投資・NISA(税金)

特定口座年間取引報告書の読み方 ― 申告するかどうかは、この1枚で決まる

年が明けると、証券会社から「特定口座年間取引報告書」という1枚が届きます。届くのは翌年1月31日までと決まっています(年の途中で特定口座を廃止した場合などは、その事由が生じた月の翌月末日までです)。

受け取る人は年々増えています。東京証券取引所ほか3取引所が2026年7月2日に公表した「2025年度株式分布状況調査」によると、全国4証券取引所の上場会社3,975社の個人株主数は延べ9,198万人で、前年度から839万人増え、2014年度以来12年連続の増加で過去最高でした。

この調査の株主数は「延べ人数」です。調査自身が「上場会社間の名寄せができないため、各上場会社の株主数を単純に合算した『延べ人数』を用いている」「ある個人株主が1人で10銘柄を保有している場合でも……個人株主数10名としてカウントしている」と断っています。実人数ではありません。

そして国税庁は、この報告書の税務署提出用の書面様式を令和8年8月に変えました。F3-5「特定口座年間取引報告書(同合計表)」のページに「令和8年8月に税務署提出用の法定調書の書面様式が変わりました」と告知されています。変わったのは税務署に出す側の様式で、手元に届く1枚の作りが変わったという告知ではありません。 ただし欄の名前と番号は共通なので、以下はこの最新様式に沿って読みます。

多くの人はこの1枚を「もう税金は終わりました」という通知として受け取ります。半分は当たっています。

結論

この1枚は、納税が終わったことの証明書ではありません。口座ごとに、申告するかしないかを選ぶための材料です。

源泉徴収ありの特定口座なら、その口座の中では計算も納税も済んでいます。ですが済んでいるのはその口座の中だけです。別の証券会社の口座で出た損も、前の年から繰り越してきた損も、口座の外にあるものは一切入っていません。外にあるものを使うには、確定申告するしかありません。

そして選択は口座ごとです。1回の売却ごとでも、1回の配当ごとでもありません。さらに、譲渡の損失を申告するときだけ、その口座の配当がセットで付いてきます。損だけを取り出して申告することはできません。

もう一つ、この選択は一方通行です。 申告した後で「やはり申告しないことにする」と戻すことも、申告しなかったものを後から足すこともできません。

だから、申告するかどうかは提出前に決める必要があります。 以下、そのために見る欄と、選んだときに何が変わり、何が増えるのかを順に見ていきます。

計算の前提

項目条件
口座源泉徴収を選択した特定口座(源泉徴収口座)
税率(譲渡・配当とも)所得税及び復興特別所得税 15.315% + 住民税 5%
配当の課税方式申告する場合は申告分離課税を選択したものとする
設例の金額架空の数字。実在の口座ではありません
根拠法令等の時点国税庁のタックスアンサーは令和8年4月1日現在法令等。様式は令和8年8月改正後のもの

中身は、大きく3つのブロックに分かれています

報告書は1枚ですが、読む順番があります。

ブロック欄の名前何が書いてあるか
0特定口座開設者住所・氏名・生年月日・勘定の種類・源泉徴収の選択・口座開設年月日
1(譲渡に係る年間取引損益及び源泉徴収税額等)①②③ と、源泉徴収税額・株式等譲渡所得割額・外国所得税の額
2(配当等の額及び源泉徴収税額等)④から⑲まで
このほかに「(譲渡の対価の支払状況)」と「(配当等の交付状況)」という明細のブロックがあります。こちらは銘柄ごとの内訳で、合計はブロック1と2に出ます。最下部は「金融商品取引業者等」(証券会社の所在地・名称・電話番号・法人番号)です。

すべての出発点は「源泉徴収の選択」欄

いちばん上の「特定口座開設者」のブロックの右側、氏名の行の隣に、小さく「源泉徴収の選択 1 有 2 無」という欄があります。ここが1か2かで、この報告書の意味がまったく変わります。

この欄意味申告しない選択
1(有)源泉徴収口座。売却のつど税が引かれているできる
2(無)簡易申告口座。税は引かれていないできない

国税庁「No.1476 特定口座制度」は、源泉徴収口座について「その特定口座(以下「源泉徴収口座」といいます。)内の上場株式等の譲渡による所得を申告不要とすることができます」とし、さらに「口座ごとに、申告するまたは申告不要とすることの選択をすることができます」としています。2(無)の口座には、この選択がありません。

この欄は年の途中で変えられません。「その選択は、年単位であることから、年の途中で源泉徴収を行わないように変更することはできません」(同)。切り替えるなら、その年の最初の譲渡の時までに「特定口座源泉徴収選択届出書」を出す必要があります。

ブロック1 ― 売った分の①②③

譲渡のブロックは「上場分」「特定信用分」「合計」の3行に分かれ、列が①②③です。

欄名前中身
①譲渡の対価の額(収入金額)売った金額。利益ではありません
②取得費及び譲渡に要した費用の額等買った金額と手数料など
③差引金額(譲渡所得等の金額)(①−②)これが1年の損益。マイナスなら損

その上に、税額が3つ並びます。

欄中身
源泉徴収税額(所得税)③の黒字に対して年内に引かれた所得税及び復興特別所得税
株式等譲渡所得割額(住民税)同じく住民税(5%)
外国所得税の額その年中に課された外国所得税の額の総額

見るのは③です。 ①が大きくても、それは売った総額にすぎません。

②には、投資一任契約に基づく固定報酬・成功報酬が加算されている場合があります。加算されているときは「摘要」欄にその額が書かれます。国税庁の手引きは、このとき運用報告書等の費用を「重複して費用計上しないよう注意してください」としています。

ブロック2 ― 配当等の④から⑲まで

配当のブロックは、まず2階建てになっています。

区分行
特定上場株式等の配当等④株式、出資又は基金/⑤特定株式投資信託/⑥投資信託又は特定受益証券発行信託(⑤、⑦及び⑧以外)/⑦オープン型証券投資信託/⑧国外株式又は国外投資信託等/⑨合計(④+⑤+⑥+⑦+⑧)
上記以外のもの⑩公社債/⑪社債的受益権/⑫投資信託又は特定受益証券発行信託(⑬及び⑭以外)/⑬オープン型証券投資信託/⑭国外公社債等又は国外投資信託等/⑮合計(⑩+⑪+⑫+⑬+⑭)

この2階建てには意味があります。 上段(⑨)は株式の配当で、申告するなら総合課税と申告分離課税のどちらかを選べます。下段(⑮)は公社債の利子などで、総合課税は選べません。国税庁の手引きも「『特定口座年間取引報告書』の『特定上場株式等の配当等』の⑨欄の金額は『総合課税』と『申告分離課税』のいずれかを選」ぶものだとしています。

そして、その下に4行が続きます。ここが口座の中で起きたことの結果です。

欄名前何を意味するか
⑯譲渡損失の金額その年にこの口座で生じた譲渡損失の額そのもの。配当と相殺できた分ではありません
⑰差引金額(⑨+⑮−⑯)相殺後に残った配当等。マイナスにはならず、零で止まります
⑱納付税額⑰に対して実際に納めた所得税・住民税
⑲還付税額(⑨+⑮−⑱)相殺の結果、年内に戻ってきた所得税・住民税

⑲に金額が入っているなら、その口座では損益通算がすでに行われています。 配当から引かれた税が、譲渡損失のぶんだけ戻っているということです。

ただし、⑲は確定申告書に書き写す数字ではありません。 国税庁の手引きは、申告書第三表の「上場株式等の譲渡所得等の源泉徴収税額の合計額」へ転記するものについて「特定口座年間取引報告書の『⑱納付税額』欄の『源泉徴収税額(所得税)』の金額を転記します」としたうえで、「なお、『⑲還付税額』欄の金額を転記しないようご注意ください」と念を押しています。⑲は年内にもう戻っている税で、納めたまま残っている税ではありません。 間違えると、納めていない税を納めたものとして申告することになります。 ⑯は配当の額を超えることがあります。 記載要領は「譲渡損失の金額」欄について「法第37条の11の6第6項各号に掲げる金額がある場合に、当該金額の合計額を記載すること」と定めており、その金額は租税特別措置法施行令25条の10の13第11項・第12項により、保管分と信用分を相殺した後のその年の譲渡損失の全額です。配当の額で頭打ちにはなりません。頭打ちになるのは次の⑰のほうで、記載要領は「差引金額」欄について「当該源泉徴収選択口座内配当等の額の総額から同項各号に掲げる金額の合計額を控除した金額(当該金額が零を下回る場合には、零)を記載すること」としています。⑯から⑨+⑮を引いた差が、使われずに残った損です。 ⑰が零で止まる以上、その残りが専用の欄に印字されることはありません。使うには申告が要ります。

申告すると、どれだけ変わるか

架空の設例で見ます。2つの証券会社に源泉徴収口座があり、一方が損、もう一方が益という、よくある形です。

A口座B口座
③差引金額(譲渡所得等の金額)−400,000円+600,000円
受け入れた配当等(⑨合計)100,000円なし

A口座の報告書はこうなります

配当100,000円から引かれるはずだった税は、譲渡損失と相殺されて戻ります。

欄金額
⑨合計(配当等の額)100,000円
⑯譲渡損失の金額400,000円
⑰差引金額0円(零で止まる)
⑱納付税額所得税 0円 / 住民税 0円
⑲還付税額所得税 15,315円 / 住民税 5,000円

合わせて20,315円が、年内にA口座の中で戻っています。 ここまでは自動です。

ですが、400,000円の損のうち使われたのは100,000円分だけです。 残りはこの1枚のどこにも出てきません。

B口座では、丸ごと課税されています

欄金額
③差引金額(譲渡所得等の金額)600,000円
源泉徴収税額(所得税)91,890円
株式等譲渡所得割額(住民税)30,000円

この年、実際に負担したのは121,890円です。

申告すると、こうなります

A口座の譲渡損失を申告するので、A口座の配当100,000円も併せて申告しなければなりません(申告分離課税を選択したものとします)。

上場株式等に係る譲渡所得等の金額
  −400,000円(A) + 600,000円(B) = 200,000円

上場株式等に係る配当所得等の金額
  100,000円(A。併せて申告することになる分)

課税される金額の合計 = 300,000円
  所得税及び復興特別所得税  300,000 × 15.315% = 45,945円
  住民税                    300,000 ×      5% = 15,000円
                                      合計 = 60,945円
121,890円申告しないB口座の源泉徴収のみ60,945円2口座とも申告する損益通算後
申告しないB口座の源泉徴収のみ2口座とも申告する損益通算後
所得税及び復興特別所得税91,89045,945
住民税30,00015,000
合計121,89060,945

右の棒が低いのは、A口座に眠っていた譲渡損失がB口座の利益に届いたからです。申告しなければ、左の高さのまま終わります。色の境目より上の住民税は、確定申告書第二表の「株式等譲渡所得割額控除額」欄に書いて初めて差し引かれます。

架空の設例。A口座に譲渡損失40万円と配当10万円、B口座に譲渡益60万円がある場合の1年間の税負担。

差は60,945円です。 内訳は所得税及び復興特別所得税が45,945円、住民税が15,000円です。

放っておくと、この差は戻ってきません。 A口座の報告書にもB口座の報告書にも、間違いは1か所もありません。どちらも自分の口座の中では正しく計算しています。足りないのは、2枚を足す人だけです。

住民税のほうは、確定申告書を出したうえで申告書第二表の「配当割額控除額」欄と「株式等譲渡所得割額控除額」欄に記入する必要があります。国税庁の手引きは「記入がない場合、個人住民税において控除を受けることができない場合がありますのでご注意ください」としています。

申告すると増えるもの ― 合計所得金額

税額だけを見て決めると、別のところで増えます。

国税庁の手引きは、源泉徴収口座で納税が完結している場合について、こう書いています。

これらの場合、「配偶者(特別)控除」や「基礎控除」などの適用の可否等を判定する際の「合計所得金額」は、源泉徴収口座の所得を含めずに判定します。

裏返すと、申告した分は合計所得金額に入ります。 上の設例なら300,000円が加わります。

影響しうるもの理由
配偶者控除・配偶者特別控除本人・配偶者の合計所得金額で判定する
扶養控除扶養される側の合計所得金額で判定する
国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・介護保険料同じ手引きが「額に影響する場合があります」としている

同じ手引きの原文はこうです。

なお、この申告をする場合、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、介護保険料などの額に影響する場合がありますので、ご注意ください。

子育て世帯では、扶養の判定に入るかどうかが効きます。 とくに、子や配偶者の名義の特定口座で利益が出た年は、申告すればその人の合計所得金額が増えます。

給与所得者の「20万円」の判定でも同じです。国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」は、給与を1か所から受けていてその給与の全部が源泉徴収の対象である場合に、給与所得・退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超えるなら申告が必要だとしたうえで、その合計額に含まれない所得として「特定口座の源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡による所得で、確定申告をしないことを選択したもの」を挙げています。申告しない選択をした源泉徴収口座の所得は、この20万円に入りません。 同じ列挙に簡易申告口座や一般口座の譲渡益は挙がっていないので、そちらは判定に入ります。

選び直しは、できません

ここが最も取り返しのつかないところです。 国税庁の手引きは、両方向を塞いでいます。

源泉徴収口座の譲渡所得等の金額又は配当所得等の金額を申告した後に、その譲渡所得等の金額又は配当所得等の金額を申告しないこととする変更はできません。また、源泉徴収口座の譲渡所得等の金額又は配当所得等の金額を含めないで申告した後に、その譲渡所得等の金額又は配当所得等の金額を申告することとする変更もできません。

そして住民税だけ別に選ぶこともできません。 令和6年度の個人住民税から、課税方式は所得税と一致させることになりました。

令和6年度の個人住民税から、上場株式等に係る配当所得等及び譲渡所得等の申告における課税方式を所得税及び復興特別所得税の上場株式等に係る配当所得等及び譲渡所得等の申告における課税方式と一致させることとなりました。

「所得税は申告して還付を受け、住民税は申告不要にして保険料を抑える」という組み合わせは、いまはできません。

損が残った年は、使わないと消えます

設例では損が全部使われましたが、使いきれないこともあります。

残った譲渡損失は、確定申告すれば翌年以後3年間繰り越せます。 国税庁「No.1474」は「損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、その年分の翌年以後3年間にわたり、確定申告により、上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができます」としています。

ただし、申告を切らすと繰越も切れます。 同じページの注はこうです。

上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。

つまり、損が出た年に申告して終わりではなく、使いきるまで毎年続けて申告する必要があります。

必要な書類は「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」です。なおNISA口座内の上場株式等を譲渡して生じた損失は、損益通算も繰越控除もできません。

令和9年分から、内訳が変わります

税率の合計は変わりません。 令和9年1月1日から、復興特別所得税の税率が基準所得税額の2.1%から1.1%へ下がります。同時に防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が源泉徴収に加わります。

国税庁「No.1476」の告知はこうです。

令和9年1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税の税率が1.1パーセントに引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が併せて源泉徴収されます。

源泉徴収の場面では、どちらも「源泉徴収すべき所得税の額」を基礎に計算されます。 令和8年度税制改正の大綱も、防衛特別所得税について「所得税の源泉徴収義務者は、その源泉徴収に係る所得税の額につき、防衛特別所得税を徴収し、納付する義務がある」としています。したがって所得税15%に対する上乗せは、1.1%と1%を合わせて2.1%のままで、0.315%も、15.315%も、住民税を含めた20.315%も変わりません。 報告書に印字される源泉徴収税額の金額も、この改正では動きません。

内訳の詳細は「特定口座と一般口座の違い」に書いています。なお令和8年8月に変わったのは、税務署提出用の書面様式です。読む側の欄の並びを確認するときは、国税庁の最新の様式を見てください。

あなたの数字で確かめる手順

① 届いた報告書を、証券会社の数だけ並べる

1枚では判断できません。 口座をまたぐ通算は自動では行われないためです。特定口座を持っている証券会社の数だけ、報告書が届きます。

申告書に添付する必要はありません。 国税庁の手引きは「確定申告書を提出するに当たり、『特定口座年間取引報告書』の添付は不要です」としています。ただし「その年中に一の特定口座以外に株式等の譲渡がない場合には、『特定口座年間取引報告書』の添付をもって『株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書』の添付に代えることができます」とも書いています。そして、添付しないからといって捨ててよいわけではありません。 同じ手引きの注は「『特定口座年間取引報告書』を添付しない場合でも、税務署等で確定申告書等を作成するときは、『特定口座年間取引報告書』が必要ですので、忘れずにお持ちください」としています。

② それぞれの「源泉徴収の選択」欄を見る

2(無)の口座には、申告不要の選択がありません。 源泉徴収口座のように「申告しない」と選ぶことはできないので、利益は原則として申告の対象です。ただし、簡易申告口座や一般口座の譲渡益は給与所得者の20万円の判定に入るので、そこで20万円以下に収まる人は申告が要りません(国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」。前の節の注を参照)。源泉徴収口座と違って「選べない」のであって、「必ず申告になる」わけではありません。

③ ③欄(差引金額)を書き出して、足す

A口座の③ + B口座の③ + …… = 上場株式等に係る譲渡所得等の金額

①(譲渡の対価の額)ではありません。③です。

④ 合計がマイナスか、どこかの口座がマイナスなら、申告を検討する

状況見るところ
どこかの口座の③がマイナス他の口座の③のプラスに届くか
合計がマイナス配当と通算し、残りを翌年以後3年間へ繰り越せるか
前年以前から繰り越した損がある今年の③のプラスに当てられるか

⑤ ⑲欄を見て、すでに戻っている分を確認する

⑲に金額が入っている口座は、その口座の中ではもう通算が済んでいます。 二重に取り戻せるわけではありません。そして申告書に書き写すのは⑱のほうで、⑲ではありません(手引きが明示的に注意している点です)。

⑥ 申告する場合は、合計所得金額への影響を先に確かめる

扶養の判定、配偶者控除、国民健康保険料。 還付額より増える側が大きいこともあります。そして決めたら、変えられません。

まとめ

  • 特定口座年間取引報告書は、翌年1月31日までに証券会社から交付される。年の途中で特定口座を廃止した場合などは、その事由が生じた月の翌月末日まで。税務署にも同じものが提出される(租税特別措置法第37条の11の3第7項)
  • この1枚は納税の終わりを示す書類ではなく、口座ごとに申告するかしないかを選ぶための材料。選択は口座単位で、1回の売却ごと・1回の配当ごとではない
  • 見る欄は、まず「源泉徴収の選択」の欄。2(無)なら申告しない選択はできない
  • 譲渡のブロックで見るのは③差引金額。①は売った総額にすぎない
  • 配当のブロックの⑯⑰⑱⑲は、その口座の中で起きた損益通算の結果。⑲に金額があれば、年内にもう戻っている
  • 申告するときに申告書へ書き写すのは⑱納付税額。⑲還付税額は転記しない(手引きが明示的に注意している)。報告書そのものの添付は不要だが、税務署等で申告書を作るときは持っていく
  • ⑰は零で止まる。引ききれなかった損は、専用の欄には印字されない(⑯から⑨+⑮を引いて自分で出す)。使うには確定申告が要る
  • 設例(架空)では、2つの口座を足して申告すると60,945円(所得税等45,945円・住民税15,000円)が戻った。どちらの報告書にも誤りはなく、足す人がいなかっただけ
  • 譲渡損失を申告するなら、その口座の配当も併せて申告しなければならない。黒字のときはどちらか一方だけでもよい
  • 申告した分は合計所得金額に入る。 扶養・配偶者控除の判定、国民健康保険料などに影響しうる
  • 申告した後に取り下げることも、申告しなかったものを後から足すこともできない。 住民税だけ別の方式を選ぶこともできない(令和6年度から所得税と一致)
  • 損が残った年は、使いきるまで毎年続けて申告する。譲渡がなかった年も申告が要る
  • 令和9年分から復興特別所得税が1.1%に下がり防衛特別所得税1%が加わるが、15.315%も20.315%も変わらない

1月に届いたら、捨てずに証券会社の数だけ並べてください。 足すべき2枚が別々の封筒で届いていることに気づけるのは、受け取った本人だけです。

よくある質問

特定口座年間取引報告書はいつ届きますか?

原則として、取引を行った年の翌年1月31日までに、証券会社などの金融商品取引業者等から交付されます。国税庁「令和7年分 株式等の譲渡所得等の申告のしかた」は「その特定口座内の譲渡所得等の金額の計算は金融商品取引業者等が行い、年間の取引の合計を記載した『特定口座年間取引報告書』が、取引を行った年の翌年1月31日までに金融商品取引業者等から交付されます」としています。交付は特定口座を持っている人が対象で、一般口座しかない場合は交付されません。なお同じ期限で金融商品取引業者等は税務署にも提出しており、根拠は租税特別措置法第37条の11の3第7項です。同項は期限を「その年の翌年一月三十一日(年の中途で上場株式等保管委託契約又は上場株式等信用取引等契約の解約による特定口座の廃止その他政令で定める事由が生じた場合には、当該事由が生じた日の属する月の翌月末日)まで」と定めており、年の途中で特定口座を廃止した場合は1月31日より早く届きます。税務署に出す分には個人番号が記載されますが、本人に交付される分には記載されません。国税庁の記載要領は「当該居住者又は恒久的施設を有する非居住者に交付する報告書については、『個人番号』の欄は、記載を要しない」としています。

源泉徴収ありの特定口座なら、確定申告は不要ですか?

選べます。国税庁「No.1476 特定口座制度」は「特定口座内で生じる所得に対して源泉徴収することを選択した場合には、その特定口座(以下「源泉徴収口座」といいます。)内の上場株式等の譲渡による所得を申告不要とすることができます」としたうえで、「源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡による所得については、口座ごとに、申告するまたは申告不要とすることの選択をすることができます」と書いています。口座ごとであって、1回の売却ごとではありません。ただし同じページの注が「源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡による所得について、他の口座の上場株式等の譲渡損益と相殺する場合やコード1474『上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例』の適用を受ける場合には、確定申告をする必要があります」としています。つまり不要なのではなく、申告しない選択ができるというだけです。損と益が別々の証券会社に分かれている年は、申告しないと損が使われないまま終わります。

譲渡損失だけを申告して、配当は申告しないことはできますか?

できません。国税庁「No.1476 特定口座制度」は「源泉徴収口座内で生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額を申告する場合には、その源泉徴収口座に受け入れた上場株式等に係る利子等の金額および配当等の金額を申告不要とすることはできないため、これらの金額も併せて申告しなければなりません」としています。一方で、黒字のときは自由です。国税庁「令和7年分 株式等の譲渡所得等の申告のしかた」は「源泉徴収口座の譲渡所得等の黒字の金額とその源泉徴収口座の配当所得等の金額のいずれかのみを申告することもできます」としたうえで、「ただし、源泉徴収口座の譲渡損失の金額を申告する場合には、その源泉徴収口座の配当所得等の金額も併せて申告しなければなりません」と書いています。損失を申告するときだけ、配当がセットで付いてくるということです。

いったん申告した後で、やめることはできますか?

できません。国税庁「令和7年分 株式等の譲渡所得等の申告のしかた」は「源泉徴収口座の譲渡所得等の金額又は配当所得等の金額を申告した後に、その譲渡所得等の金額又は配当所得等の金額を申告しないこととする変更はできません。また、源泉徴収口座の譲渡所得等の金額又は配当所得等の金額を含めないで申告した後に、その譲渡所得等の金額又は配当所得等の金額を申告することとする変更もできません」としています。両方向とも塞がれています。したがって確定申告書を出す前に決める必要があり、出してから気づいても直せません。この一方通行は、申告すると合計所得金額が増えて扶養の判定や保険料に影響し得ることと合わせて考える必要があります。

申告すると、税金以外に何か影響がありますか?

合計所得金額が増えます。国税庁「令和7年分 株式等の譲渡所得等の申告のしかた」は、源泉徴収口座で納税が完結している場合について「『配偶者(特別)控除』や『基礎控除』などの適用の可否等を判定する際の『合計所得金額』は、源泉徴収口座の所得を含めずに判定します」としています。裏返せば、申告するとその所得は合計所得金額に入ります。配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の判定のほか、所得を基準にしている給付や負担にも及び得ます。同じ手引きは「この申告をする場合、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、介護保険料などの額に影響する場合がありますので、ご注意ください」とも書いています。還付される所得税・住民税の額だけを見て決めると、別のところで増えることがあります。

住民税だけ申告不要にすることはできますか?

できません。令和6年度の個人住民税から、課税方式を所得税と一致させることになりました。国税庁「令和7年分 株式等の譲渡所得等の申告のしかた」は「令和6年度の個人住民税から、上場株式等に係る配当所得等及び譲渡所得等の申告における課税方式を所得税及び復興特別所得税の上場株式等に係る配当所得等及び譲渡所得等の申告における課税方式と一致させることとなりました」とし、譲渡所得等についても「所得税及び復興特別所得税の確定申告で選択した申告(申告分離課税)又は申告不要制度……の課税方式は、個人住民税においても同様の課税方式となります」としています。かつてのように所得税は申告し住民税は申告不要とする、といった組み合わせはできません。なお申告する場合は、申告書第二表の「配当割額控除額」欄と「株式等譲渡所得割額控除額」欄の記入が要ります。同じ手引きは「記入がない場合、個人住民税において控除を受けることができない場合がありますのでご注意ください」としています。

2027年から株の税金は上がりますか?

合計は変わりません。変わるのは内訳で、報告書の見え方にも関わります。令和9年1月1日から、復興特別所得税の税率が基準所得税額の2.1%から1.1%に下がり、同時に防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が新設されます。国税庁「No.1476 特定口座制度」も「令和9年1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税の税率が1.1パーセントに引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が併せて源泉徴収されます」と告知しています。源泉徴収の場面では、どちらも「源泉徴収すべき所得税の額」を基礎に計算されます。令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)も防衛特別所得税について「所得税の源泉徴収義務者は、その源泉徴収に係る所得税の額につき、防衛特別所得税を徴収し、納付する義務がある」としています。したがって所得税15%に対する上乗せは0.315%のままです。源泉徴収される税率は前後とも15.315%(住民税を含めて20.315%)で、報告書に印字される金額も変わりません。詳しくは「特定口座と一般口座の違い」に書いています。

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