国税庁は、ほぼ同じ表を2年続けて出しています。令和7年4月のパンフレットと、令和8年4月の「源泉所得税の改正のあらまし」です。どちらにも、19歳以上23歳未満の子を持つ親が差し引ける控除の表が載っています。
控除額の並びは、どちらも同じです。63万円、61万円、51万円、41万円、31万円、21万円、11万円、6万円、3万円。ところが、その控除額に対応する子の給与収入が違います。
58 万円超 85 万円以下 (123 万円超 150 万円以下) 63 万円 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」3ページ
62 万円超 85 万円以下 (136 万円超 159 万円以下) 63 万円 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」2ページ
150万円が159万円になっています。 控除額の表そのものは1円も動いていないのに、給与収入に直したときの線だけが動きました。
そして、動かなかったものがあります。社会保険です。
結論
この控除の表は、子の「合計所得金額」で区切られています。給与収入ではありません。合計所得金額は、給与収入から給与所得控除を引いた額です。だから給与所得控除が増えれば、同じ合計所得金額に対応する給与収入は、そのぶん後ろにずれます。表の数字を一行も変えなくても、親が見るべき線は動きます。
いっぽう、健康保険の被扶養者でいられるかどうかは、合計所得金額ではなく収入そのもので判定されます。給与所得控除は関係しません。だから税の線が動いても、こちらは動きません。
去年までは、この2本の線が同じ場所にありました。そろえて作られたからです。今年は、税の線だけが先に動きました。 2本の線のあいだには、親の控除は減らないのに子が被扶養者ではいられなくなる区間が生まれています。
もうひとつ、この控除の落ち方には注意が要ります。「所得が増えるにつれて少しずつ減る」と説明されますが、実際には階段状に落ちます。 区切りをまたいだ瞬間に、親の税額がまとまって増えます。働く時間を調整するなら、見るべきなのは線の位置そのものではなく、段差のある場所です。
計算の前提
| 項目 | 置いた条件 |
|---|---|
| 年分 | 令和8年分の所得税(令和8年12月に行う年末調整で精算される分) |
| 子 | 年齢19歳以上23歳未満、親と生計を一にする親族。配偶者・青色事業専従者・白色事業専従者ではない |
| 子の所得 | 給与所得だけ。他の所得は無いものとする |
| 給与所得控除 | 最低保障額74万円(令和8年分・令和9年分)。給与収入74万1,000円以上219万1,000円未満は「収入金額−74万円」 |
| 親の税率 | 課税総所得金額で判定した所得税の税率。復興特別所得税(2.1%)を上乗せして計算する |
| 住民税 | 計算に含めない(控除額の表が所得税と別。後述) |
| 社会保険 | 協会けんぽ(日本年金機構が認定するもの)を前提とする。健康保険組合は独自の基準を持つことがある |
数字はすべてスクリプトで計算しました(scripts/calc-daigakusei-baito-kabe.py)。和暦と西暦の対応は、令和7年=2025年、令和8年=2026年、令和9年=2027年です。
令和8年分の表 ― 控除が満額のままなのは159万円まで
国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」2ページの表から、子の給与収入に直して並べます。
| 子の給与収入 | 子の合計所得金額 | 親が差し引ける額 | 控除の名前 |
|---|---|---|---|
| 136万円以下 | 62万円以下 | 63万円 | 扶養控除(特定扶養親族) |
| 136万円超159万円以下 | 62万円超85万円以下 | 63万円 | 特定親族特別控除 |
| 159万円超164万円以下 | 85万円超90万円以下 | 61万円 | 特定親族特別控除 |
| 164万円超169万円以下 | 90万円超95万円以下 | 51万円 | 特定親族特別控除 |
| 169万円超174万円以下 | 95万円超100万円以下 | 41万円 | 特定親族特別控除 |
| 174万円超179万円以下 | 100万円超105万円以下 | 31万円 | 特定親族特別控除 |
| 179万円超184万円以下 | 105万円超110万円以下 | 21万円 | 特定親族特別控除 |
| 184万円超189万円以下 | 110万円超115万円以下 | 11万円 | 特定親族特別控除 |
| 189万円超194万円以下 | 115万円超120万円以下 | 6万円 | 特定親族特別控除 |
| 194万円超197万円以下 | 120万円超123万円以下 | 3万円 | 特定親族特別控除 |
| 197万円超 | 123万円超 | 0円 | なし |
上の2行は、額が同じで名前が違います。 子の合計所得金額が62万円以下なら特定親族特別控除ではなく扶養控除で、19歳以上23歳未満は特定扶養親族にあたるので扶養控除額は63万円です。国税庁は年末調整の手引きでも、そのことをわざわざ注記しています。
※ 親族の合計所得金額が62 万円以下の場合は、特定親族には該当せず特定親族特別控除の対象とはなりませんが、特定扶養親族(11 ページ参照)として扶養控除の対象となります。 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」19ページ
ただし、同じ子で父と母の両方が63万円を取ることはできません。 年末調整の手引きが、そのことを注意事項として挙げています。
2人以上の所得者の特定親族に該当する親族がいる場合、その親族は、これらの所得者のうちいずれか1人の特定親族にのみ該当するものとみなされます。 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」19ページ
共働きで両方が給与所得者の場合、どちらが申告するかを決めて、片方だけが出します。 同じ注意事項は、親族の双方がお互いに適用を受けることもできないとしています。
この控除には、親の側の所得制限がありません。 配偶者特別控除は所得者の合計所得金額が1,000万円を超えると受けられませんが、特定親族特別控除の表には、その区分そのものがありません。あらまし2ページの表は配偶者特別控除額と特定親族特別控除額を1つの表に並べていて、配偶者特別控除額のほうは所得者の合計所得金額で3列に分かれているのに対し、特定親族特別控除額は1列しかありません。令和7年度税制改正の大綱も「居住者が…を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額等から次のとおりの控除額を控除する」と書くだけで、居住者の所得に条件を付けていません。
去年と今年で、線は9万円ずつ後ろにずれた
令和7年分の表と並べます。控除額はまったく同じで、給与収入の欄だけが違います。
| 控除額 | 令和7年分の給与収入 | 令和8年分の給与収入 | 差 |
|---|---|---|---|
| 63万円 | 123万円超150万円以下 | 136万円超159万円以下 | 下限+13万円/上限+9万円 |
| 61万円 | 150万円超155万円以下 | 159万円超164万円以下 | +9万円 |
| 51万円 | 155万円超160万円以下 | 164万円超169万円以下 | +9万円 |
| 41万円 | 160万円超165万円以下 | 169万円超174万円以下 | +9万円 |
| 31万円 | 165万円超170万円以下 | 174万円超179万円以下 | +9万円 |
| 21万円 | 170万円超175万円以下 | 179万円超184万円以下 | +9万円 |
| 11万円 | 175万円超180万円以下 | 184万円超189万円以下 | +9万円 |
| 6万円 | 180万円超185万円以下 | 189万円超194万円以下 | +9万円 |
| 3万円 | 185万円超188万円以下 | 194万円超197万円以下 | +9万円 |
ずれ幅の9万円は、給与所得控除の最低保障額の差です。令和8年度税制改正の大綱は、最低保障額を65万円から69万円に引き上げたうえで、さらに特例を置きました。
(5)給与所得控除の最低保障額の特例の創設 ① 令和8年及び令和9年における給与所得控除の最低保障額を5万円引き上げる特例を創設する。 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日 閣議決定)4ページ
69万円に5万円を足して74万円。65万円との差が9万円です。
いちばん上の行だけ、下限の動きが13万円と大きくなっています。 扶養控除に戻る境目(合計所得金額の要件)が58万円以下から62万円以下へ4万円上がったためで、9万円と4万円の合計が13万円です。あらまし2ページの所得要件の表が、この4万円を示しています。
扶養親族/同一生計配偶者/ひとり親の生計を一にする子 62 万円以下(136 万円以下) [改正前]58 万円以下(123 万円以下) 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」2ページ
控除がゼロになる線も、188万円超から197万円超へ動きました。
落ち方は「なだらか」ではない
この控除は「所得に応じて段階的に減る」と説明されます。たしかに、配偶者特別控除と同じく一気にゼロにはなりません。ただし、減り方は一定ではありません。
| 150万円 | 160万円 | 170万円 | 180万円 | 190万円 | 200万円 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 親が差し引ける控除額 | 630,000 | 610,000 | 410,000 | 210,000 | 60,000 | 0 |
| 合計 | 630,000 | 610,000 | 410,000 | 210,000 | 60,000 | 0 |
左の2本はほとんど同じ高さですが、そこから先は10万円きざみで急に落ちます。坂ではなく階段です。段と段のあいだ(たとえば164万円と169万円のあいだ)では、いくら働いても控除は変わりません。
合計所得金額の区切りは5万円ごとなのに、控除額は多くの区間で10万円ずつ落ちます。つまり、区切りを1円でも超えると、親の控除が10万円減ります。
境目ごとに、親の所得税がいくら増えるかを計算しました。復興特別所得税(2.1%)を含んでいます。
| 子の給与収入の境目 | 控除額の落差 | 税率5% | 税率10% | 税率20% | 税率23% | 税率33% |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 159万円 | 63万円→61万円 | 1,021円 | 2,042円 | 4,084円 | 4,696円 | 6,738円 |
| 164万円 | 61万円→51万円 | 5,105円 | 10,210円 | 20,420円 | 23,483円 | 33,693円 |
| 169万円 | 51万円→41万円 | 5,105円 | 10,210円 | 20,420円 | 23,483円 | 33,693円 |
| 174万円 | 41万円→31万円 | 5,105円 | 10,210円 | 20,420円 | 23,483円 | 33,693円 |
| 179万円 | 31万円→21万円 | 5,105円 | 10,210円 | 20,420円 | 23,483円 | 33,693円 |
| 184万円 | 21万円→11万円 | 5,105円 | 10,210円 | 20,420円 | 23,483円 | 33,693円 |
| 189万円 | 11万円→6万円 | 2,552円 | 5,105円 | 10,210円 | 11,741円 | 16,846円 |
| 194万円 | 6万円→3万円 | 1,531円 | 3,063円 | 6,126円 | 7,044円 | 10,107円 |
| 197万円 | 3万円→0円 | 1,531円 | 3,063円 | 6,126円 | 7,044円 | 10,107円 |
子の給与収入が164万円ちょうどなら控除は61万円、164万1円なら51万円です。この1円のために、税率20%の親なら所得税が20,420円増えます。 子の手取りは1円しか増えていません。
段差を1円だけ超えるのではなく、次の段まできっちり増やすなら、損にはなりません。 子の給与収入を164万円から169万円へ5万円増やすと、164万円の段差を越えるので控除は61万円から51万円に減りますが、増える税額は上の表と同じ額のままで、収入の増え方のほうが大きいからです。世帯では次の額が残ります。
| 親の課税総所得金額 | 税率 | 親の所得税の増加 | 世帯に残る額 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 5,105円 | 44,895円 |
| 195万円超330万円以下 | 10% | 10,210円 | 39,790円 |
| 330万円超695万円以下 | 20% | 20,420円 | 29,580円 |
| 695万円超900万円以下 | 23% | 23,483円 | 26,517円 |
| 900万円超1,800万円以下 | 33% | 33,693円 | 16,307円 |
増えた5万円のうち、税率33%の世帯では16,307円しか残りません。 働き損にはなりませんが、手取りがそのまま増えるわけでもありません。
社会保険の150万円は、動いていない
税の線が159万円に動いた一方で、健康保険の被扶養者でいられる線は150万円のままです。
扶養認定日が令和7年10月1日以降で、扶養認定を受ける方が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く。)は、現行の「年間収入130万円未満」が「年間収入150万円未満」に変わります。なお、この「年間収入要件」以外の要件に変更はありません。 日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」
この150万円は、令和8年9月30日に更新された同機構の手続きページでも150万円のままです。税の側が9万円動いたのに、こちらは動いていません。
そもそもこの150万円は、税のほうに合わせて作られた数字でした。同じページが、その経緯を書いています。
令和7年度税制改正において、現下の厳しい人手不足の状況における就業調整対策等の観点から、19歳以上23歳未満の親族等を扶養する場合における特定扶養控除の要件の見直し等が行われたところです。これを踏まえ、扶養認定を受ける方(被保険者の配偶者を除く。)が19歳以上23歳未満である場合の年間収入要件の取り扱いが変わります。 日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」
令和7年分は、税で満額の控除を保てる上限が150万円、社会保険の被扶養者でいられる上限が150万円未満でした。ほぼ同じ場所です。 それが令和8年分では、税が159万円、社会保険が150万円未満に分かれました。
| 令和7年分 | 令和8年分 | |
|---|---|---|
| 親の控除が満額63万円でいられる上限(給与収入) | 150万円 | 159万円 |
| 子が健康保険の被扶養者でいられる上限(年間収入) | 150万円未満 | 150万円未満 |
令和7年分で並んでいた2つの150万円も、境目の扱いは同じではありませんでした。税の150万円は「ちょうどなら入る」側(150万円以下)、社会保険の150万円は「ちょうどだと入らない」側(150万円未満)です。「未満」なので、年間収入150万円ちょうどはすでに被扶養者ではいられません。
なお、社会保険でいう年間収入は、過去にいくら稼いだかではありません。
年間収入とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であれば要件を満たします。) 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」(更新日2026年9月30日)
引用にある月額108,333円は、130万円を12で割った額です。150万円の場合を同じように12で割ると125,000円になります(この割り算は当方の計算で、機構はこの金額を示していません)。
令和8年4月1日以降は、労働条件通知書などの労働契約の内容から年間収入を判定する取扱いも始まっています。ただし日本年金機構は、契約期間が1年未満の場合、「シフト制による」といった記載で労働時間が不明確な場合、「通勤手当有」等となっていて手当の金額が不明確な場合には、この取扱いでの認定はできないとしています。150万円未満は、2つある要件のうちの1つにすぎない
ここまでの150万円は、収入要件の前半だけです。 日本年金機構の収入要件は、2つの条件を「かつ」でつないでいます。
年間収入(※1)130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ 同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満(※2) 別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」(更新日2026年9月30日)。19歳以上23歳未満の場合、前半の130万円未満が150万円未満に置き換わる
150万円未満になるのは前半だけです。後半は19歳以上23歳未満でも変わりません。したがって、
- 親と同居している子は、バイト代が親の収入の半分以上になると、150万円未満でも原則として被扶養者から外れます。親の年収が300万円なら、子の150万円は「半分以上」です
- 下宿している子は、親からの仕送り額が実質の上限になります。仕送り月8万円(年96万円)なら、150万円まで働く余地はありません
この要件は、新しく認定を受けるときと、すでに認定されている子を外すときで、境目の書き方が違います。 同じページの「被扶養者の削除(非該当)」の欄を読むと、削除の届出が必要になる事由はこう書かれています。
同居の場合、被扶養者の収入が被保険者の収入の半分以上になったとき、または別居の場合、被扶養者の収入が被保険者の仕送り額を超えたとき 同ページ「被扶養者の削除(非該当)」
同居は認定が「半分未満」、削除が「半分以上になったとき」なので、ちょうど半分はどちらで読んでも外れる側です。いっぽう別居は、認定が「仕送り額未満」、削除が「仕送り額を超えたとき」です。ちょうど同額のときだけ、扱いが分かれます。 新しく認定を受けようとする子は同額では認定されず、すでに認定されている子は同額では削除の事由に当たりません。1円の差で結論が変わるところなので、同額に近づいたら勤め先に確認してください。
同居のほうには例外が書かれています。
※2 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以上の場合であっても、扶養者(被保険者)の年間収入を上回らないときで、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。 同ページ
「半分以上」で自動的に外れるのではなく、総合的に判断される余地があります。 別居のほうには、この例外は書かれていません。
150万円が使えるのは、12月31日時点で19歳から22歳の年だけ
年齢の数え方も、収入の線を決めます。
年齢要件(19歳以上23歳未満)は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。 日本年金機構「年齢要件(19歳以上23歳未満)は、いつの時点で判定するのですか。」(年金Q&A)
N-1年(18歳の誕生日を迎える年)における年間収入要件は130万円未満。/N年~N+3年の間(19歳の誕生日を迎える年から22歳の誕生日を迎える年)における年間収入要件は150万円未満。/N+4年(23歳の誕生日を迎える年)以降、60歳に達するまでの間の年間収入要件は130万円未満。 同ページの(参考)
12月31日現在の年齢が22歳である年(暦年)の翌年については、年間収入130万円未満かどうかにより判定します。 日本年金機構「12月31日現在の年齢が22歳である年(暦年)の翌年について、年間収入の要件はどのように判定するのですか。」(年金Q&A)
23歳の誕生日を迎える年は、130万円未満に戻ります。 大学4年生や大学院生の年に当たることがあります。 同じ年、税の側でも特定親族特別控除・特定扶養親族の年齢要件(19歳以上23歳未満)から外れるので、 親の63万円の控除も無くなります(タックスアンサー No.1180 は特定扶養親族を「その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人」としています)。 税と社会保険の線が同時に落ちる年がある、ということです。
年齢は誕生日の前日に加算されます。日本年金機構は「誕生日が1月1日である方は、12月31日において年齢が加算されます」としています。1月1日生まれの人だけ、1年早く切り替わります。なお、150万円未満になるのは年齢だけで決まり、学生であることは要件ではありません。同機構は「令和7年度税制改正における取り扱いと同様、学生であることの要件は求めません。あくまでも、年齢によって判断します」と答えています。
150万円を超えると、子に何が発生するか
被扶養者でいる間、子の健康保険料は0円です。外れると、子は自分で国民健康保険に入り、20歳以上なら国民年金の第1号被保険者になります。
ここで見落としやすいのが、外れるには届出が要ることです。 線を越えた時点で自動的に切り替わるわけではありません。
被扶養者が、次のいずれかの理由に該当した場合に削除(非該当)の届出を行います。なお、配偶者の扶養を外れた方で、厚生年金保険等に加入しない場合は、国民年金第1号被保険者の加入手続きもお願いします。 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」(更新日2026年9月30日)
届出の提出時期は「その都度」で、紙は「健康保険 被扶養者(異動)届」です。出すのは親の勤め先(事業主)を経由した親のほうで、子ではありません。令和7年9月30日以前に認定されていた19歳以上23歳未満の子については、同機構が次のように書いています。
令和7年9月30日以前に扶養認定済みの19歳以上23歳未満の被扶養者については、令和7年10月1日以降は年間収入が150万円以上見込まれる場合に被扶養者の削除(非該当)の届出が必要です。 日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」
「150万円以上見込まれる場合」です。 実際に受け取り終わってからではなく、見込みの時点で届出が必要になります。年の後半になってから慌てないよう、春のうちに子のシフトの見込みを聞いておくほうが確実です。
国民年金保険料は全国一律です。
国民年金保険料の金額は、1カ月あたり17,920円です(令和8年度)。 日本年金機構「国民年金保険料」(更新日2026年4月1日)
12か月で215,040円です。ただし学生なら、学生納付特例を申請すれば在学中の納付が猶予されます。所得の基準は本人の前年所得だけで見ます。
所得基準(申請者本人のみ) 128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等 日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」(更新日2026年8月3日)
給与収入197万円なら合計所得金額は123万円なので、この記事が扱う範囲では128万円に収まります。つまり国民年金のほうは、学生であれば猶予できます。 ただし猶予された期間は受給資格期間には入るものの、年金額には反映されません。
猶予の仕組みがないのは健康保険です。 国民健康保険の保険料は市区町村ごとに料率が違うため、この記事では金額を示しません。お住まいの市区町村の国民健康保険のページで確認してください。
子自身の所得税は、令和8年分では給与収入178万円までかかりません。給与所得控除の最低保障額74万円と、合計所得金額489万円以下の人の基礎控除104万円の合計です。
| 子の給与収入 | 給与所得 | 基礎控除 | 課税所得 |
|---|---|---|---|
| 150万円 | 76万円 | 104万円 | 0円 |
| 159万円 | 85万円 | 104万円 | 0円 |
| 178万円 | 104万円 | 104万円 | 0円 |
| 179万円 | 105万円 | 104万円 | 1万円 |
勤労学生控除は、令和8年分では合計所得金額89万円以下(給与収入163万円以下)が要件です。ところがその範囲なら、基礎控除104万円だけで課税所得が0円になります。 給与の収入だけで考えるかぎり、所得税ではこの控除の出番がなくなりました。
毎月の給与では、途中までしか反映されない
親の毎月の給与から引かれる源泉徴収税額は、扶養控除等申告書に書いた人数で決まります。令和8年分以後は、そこに書く対象が「源泉控除対象親族」に変わりました。
源泉控除対象親族とは、①控除対象扶養親族及び②所得者と生計を一にする親族(里子を含み、配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます。)のうち年齢19 歳以上23 歳未満で合計所得金額(9ページ参照)が62 万円超100 万円以下の人をいいます。 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」44ページ
上限は合計所得金額100万円です。令和8年分の給与収入に直すと174万円になります。子の給与収入がこれを超えると、特定親族特別控除は毎月の源泉徴収では考慮されず、12月の年末調整で初めて効きます。 年の途中で「控除されていない」ように見えても、それ自体はおかしくありません。
同書46ページの「源泉控除対象親族の範囲」の図も、上限を「100万円(174万円)」、下限を「62万円(136万円)」と書いています。令和7年4月のパンフレットは下限を58万円超としていましたが、扶養親族等の所得要件の引上げに合わせて62万円超になりました。逆に、出すべき申告書を出さなければ、年末調整でも効きません。国税庁は、改正で扱いが変わる子について、申告書の出し直しを求めています。
なお、扶養控除等申告書に源泉控除対象親族として記載していた特定親族が、改正により控除対象扶養親族(特定扶養親族)に該当することとなった場合には、その親族は扶養控除の対象となります(この場合、異動があった旨を記載した扶養控除等申告書を提出する必要があります(Q2-1参照)。)。 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q2-4
子の給与収入が123万円超136万円以下なら、令和7年分は特定親族(特定親族特別控除63万円)でしたが、令和8年分は特定扶養親族(扶養控除63万円)になります。額は同じでも、書く紙が変わります。 国税庁は、記載の方法まで指定しています。
なお、この改正により新たに扶養控除等の対象となる扶養親族等を扶養控除等申告書に記載する際には、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12 月1日 改正」などと記載してください。 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q2-1
逆向きの落とし穴もあります。 扶養控除等申告書の「源泉控除対象親族」欄に子を書いてあっても、それだけでは特定親族特別控除は受けられません。
年末調整において、特定親族特別控除の適用を受けるためには、特定親族特別控除申告書を給与の支払者に提出する必要があります。したがって、扶養控除等申告書の「源泉控除対象親族」欄への記載の有無にかかわらず、特定親族特別控除については、特定親族特別控除申告書の提出を受けてください。 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」9ページ
紙が2種類あって、役割が違います。 扶養控除等申告書は毎月の源泉徴収税額を決めるためのもの、特定親族特別控除申告書は年末調整で63万円を引くためのものです。前者に書いたから後者は要らない、ではありません。
住民税は、別の表で動く
ここまでの計算は所得税だけです。個人住民税にも特定親族特別控除はありますが、控除額の表が所得税と違います。 令和7年度税制改正の大綱は、地方税の控除額を7段階(45万円から3万円まで)としています。所得税の9段階とは刻みが違います。
適用の年度もずれます。
(注)上記の改正は、令和9年度分以後の個人住民税について適用する。 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日 閣議決定)4ページ。扶養親族等の所得要件の引上げについて
所得税は令和8年分から、個人住民税は令和9年度分から。同じ年の所得なのに、税目によって適用される要件の年が違います。
そして、住民税を足しても段差が大きくなるとは限りません。 住民税の表は刻みが粗く、令和7年度税制改正の大綱が示した段では、表の下限から合計所得金額95万円までが1段で、控除額は45万円です。所得税が63万円・61万円・51万円と3段に分けている範囲が、住民税では1段にまとめられています。
| 子の給与収入の境目 | 所得税の控除の落差 | 住民税の控除の落差 | 住民税(10%)で増える税額 |
|---|---|---|---|
| 159万円 | 63万円→61万円 | 45万円→45万円 | 0円 |
| 164万円 | 61万円→51万円 | 45万円→45万円 | 0円 |
| 169万円 | 51万円→41万円 | 45万円→41万円 | 4,000円 |
| 174万円 | 41万円→31万円 | 41万円→31万円 | 10,000円 |
| 179万円 | 31万円→21万円 | 31万円→21万円 | 10,000円 |
| 184万円 | 21万円→11万円 | 21万円→11万円 | 10,000円 |
| 189万円 | 11万円→6万円 | 11万円→6万円 | 5,000円 |
| 194万円 | 6万円→3万円 | 6万円→3万円 | 3,000円 |
| 197万円 | 3万円→0円 | 3万円→0円 | 3,000円 |
つまり、この記事がいちばん強調している159万円と164万円の段差には、住民税は乗りません。 住民税が段差に加わるのは、給与収入169万円(合計所得金額95万円)からです。
あなたの数字で確かめる手順
① 子の年齢を確かめる
19歳以上23歳未満かどうかは、その年の12月31日時点で判定します。社会保険の年齢要件も、扶養認定日が属する年の12月31日時点です。23歳の誕生日を迎える年は、12月31日時点で23歳なので、税の控除も社会保険の150万円も使えません。 社会保険の線は130万円未満に戻ります。誕生日が1月1日の人は、12月31日に年齢が加算される点にも注意してください。
② 子の給与収入の見込みを出す
1月から12月までに支払われる給与の合計です。支払日ベースで数えます。交通費などの非課税の通勤手当は、所得税では収入に入りませんが、社会保険の年間収入には入ります(日本年金機構は、労働契約の内容で年間収入を判定する取扱いについて、「通勤手当有」等となっていて手当の金額が不明確な場合は認定できないとしています。通勤手当の額も年間収入に算入して見るためです)。ここで税と社会保険の数え方が違うことに注意してください。
③ 税の側は、74万円を引いて表に当てる
給与収入が74万1,000円以上219万1,000円未満なら、合計所得金額は「給与収入−74万円」です。その額を、この記事の表の「子の合計所得金額」の欄に当てはめます。給与収入のほうの欄で判断してもかまいませんが、アルバイト以外の収入がある場合は使えません。
④ 親の税率を源泉徴収票から読む
去年の源泉徴収票で、「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引くと、課税総所得金額のおよその額になります。その額を国税庁 No.2260 の速算表に当てて税率を読みます。境目の表の金額が、自分の場合いくらになるかが分かります。
⑤ 社会保険は、勤め先に確認する
子が親の健康保険の被扶養者であり続けられるかどうかは、親の勤め先が加入している保険者が判断します。協会けんぽなら日本年金機構の基準ですが、健康保険組合は独自の基準を持つことがあります。150万円という数字をそのまま当てはめる前に、親の勤め先の担当部署に確認してください。 確認するときは、子の収入が親の収入の半分未満か(同居)、親からの仕送り額未満か(別居)も一緒に伝えてください。この2本目の要件で落ちることがあります。越えそうだと分かった時点で伝えるのも大事です。 外れるには「健康保険 被扶養者(異動)届」の提出が必要で、年間収入が150万円以上見込まれる時点で届出が要ります。
⑥ 12月の年末調整に間に合わせる
子の合計所得金額が62万円超123万円以下なら「給与所得者の特定親族特別控除申告書」、62万円以下なら「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。去年と違う紙になることがあります。扶養控除等申告書の「源泉控除対象親族」欄に子を書いてあっても、特定親族特別控除申告書は別に出してください。 共働きの場合は、同じ子について父と母の両方が特定親族特別控除を取ることはできないので、どちらが申告するかを先に決めておきます。
まとめ
- 令和8年分では、親の控除が満額63万円のままでいられる子の給与収入の上限は159万円。令和7年分の150万円から9万円動いた
- 動いた理由は給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に上がったこと。控除額の表(63万円・61万円・51万円…)そのものは1円も変わっていない
- 子の給与収入136万円以下なら特定親族特別控除ではなく扶養控除で、19歳以上23歳未満は特定扶養親族なので控除額は同じ63万円。ただし出す申告書が違う
- 控除は坂ではなく階段。合計所得金額5万円の区切りで控除が10万円落ちる区間があり、境目を1円超えると税率20%の親で所得税が20,420円増える
- 段差を1円だけ超えるのではなく次の段まで5万円増やした場合(164万円→169万円)、世帯に残るのは税率20%で29,580円、税率33%で16,307円
- 健康保険の被扶養者でいられる線は150万円未満のまま。令和7年分はここが税の線とそろっていたが、令和8年分では150万円から159万円までの9万円が、税は無傷・社会保険は脱落という区間になった
- ただし150万円未満は収入要件の前半だけ。同居なら「親の収入の半分未満」、別居なら「親からの仕送り額未満」も満たす必要がある。下宿している子は仕送り額が実質の上限になる(新規の認定は「未満」なので同額では通らないが、すでに認定されている子の削除は「超えたとき」なので同額では外れない)
- 外れるには届出が要る。 「健康保険 被扶養者(異動)届」を親の勤め先を経由して出す。提出時期は「その都度」で、年間収入が150万円以上見込まれる時点で必要になる
- 150万円が使えるのは12月31日時点で19歳から22歳の年だけ。 23歳の誕生日を迎える年からは社会保険は130万円未満に戻り、税の63万円の控除も無くなる
- 被扶養者から外れると、国民年金保険料は月17,920円・年215,040円(学生納付特例で猶予可能)。国民健康保険料には猶予の仕組みがない
- 子自身の所得税は、令和8年分では給与収入178万円まで0円。勤労学生控除は、給与の収入だけなら所得税では出番がなくなった
- 毎月の源泉徴収に乗るのは合計所得金額100万円(給与収入174万円)までの子。それを超える分は12月の年末調整で初めて反映される
- 同じ子について父と母の両方が特定親族特別控除を取ることはできない。共働きならどちらが申告するかを決める。扶養控除等申告書の「源泉控除対象親族」欄に書いただけでは足りず、特定親族特別控除申告書を別に出す
- この記事の計算は所得税だけ。個人住民税には別の控除額の表があり、適用も令和9年度分から。住民税の表は刻みが粗く合計所得金額95万円までが1段(45万円)なので、159万円と164万円の段差には住民税が乗らない。乗り始めるのは給与収入169万円から