%、残り25年なら年4.243%で発生します。同じローンでも返済が進むほど発生しにくくなり、借入から20年たてば年6.9%まで上がっても発生しません。つまり未払利息は、借りて間もない時期に集中する問題です。

実際に発生する可能性はどのくらいありますか?

本記事は見通しを示しませんが、位置関係は計算できます。短期プライムレートは2024年9月から4回上がって累計0.90%上昇しました。2024年1月に3,500万円・35年・当初0.475%で借りたケースで、2026年8月3日の引上げが同年10月の見直しでそのまま反映されたとすると、適用金利は1.375%、未払利息が発生する金利は年3.323%になります。差は1.948%で、これまでに実際に起きた上昇幅0.90%の約2.16倍がさらに必要という位置です。これは2026年10月を想定した計算であって、今後どうなるかを示すものではありません。

未払利息が発生したら、その分は免除されるのですか?

免除されません。未払いのまま残り、多くの契約では返済期間の最後にまとめて精算することになります。取扱いは金融機関によって異なるため、金銭消費貸借契約書か商品説明書で確認してください。なお未払利息が発生する前の段階でも、金利上昇の影響はすでに出ています。返済額が据え置かれている間は、元金に充てられる金額が減っているだけだからです。

金利が上がると、未払利息が発生する金利も動きますか?

動きます。しかも下がる方向に動きます。金利が上がると元金の減りが遅くなり、残高が本来より多く残るためです。「返済額 ÷ 残高」の分母が大きくなるので、発生する金利の水準は下がります。上の例で34回返済した時点を比べると、金利が上がらなかった場合の残高が3,237万円で発生する金利は年3.353%、上がった場合の残高は3,267万円で年3.323%と、0.030ポイント下がります。金額としては小さいですが、金利上昇が二重に効いていることの表れです。

5年ルールがないローンなら、未払利息は起きないのですか?

5年ルールがなく、金利の変更のたびに残りの期間に応じて毎月返済額を計算し直すタイプのローンであれば、通常この仕組みによる未払利息は起きません。利息が返済額を上回るという状態にならないからです。そのかわり返済額そのものがその時点で増えます。負担が後ろに繰り延べられない分、家計への影響はその月から出ますが、状況は把握しやすくなります。ただし「5年ルールがない」というだけで、必ず返済額が計算し直されるとは限りません。ご自身のローンの取扱いは、契約時の金銭消費貸借契約書か借入先の商品説明書で確認してください。

出典

制度の内容は改正されることがあります。判断の際は必ず出典元の最新情報をご確認ください。