投資・NISA(税金)

新NISAで含み損になったら何が起きるか ― 損失は消え、枠は買値で戻る

金融庁が令和8年7月3日に公表した「NISA口座の利用状況に関する調査結果」によると、令和7年12月末時点のNISA口座は28,206,434口座です。うち30歳代が4,945,690口座、40歳代が5,381,768口座で、合わせて10,327,458口座全体の36.6%を子育て世代が占めています。

その口座で、2026年に何が起きたか。日本経済新聞社が公表している日経平均株価の終値は、2026年6月25日に72,366.34円の高値をつけた後、7月29日には61,434.19円まで下げました。下落率は15.11%です。直近の9月4日の終値は65,020.94円で、6月の高値からは**10.15%**下にあります。

含み損そのものは、相場が戻れば消えます。この記事が扱うのは、相場が戻っても戻らない部分、つまり税務上だけ起きることです。

この記事は、売るべきか持ち続けるべきかを述べません。相場の見通しにも触れません。扱うのは、NISA口座で損が出ている間と、それを実現したときに、制度上どう扱われるかです。

結論

NISA口座の中で出た損失は、税務上「なかったこと」になります。 特定口座で出た損失なら、同じ年の利益と相殺し、引ききれない分は翌年以後に繰り越せます。NISA口座の損失には、その道が最初から用意されていません。相殺する相手を探す必要すらないということです。

その一方で、非課税保有限度額のほうは値下がりの影響を受けません。 限度額は時価ではなく、買った値段で管理されているからです。含み損を抱えていても、使った枠は増えも減りもしません。

そして売ったときに戻る枠も、買った値段の分です。 値下がりしたまま売れば、いま売って手にする額より大きな枠が戻ります。値上がりしてから売れば、手にした額より小さな枠しか戻りません。得と損のように見える2つの現象は、同じ一つのルールから出ています。

ただし、戻るのは翌年です。 同じ年のうちに枠を空けて買い直すことはできません。

期限があるのは、2023年までの旧制度で買った分だけです。 そこだけは、非課税で持てる期間が決まっています。含み損を抱えたまま期限が来ると、税金の計算に使う買値が、そのときの安い値段に置き換わります。 その後にもとの買値まで値を戻しただけで、税金が出ます。

計算の前提

日経平均株価に連動する投資信託を買ったものとして計算します。指数の値は日本経済新聞社が公表している終値の実績ですが、買った金額と、比べるための譲渡益は、説明のために置いた架空の数字です。

項目条件
対象日経平均株価に連動する投資信託
考慮しないもの信託報酬・購入時手数料・分配金・売買のタイミングのずれ
指数の値日本経済新聞社が公表する日経平均株価の終値(実績)
2026年の高値6月25日 72,366.34円
2026年の安値3月31日 51,063.72円
高値後の安値7月29日 61,434.19円
直近9月4日 65,020.94円
買った額120万円(つみたて投資枠の年間投資上限額と同額に置いた架空の例示
買った日2026年6月25日(2026年の高値の日)
税率20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)
端数所得税と住民税を別々に円未満切捨て。特定口座(源泉徴収あり)の計算に合わせた
計算は Python のスクリプト(scripts/calc-nisa-fukumizon.py)で行い、出力をそのまま転記しています。

① NISAの損失は、税務上「ないもの」になる

まず条文を見ます。 租税特別措置法第37条の14第2項です。

非課税上場株式等管理契約、非課税累積投資契約又は特定非課税累積投資契約に基づく非課税口座内上場株式等の譲渡による収入金額が当該非課税口座内上場株式等の所得税法第三十三条第三項に規定する取得費及びその譲渡に要した費用の額の合計額又はその譲渡に係る必要経費に満たない場合におけるその不足額は、所得税に関する法令の規定の適用については、ないものとみなす

売った金額が買った金額に届かなかったとき、その足りない分は「ない」ことにする、と書かれています。国税庁もタックスアンサーで同じことを説明しています。

非課税口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失はないものとみなされます。したがって、その上場株式等を売却したことにより生じた損失について、特定口座や一般口座で保有する上場株式等の配当等やその上場株式等を売却したことにより生じた譲渡益との損益通算や、繰越控除をすることはできません

「相殺できない」だけでなく「存在しない」という書き方であることに注意してください。 相殺の相手がいれば使える、という話ではありません。

実際にいくら違うのか

設例1。2026年6月25日、高値の日に120万円分を買ったとします。9月4日の終値で評価すると、次のようになります。

金額
買った金額(簿価)1,200,000円
9月4日の評価額1,078,196円
含み損121,804円

設例2。同じ年、同じ特定口座(源泉徴収あり)の中に、別の銘柄で確定した譲渡益が600,000円あるとします。この状態で、上の含み損を実現したとき、その年に納める税金を比べます。

①その商品がNISA口座にある②その商品が特定口座にある
相殺できる損失0円121,804円
課税される譲渡益600,000円478,196円
所得税・復興特別所得税91,890円73,235円
住民税30,000円23,909円
税額121,890円97,144円
手元に残る額478,110円502,856円
600,000円①NISA口座600,000円②特定口座
①NISA口座②特定口座
その年に納める税金121,89097,144
手元に残る額478,110502,856
合計600,000600,000

2本の棒は高さが同じです。相殺の対象になった譲渡益600,000円が同じだからです。違うのは色の境目の位置だけで、上に乗っている税金の部分が①のほうが厚くなっています。その厚みの差が24,746円です。

別の銘柄で確定した譲渡益600,000円がある年に、120万円で買って含み損121,804円になった商品を売った場合の、その年の税金と手元に残る額。

差は24,746円です。 含み損121,804円に20.315%を掛けた24,744円とわずかにずれるのは、所得税と住民税をそれぞれ円未満切捨てで計算しているためです。

この24,746円は、相場が戻っても戻りません。 含み損は値を戻せば消えますが、「相殺に使えたはずの損失」は、使えないまま終わります。

損益が別々の口座にまたがるときは、相殺のために確定申告が必要です。手順と条件は「株で損した年に確定申告すべきケース」で扱っています。

② それでも枠は減らない ― 限度額は時価ではなく簿価で管理されている

ここから先は、損失の話とは逆向きに働きます。

国税庁「新NISAのあらまし」は、非課税保有限度額(総枠)1,800万円について、次のように書いています。

1,800 万円 ※簿価残高方式で管理(枠の再利用が可能)

金融庁も同じ内容を、質問の形で説明しています。

非課税保有限度額については、買付け残高(簿価残高)で管理されます。このため、NISA口座内の商品を売却した場合には、当該商品の簿価分の非課税枠を翌年以降に再利用できることとなります。

簿価とは、買った値段のことです。 したがって、買った後に時価がどれだけ下がっても、使った枠は買った値段のまま動きません。設例1の120万円は、評価額が1,078,196円になっても、枠としては1,200,000円を使ったままです。

逆に言えば、値下がりによって枠が余計に減ることもありません。 「含み損の分だけ非課税枠を損した」ということは起きません。

売ったときに戻るのも、簿価

金融庁の説明は、戻る額まで明示しています。

商品を売却した場合、翌年以降売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になります。

・上記の例では、売却した場合、翌年復活する金額は簿価の100万円です。

・NISA口座で保有している商品を売却した場合に損益がなくなるということではありません。

設例3として、120万円で買ったものを2つの場面で売った場合を並べます。いずれも売った時の金額は日経平均株価の実績から計算しています。

値下がりしたまま売る値上がりしてから売る
いつ買っていつ売るか6月25日に買い9月4日に売る3月31日に買い6月25日に売る
買った金額(簿価)1,200,000円1,200,000円
売って手にする金額1,078,196円1,700,612円
翌年に復活する枠1,200,000円1,200,000円
手にした金額との差+121,804円−500,612円

値下がりしているときは、手にした額より大きな枠が戻ります。 値上がりしているときは、手にした額より小さな枠しか戻りません。得をしたようにも損をしたようにも見えますが、どちらも「簿価で管理する」という一つのルールの結果です。

③ 枠が戻るのは「翌年」。その年の年間投資枠は戻らない

「翌年以降」という言葉は、金融庁の説明に書かれています。 国税庁の資料にこの言い方は出てきませんが、同じことが「判定の基準日」という形で書かれています。これは運用上の都合ではなく、判定の基準日が前年の末日だからです。

国税庁「新NISAのあらまし」は、その年に受け入れられるかどうかを判定する算式の中で「特定累積投資勘定基準額」を使い、これを次のように定義しています。

「特定累積投資勘定基準額」とは、その年の前年12 月31 日時点で「つみたて投資枠」及び「成長投資枠」に受け入れている上場株式等の購入の代価の額に相当する金額の合計額をいいます。

基準日が前年12月31日である以上、年の途中で売っても、その年の判定には反映されません。 条文(第37条の14第5項)も同じ言い方で、「同年の前年十二月三十一日に…受け入れている上場株式等の購入の代価の額に相当する金額」としています。

もう一つ、年間投資上限額も戻りません。 条文は、その年に受け入れられる額を枠ごとに別々の文で定めています。つみたて投資枠は「当該受入期間内に受け入れた特定累積投資上場株式等の取得対価の額の合計額が百二十万円を超えないもの」、成長投資枠は「当該受入期間内に受け入れた上場株式等の取得対価の額の合計額が二百四十万円を超えないもの」です。どちらも「いま保有している額」ではなく「その年に受け入れた額の合計」で数えるため、売っても合計は減りません。

国税庁の資料も、2つの上限が別々にかかることを明示しています。

ただし、その年の投資額が、この年間投資上限額に達していない場合であっても、非課税保有限度額(1,800 万円又は1,200 万円)を超えて投資をすることはできません。

したがって、次のようになります。

場面どうなるか
成長投資枠で240万円買い、同じ年に売ったその年、成長投資枠ではもう買えない
同じ売却の翌年非課税保有限度額が240万円分戻る
その翌年に買える額年間投資上限額の範囲内(つみたて120万円・成長240万円)

非課税保有限度額1,800万円を年間投資上限額だけで埋めるには、360万円 × 5年で最短5年かかります。 売って戻した枠も、この年間の上限を超えて使うことはできません。

④ 2023年までの旧制度だけは、含み損のまま期限が来る

2024年からのNISAには、非課税で持てる期間の制限がありません。 期限を持っているのは、2023年までの旧制度で買った分だけです。

金融庁の説明です。

一般NISAについても、2023年に購入した一般NISAの商品であれば、非課税期間である2027年まで運用が継続できます。ただし、2024年以降のNISAへ移管することはできませんので、それぞれの非課税期間終了前に売却するか、非課税期間終了後に課税口座に払い出しするか、どちらかを選択する必要があります。

条文も、5年で口座の外へ出ることを定めています。

当該非課税管理勘定が設けられた日の属する年の一月一日から五年を経過した日において当該非課税管理勘定に係る上場株式等は、ロの移管がされるものを除き、当該非課税管理勘定が設けられた口座から、政令で定めるところにより他の保管口座に移管される

2023年に設けられた勘定は、令和5年(2023年)1月1日から5年を経過した日、つまり2028年1月1日に外へ出ます。 非課税で持てるのは2027年12月31日までです。

払い出されると、買値が置き換わる

問題はここからです。 国税庁「新NISAのあらまし」の注書きです。

非課税口座で取得した上場株式等を特定口座又は一般口座に移管する場合は、その移管時の価額で取得したものとみなされて移管がされます。

条文(第37条の14第4項)も同じことを定めています。

その払出し時の金額をもつて当該移管、返還又は廃止による払出しがあつた非課税口座内上場株式等の数に相当する数の当該非課税口座内上場株式等と同一銘柄の株式等を取得したものとみなして

つまり、課税口座での買値は「もともと払った金額」ではなく「払い出された日の時価」になります。

設例4。2023年に一般NISAで120万円分を買い、非課税期間の終わりに値下がりしていた場合です。下落率には、2026年に実際に起きた下落(6月25日の高値から7月29日の安値まで、15.11%)をそのまま当てました。 計算には、丸める前の終値の比(61,434.19 ÷ 72,366.34)を使っています。

金額
もともと払った金額1,200,000円
払出し時の金額(=課税口座での取得価額)1,018,719円
その後、もとの買値まで戻って売った金額1,200,000円
課税される譲渡益181,281円
所得税・復興特別所得税27,763円
住民税9,064円
税額36,827円

払った金額と受け取った金額は同じ1,200,000円です。 それでも36,827円の税金が出ます。NISA口座の中で生じていた181,281円の含み損は「ないもの」なので、この譲渡益から引くこともできません。

同じ商品を最初から特定口座で持っていたら、どうだったか。 払い出しが起きないので取得価額は1,200,000円のままです。1,200,000円で売れば譲渡益は0円で、税金も0円です。

1,200,000円①最初から特定口座1,200,000円②一般NISAから払出し
①最初から特定口座②一般NISAから払出し
納める税金036,827
手元に残る額1,200,0001,163,173
合計1,200,0001,200,000

2本とも売った金額は同じ1,200,000円で、買った金額も同じ1,200,000円です。それでも②にだけ税金の帯が乗っています。この帯が出るのは、値下がりした日をまたいで課税口座へ移ったせいで、税金の計算に使う買値が1,018,719円まで下げられたからです。

120万円で買った商品を、もとの買値ちょうどで売ったときの税金。①は最初から特定口座で持っていた場合、②は2023年に一般NISAで買い、非課税期間の終了時に15.11%下がった状態で課税口座へ払い出された場合。

同じことは、旧制度の3つすべてに起きる

この現象は一般NISAに限りません。 2023年までの旧制度は3つとも非課税で持てる期間が決まっており、期限が来れば同じように課税口座へ移されます。違うのは、期限が来る時期だけです。

2023年までの旧制度非課税で持てるのはいつまでか期限が来た翌日にどうなるか
一般NISA(2023年に買った分)2027年12月31日課税口座へ移管される
つみたてNISA(2023年に買った分)2042年12月31日課税口座へ移管される
ジュニアNISA(継続管理勘定)本人がその年1月1日において18歳である年の前年12月31日課税口座へ移管される

このうち、子育て世帯にとって先に来るのはジュニアNISAです。 条文(租税特別措置法第37条の14の2第5項)は、継続管理勘定に置かれた商品の行き先まで定めています。

当該居住者又は恒久的施設を有する非居住者がその年一月一日において十八歳である年の前年十二月三十一日において有する継続管理勘定に係る上場株式等 同日の翌日に政令で定めるところにより行う他の保管口座への移管

「他の保管口座」とは課税口座のことです。 移されるときに取得価額が払出し時の金額に置き換わるのも(同条第4項)、口座の中で生じていた損失が「ないもの」とみなされるのも(同条第2項)、一般NISAとまったく同じです。国税庁も、損失を「ないもの」とみなす扱いについて「令和5年までのNISAおよびジュニアNISAにおいても同様です」と明記しています。

期限によってこの場面が生じないのは、2024年からのNISAだけです。 こちらには非課税で持てる期間の制限がありません。

⑤ よくある誤解の整理

よく言われること実際
NISAで損したら確定申告で取り戻せる損失は「ないもの」とみなされるため、申告する対象がない
値下がりした分だけ非課税枠が空く枠は簿価で管理されるので動かない
売れば時価の分だけ枠が戻る戻るのは簿価(買った値段)の分
売ればすぐ枠が使える戻るのは翌年。判定の基準日は前年12月31日
損出しはNISAでも有効相殺する相手がないため税務上の効果はない。年間投資上限額だけを消費する
一般NISAは新NISAに移せるロールオーバーはできない。売るか課税口座へ払い出すか

あなたの数字で確かめる手順

1. 使った枠を確認する。 見るのは評価額ではなく、これまでに買い付けた金額の合計(取得対価の額)です。証券会社の取引報告や、非課税口座年間取引報告書に載っています。

残っている非課税保有限度額
  = 1,800万円 − 前年12月31日時点の簿価残高 − その年に受け入れた取得対価の額

2. 売ったときに戻る枠を出す。

翌年に復活する枠 = 売却した商品の取得対価の額(簿価)

時価ではありません。 売却代金がいくらだったかは関係しません。

3. NISAだから使えなかった損失を金額にする。 同じ年に相殺できる利益がある場合の上限です。

使えなかった額 = 含み損 × 20.315%

4. 2023年に一般NISAで買った分がある人は、その簿価を控えておく。 2027年12月31日を過ぎると、課税口座での取得価額はその時点の時価に置き換わります。もともと払った金額は、その後の税金の計算には使われません。

まとめ

  • NISA口座の損失は、租税特別措置法第37条の14第2項により税務上ないものとみなされる。損益通算も繰越控除もできない
  • 2026年6月25日の高値(72,366.34円)で120万円分を買った場合、9月4日時点の含み損は121,804円。同じ年に譲渡益600,000円があるなら、特定口座なら税金が24,746円少なくて済んだ
  • 非課税保有限度額は時価ではなく簿価(買った値段)で管理される。値下がりしても使った枠は減らない
  • 売却で戻るのも簿価。値下がりしたまま売れば手にした額より大きな枠が、値上がりして売れば小さな枠が戻る。どちらも同じルールの結果
  • 戻るのは翌年。判定の基準日が前年12月31日だから。その年の年間投資上限額(つみたて120万円・成長240万円)は戻らない
  • 期限があるのは2023年までの旧制度で買った分だけ。一般NISAの2023年買付分は2027年12月31日、つみたてNISAの2023年買付分は2042年、ジュニアNISA(継続管理勘定)は本人がその年1月1日において18歳である年の前年12月31日まで
  • 含み損のまま課税口座へ払い出されると、取得価額が払出し時の時価に置き換わる。もとの買値まで戻っただけで譲渡益が生じる。設例では36,827円の税金が出た
  • 令和8年度税制改正の大綱にあるNISAの改正は口座開設可能年齢の下限撤廃などで、損失の取扱いと簿価管理の見直しは含まれていない

よくある質問

NISA口座で損が出たら、確定申告で取り戻せますか?

取り戻せません。国税庁は「非課税口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失はないものとみなされます」としており、特定口座や一般口座で保有する上場株式等の配当等や譲渡益との損益通算も、翌年以後への繰越控除もできないと明記しています。根拠は租税特別措置法第37条の14第2項で、譲渡による収入金額が取得費および譲渡費用の合計額に満たない場合の不足額は「所得税に関する法令の規定の適用については、ないものとみなす」と定められています。したがって、確定申告書に書く欄そのものがありません。利益が出れば非課税、損が出ればなかったことにされる、という非対称な仕組みです。

値下がりしたら、その分だけ非課税保有限度額は空きますか?

空きません。国税庁「新NISAのあらまし」は非課税保有限度額1,800万円について「簿価残高方式で管理(枠の再利用が可能)」としており、金融庁も「非課税保有限度額については、買付け残高(簿価残高)で管理されます」と説明しています。簿価とは買った値段のことですので、買った後に時価がいくら下がっても、使った枠は買った値段のまま動きません。逆に時価が上がっても枠が余計に減ることはありません。枠の残りを知りたいときに見るべき数字は評価額ではなく、これまでに買い付けた金額の合計です。

含み損のまま売ったら、枠はいくら戻りますか?

買った値段(簿価)の分だけ戻ります。金融庁は「商品を売却した場合、翌年以降売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になります」としています。たとえば120万円で買ったものが約108万円に下がった状態で売っても、翌年に戻るのは120万円分です。時価の約108万円ではありません。逆に約170万円に値上がりしてから売った場合も、戻るのは買値の120万円分だけです。値下がりしているときは得に、値上がりしているときは損に見えますが、どちらも簿価で管理しているという同じ一つのルールの結果です。

売った枠はすぐに使えますか?

すぐには使えません。復活するのは翌年です。国税庁「新NISAのあらまし」は、その年に買える上限を判定する算式で「特定累積投資勘定基準額」を使い、これを「その年の前年12月31日時点で『つみたて投資枠』及び『成長投資枠』に受け入れている上場株式等の購入の代価の額に相当する金額の合計額」と定義しています。判定の基準日が前年の12月31日である以上、年の途中で売っても、その年の判定には反映されません。さらに、その年に買える金額はつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円という年間投資上限額でも縛られており、この上限はその年に受け入れた取得対価の額の合計で数えるため、売っても戻りません。

NISAで「損出し」をする意味はありますか?

税務上の意味はありません。損出しとは、含み損のある商品を売って損失を確定させ、同じ年の利益と相殺して税金を減らす方法ですが、NISA口座の損失は「ないものとみなす」とされているため、相殺する材料になりません。一方で売却によってその年の年間投資上限額は消費されたままですので、同じ年に買い直すと枠を二重に使うことになります。翌年に簿価の分だけ非課税保有限度額が戻るという効果はありますが、それは税金を減らす効果ではありません。税負担を動かす目的での売買は、NISA口座では成立しないと考えてください。

2023年までの一般NISAで買った商品は、いつまで非課税ですか?

一般NISAの非課税保有期間は最長5年間ですので、2023年に買った分は2027年12月31日までです。金融庁も「2023年に購入した一般NISAの商品であれば、非課税期間である2027年まで運用が継続できます」としています。2024年からのNISAへ移すこと(ロールオーバー)はできませんので、非課税期間の終了前に売るか、終了後に課税口座へ払い出すかのどちらかになります。つみたてNISAは最長20年間ですので、2023年に買った分は2042年まで非課税のまま持てます。ジュニアNISAは非課税期間の終了後に継続管理勘定へ自動的に移り、18歳になるまで非課税で持てます。ただし、そこにも終わりがあります。租税特別措置法第37条の14の2第5項は、継続管理勘定に係る上場株式等は、本人がその年1月1日において18歳である年の前年12月31日の翌日に「他の保管口座への移管」がされると定めています。移されるときに取得価額が払出し時の時価に置き換わる点も、口座の中で生じていた損失が「ないもの」とみなされる点も、一般NISAと同じです。

課税口座に払い出されると、何が変わりますか?

取得価額が、払い出したときの時価に置き換わります。国税庁「新NISAのあらまし」は「非課税口座で取得した上場株式等を特定口座又は一般口座に移管する場合は、その移管時の価額で取得したものとみなされて移管がされます」としており、租税特別措置法第37条の14第4項も「その払出し時の金額をもつて…同一銘柄の株式等を取得したものと…みなして」と定めています。含み損を抱えたまま払い出されると、その下がった値段が新しい買値になりますので、その後にもとの買値まで戻っただけでも譲渡益が生じ、税金がかかります。NISA口座の中で生じていた含み損は「ないもの」ですので、この譲渡益と相殺することもできません。

損失がなかったことにされるなら、NISAは損なのですか?

一方だけを見れば不利ですが、もう一方では有利です。特定口座なら利益に20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかるところ、NISA口座ではこれがかかりません。損失を使えないことは、その裏返しの扱いです。したがって「NISAが損か得か」は、最終的に利益で終わるか損失で終わるかによって決まり、事前に一律には決まりません。この記事が示しているのは有利不利ではなく、損が出ている局面では税務上どう扱われるかという制度の内容です。

出典