投資・NISA(税金)

米国株の配当にかかる税金 ― 外国税額控除で戻るのは10%ではない

米国株の配当を30万円受け取ると、手元に残るのは215,150円です。

米国で10%、その残りに日本で20.315%が課されるためです。**引かれる割合は合計28.2835%**で、日本株の配当(20.315%)より重くなっています。

この10%は、確定申告で取り戻せる仕組みがあります。外国税額控除です。多くの解説はここで終わりますが、実際に戻る額を計算すると10%にはなりません。 上の設例と同じ条件(給与収入500万円・共働き)で計算すると、30,000円のうち戻るのは13,704円でした。

そして住宅ローン控除を受けている世帯では、戻る額が0円になります。

結論

外国税額控除は「払った外国の税金を返してもらう制度」ではありません。 日本の所得税から差し引く制度です。したがって差し引く先の所得税が無ければ、控除は働きません。

控除できる額には上限があり、その上限は配当にかかった税率ではなく、あなたの所得全体に対する所得税の負担割合で決まります。 給与所得者の負担割合は、米国で引かれる割合より低いことが普通です。だから満額は戻りません。

住宅ローン控除は、この上限を計算する前に引かれます。 住宅ローン控除で所得税がゼロになっている世帯では、上限もゼロになります。外国で払った税金は残っているのに、差し引く相手がいない状態です。

NISA口座では、そもそもこの制度が使えません。 日本の税金がかからないため、差し引く先が最初から存在しないからです。

本記事は特定の銘柄や商品の売買を勧めるものではありません。制度上どう扱われるかと、その計算だけを扱います。

計算の前提

項目条件
配当米国の上場株式から年30万円(架空の例示。実在する銘柄・利回りではない)
口座国内の証券会社の特定口座(源泉徴収あり)
米国の税率日米租税条約 第十条2(b) の10%
日本の税率上場株式等の配当等として20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)
世帯共働き(配偶者控除なし)、子は16歳未満(扶養控除なし)
社会保険料給与収入の15%(簡易な前提。実在する率ではない)
税制令和8年分の所得税(基礎控除・給与所得控除は令和8年度税制改正後)
住宅ローン控除年末残高3,357万円 × 0.7% = 234,900円(100円未満切捨て)
申告方法申告する場合は申告分離課税を選択
★年末残高3,357万円は住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」の全国平均(融資金)です。控除限度額は令和8年度税制改正の大綱により、特例対象個人が認定住宅を取得して令和8年に居住した場合の借入限度額5,000万円 × 0.7% = 35万円としています。計算はすべて scripts/calc-beikoku-haito-gaikoku-zeigaku.mjs の出力から転記しました。

① 引かれているのは20.315%ではない

米国株の配当は、日本に届く前に米国で10%が引かれています。

2 1の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、4及び5に定める場合を除くほか、次の額を超えないものとする。(中略)(b) その他のすべての場合には、当該配当の額の十パーセント

日本側の源泉徴収は、この10%を引いた後の金額を基礎に行われます。

前二項の場合において、国外株式の配当等の支払の際に徴収される所得税法第九十五条第一項に規定する外国所得税(政令で定めるものを含む。)の額があるときは、第一項に規定する支払を受けるべき金額及び前項に規定する交付をする金額は、当該国外株式の配当等の額から当該外国所得税の額に相当する金額を控除した後の金額とする。

つまり100に対して10、残った90に対して20.315%です。

10% + 90% × 20.315% = 28.2835%
配当(年)米国の税日本の所得税・復興日本の住民税手取り
10万円10,000円13,783円4,500円71,717円
20万円20,000円27,567円9,000円143,433円
30万円30,000円41,350円13,500円215,150円
50万円50,000円68,917円22,500円358,583円

日本株の配当なら20.315%なので、同じ30万円でも手取りは239,055円です。 米国株では23,905円少なくなります。

② 取り戻す仕組みと、その上限

この二重課税を調整するのが外国税額控除です。 計算式は国税庁が示しています。

(1)所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)

注意すべきは、掛けているのが「配当にかかった税率」ではないことです。 掛けているのはその年の所得税額で、それを国外所得の割合で按分しています。つまり上限は、あなたの所得全体に対する所得税の負担割合で決まります。

給与収入500万円・共働き・配当30万円の場合を追います。

段階金額
給与所得3,560,000円
合計所得金額(配当を申告するので配当所得が入る)3,860,000円
所得控除(基礎控除1,040,000円+社会保険料750,000円)1,790,000円
課税総所得金額1,770,000円
課税配当所得等(申告分離)300,000円
所得税額133,500円(総合88,500円+分離45,000円)
所得総額3,860,000円
調整国外所得金額300,000円
按分の割合7.7720%

したがって控除限度額は次のようになります。

計算控除限度額
所得税133,500円 × 7.7720%10,375円
復興特別所得税2,803円 × 7.7720%217円
地方税10,375円 × 30%3,112円
合計13,704円

米国で引かれた30,000円のうち、控除できるのは13,704円です。45.7%にとどまります。

理由は単純です。 この世帯の所得税額は、所得総額に対して**3.4585%**しかありません。米国が10%を持っていったのに対し、日本には差し引ける所得税がそれほど残っていないためです。

給与収入控除できた額30,000円に対する割合
400万円13,078円43.6%
500万円13,704円45.7%
600万円16,114円53.7%
700万円22,589円75.3%
800万円28,699円95.7%
30,000400万円30,000500万円30,000600万円30,000700万円30,000800万円
400万円500万円600万円700万円800万円
控除できた額13,07813,70416,11422,58928,699
その年には控除できない額16,92216,29613,8867,4111,301
合計30,00030,00030,00030,00030,000

5本とも高さは同じ30,000円です。見るのは色の境目で、収入が低いほど上側(控除できない額)が厚くなります。所得税の負担割合が低い人ほど、外国で引かれた10%を取り戻せません。

米国で引かれた外国所得税30,000円のうち、外国税額控除で差し引けた額と、その年には差し引けなかった額。棒は給与収入(住宅ローン控除がない場合・共働き・配当30万円)。

「確定申告すれば10%が戻る」という説明が近似的に成り立つのは、所得税の負担割合が7.57%を超えている人だけです。 控除の枠は所得税・復興特別所得税・地方税の3つの合計なので、所得税の負担割合の1.321倍(=1+2.1%+30%)まで伸びます。10%に届くのは負担割合が 10% ÷ 1.321 ≒ 7.57% を超えたときで、この設例では給与収入817万円が分かれ目でした。

③ 住宅ローン控除があると、上限がゼロになる

ここが最も見落とされます。 控除限度額の式にある「その年分の所得税額」の意味を、国税庁は次のように定めています。

(注1)「その年分の所得税額」とは、配当控除や**(特定増改築等)住宅借入金等特別控除**、所得税に係る分配時調整外国税相当額控除などの税額控除(令和6年分特別税額控除は除きます。)、災害減免額を適用したの所得税額をいいます。

住宅ローン控除を引いた後の所得税額が、按分計算の基礎になります。

住宅ローン控除は所得税額から直接引かれます。

その者のその年分の所得税に係るその年の所得税法第二条第一項第三十号の合計所得金額が二千万円以下である年については、その年分の所得税の額から、住宅借入金等特別税額控除額を控除する

先ほどと同じ設例に、年末残高3,357万円の住宅ローン控除(234,900円)を加えます。

住宅ローン控除なし住宅ローン控除あり
算出税額133,500円133,500円
住宅ローン控除0円▲133,500円
所得税額133,500円0円
所得税の控除限度額10,375円0円
復興特別所得税の控除限度額217円0円
地方税の控除限度額3,112円0円
控除できた額13,704円0円

住宅ローン控除で所得税がゼロになっている世帯は、外国税額控除を1円も使えません。

給与収入別に見ると、算出税額が控除可能額234,900円に届かない収入帯では、まるごと消えます。

給与収入控除なし控除あり
400万円13,078円0円
500万円13,704円0円
600万円16,114円0円
700万円22,589円5,663円
800万円28,699円14,154円

それでも申告する意味はある。ただし理由が違う

では住宅ローン控除がある人は申告しなくてよいのか、というとそうではありません。

配当を申告すると、配当にかかる所得税45,000円も住宅ローン控除の対象になります。 住宅ローン控除の枠が余っていれば、源泉徴収された41,350円が戻ってきます。

ただし住民税は残ります。 申告すると住民税の所得割の課税標準は配当の総額30万円になり、その5%の15,000円が配当に係る住民税です。すでに配当割として徴収されている13,500円は米国の税を引いた後の27万円の5%なので、追加で納めるのは差額の1,500円です。申告すると課税の基礎が「引かれた後」から「引かれる前」に戻るという点は、所得税でも同じです(源泉41,350円に対し、申告分離の税額は45,000円)。

この差が出るのは、地方税法が「配当割の課税標準」だけを外国所得税の控除後と定めているからです。

特定配当等のうち(中略)同法第九条の二第一項に規定する国外株式の配当等(中略)に係るもの(以下この条及び第七十一条の三十一において「国外特定配当等」という。)の支払の際に徴収される所得税法第九十五条第一項に規定する外国所得税(政令で定めるものを含む。)の額があるときは、第七十一条の二十七第一項に規定する支払を受けるべき特定配当等の額は、当該国外特定配当等の額から当該外国所得税の額に相当する金額を控除した後の金額とする。

これは源泉徴収である配当割の話で、申告したときの所得割の課税標準を減らす規定ではありません。 納めた配当割は所得割から差し引かれ、引ききれなければ還付されます(地方税法37条の4・314条の9)。だから総額の15,000円と、前払い済みの13,500円との差が出ます。

配当割13,500円は前払いであって、負担が消えるわけではありません。 下のグラフで「日本に納める税」を比べるときは、申告しない場合(41,350円+13,500円)と同じ土俵に乗せるため、申告する場合も住民税を総額の15,000円で数えています。
300,000円申告しない源泉徴収のまま300,000円申告するローン控除なし300,000円申告するローン控除あり
申告しない源泉徴収のまま申告するローン控除なし申告するローン控除あり
米国に納める税30,00030,00030,000
日本に納める税54,85047,24115,000
手元に残る額215,150222,759255,000
合計300,000300,000300,000

3本とも高さは30万円で同じです。左端の赤(米国の税30,000円)はどの場合も動きません。減っているのは真ん中の日本の税です。右端の棒で日本の税が15,000円(住民税だけ)まで下がっているのは外国税額控除のためではなく、住宅ローン控除の余った枠が配当の所得税41,350円を吸収したためです。

配当30万円の行方(給与収入500万円・共働き)。申告しない場合、申告して住宅ローン控除がない場合、申告して住宅ローン控除がある場合の3つ。

同じ「申告して得をした」でも、中身がまったく違います。

申告しない場合との差得をした理由
住宅ローン控除なし+7,609円外国税額控除13,704円 - 課税の基礎が総額に戻る分の増税6,095円
住宅ローン控除あり+39,850円住宅ローン控除の余った枠で所得税41,350円が戻り、住民税が1,500円増えた(外国税額控除は0円)

住宅ローン控除がある世帯のほうが得をしていますが、外国で払った10%は取り戻せていません。

住宅ローン控除がある世帯なら常に得になるわけではありません。 所得税から引ききれなかった住宅ローン控除は、翌年度の個人住民税からも減額されます。その限度額は課税総所得金額等の5%(最高97,500円)で(令和8年度税制改正の大綱(地方税)(1)①)、この枠の計算に申告分離課税の配当所得は入りません(地方税法附則5条の4)。つまり、住民税へ回る枠がまだ埋まっていない世帯では、配当を申告して所得税45,000円を住宅ローン控除に吸収させた分だけ、住民税から減額される額が減ります。上の設例(給与収入500万円)は住民税側の枠(1,770,000円×5%=88,500円)に申告の有無にかかわらず達しているため影響がありませんが、たとえば給与収入600万円・同じ年末残高では申告すると5,150円損をします

④ NISA口座では最初から使えない

NISA口座で受け取る配当には、外国税額控除が適用されません。 国税庁は「居住者に係る外国税額控除の対象とならない外国所得税額」として、次を挙げています。

6 租税特別措置法第9条の8に規定する非課税口座内上場株式等の配当等または同法第9条の9第1項に規定する未成年者口座内上場株式等の配当等に対して課される外国所得税額

日本の税金がかからない以上、そこから差し引くという控除は成り立ちません。 制度としては筋が通っていますが、米国で引かれる10%は残ります。

口座米国の税日本の税手取り(配当30万円)
NISA口座30,000円0円270,000円
特定口座・申告しない30,000円54,850円215,150円

NISAは「非課税」と言われますが、米国株の配当については10%が残ります。 日本株の配当なら20.315%がまるごとゼロになるので、同じ非課税でも効き方が違います。

なお、外国税額控除は確定申告書に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」と外国所得税を課されたことを証する書類を添付して受けるものです。確定申告不要制度を選んで申告しなければ、当然ながら適用はありません。またNISAの配当が非課税になるのは、措置法9条の8の括弧書きが「当該金融商品取引業者等が国内における支払の取扱者で政令で定めるものであるものに限る」としているとおり、証券会社を通じて受け取る場合です。

⑤ 申告すると合計所得金額が増える

配当を申告すると、その配当所得は合計所得金額に入ります。 申告分離課税を選んでも入ります。

合計所得金額/次の①と②の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額です。 ※ 申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額(長(短)期譲渡所得については特別控除前の金額)の合計額を加算した金額です。

申告不要のままなら入りません。

(前略)上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上当該利子等に係る利子所得の金額又は配当等に係る配当所得の金額を除外し(後略)

ここに落とし穴があります。 令和8年分の所得税では、基礎控除への加算額が合計所得金額で変わります。国税庁は令和8年4月1日現在の法令等に基づいて、加算額を次のように示しています。

62万円にそれぞれ、42万円、5万円、37万円を加算した金額(改正前:58万円にそれぞれ、37万円、30万円、10万円、5万円を加算した金額)となります。なお、この加算は、居住者についてのみ適用があります。

引用の「42万円、5万円」が令和8年分・令和9年分の加算額です(37万円は令和10年分以後)。どの区分にいくら加算するかは、令和8年度税制改正で次のように定められました。

① 居住者のその年分の合計所得金額が655 万円(令和10 年分以後の各年分にあっては、132 万円)以下である場合の基礎控除の控除額の加算額を次に掲げる年分の区分に応じそれぞれ次に定める金額とする。 イ 令和8年分及び令和9年分 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額 (イ)その居住者のその年分の合計所得金額が489 万円以下である場合 42万円 (ロ)その居住者のその年分の合計所得金額が489 万円を超える場合 5万円

加算そのものが合計所得金額655万円以下の人に限られる点に注意してください。655万円を超えると加算はなくなり、基礎控除は本則の62万円だけになります。

申告したことで489万円の境目をまたぐと、基礎控除が37万円減ります。

給与収入だけで他に所得がなく、配当30万円を申告する場合、給与収入629万円から665万円の帯がこれに当たります。

給与収入申告しない場合の合計所得申告した場合の合計所得基礎控除申告した場合の手取りの差
630万円4,600,000円4,900,000円1,040,000円 → 670,000円▲23,977円
650万円4,760,000円5,060,000円1,040,000円 → 670,000円▲23,590円
670万円4,930,000円5,230,000円670,000円 → 670,000円+14,588円

この帯では、外国税額控除で戻る20,283円(給与650万円の場合)より、基礎控除が減る影響のほうが大きくなります。 給与収入670万円では、申告しない場合でもすでに基礎控除が670,000円なので、またぐ段差がなく、申告したほうが14,588円多く残ります。

住民税だけ申告不要にする、という逃げ道はもうありません。

① 個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとする。 (注)上記の改正は、令和6年度分以後の個人住民税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。

申告すれば住民税の合計所得金額も増えます。 保育料や各種の所得判定に影響する可能性があるので、税額だけで判断しないでください。

⑥ 使い切れなかった分は3年繰り越せる

控除しきれなかった外国所得税は、捨てるわけではありません。

その年において納付することとなる外国所得税額がその年の所得税の控除限度額に満たない場合において、その年の前年以前3年内の各年において納付することとなった外国所得税額のうち、その年に繰り越される部分の金額(以下「繰越外国所得税額」といいます。)があるときは、その控除限度額からその年において納付することとなる外国所得税額を控除した残額を限度として、その繰越外国所得税額をその年分の所得税額から控除します。

使えるのは「翌年以後3年内に控除の余裕が生まれたとき」です。 住宅ローン控除で所得税がゼロの状態が続くかぎり、余裕は生まれません。控除期間は13年あるので、その前半に生じた繰越しは、余裕が生まれるより先に期限が来ます。

配当(年)外国所得税控除できた額繰り越す額
10万円10,000円3,734円6,266円
20万円20,000円8,325円11,675円
30万円30,000円13,704円16,296円
50万円50,000円26,597円23,403円
給与収入500万円・住宅ローン控除なしの場合。配当が増えるほど控除できる割合は上がりますが(37.3%→53.2%)、繰り越す額も増えます。

また、条約の限度税率を超えて課された部分は、そもそも控除の対象になりません。

10 日本が租税条約を締結している相手国等において課される外国所得税額のうち、その租税条約の規定(当該外国所得税の軽減または免除に関する規定に限ります。)によりその相手国等において課することができることとされる額を超える部分に相当する金額または免除することとされる額に相当する金額

米国で10%を超える源泉徴収を受けている場合、超えた部分は日本では取り戻せません。 条約の適用手続が証券会社を通じて行われているかを確認してください。

あなたの数字で確かめる手順

① 特定口座年間取引報告書の「外国所得税の額」を見る

「配当等の額及び源泉徴収税額等」の欄に、⑧国外株式又は国外投資信託等の行があります。 その行の右端に「外国所得税の額」があり、ここが米国などで引かれた税額です。

② その年の所得税額を出す

所得税額 =(課税総所得金額に速算表を当てた額)+(課税配当所得等 × 15%)
          - 配当控除・住宅ローン控除などの税額控除

住宅ローン控除を引いた後の金額です。 源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」を引いてください。ここがゼロなら、外国税額控除は使えません。

③ 控除限度額を出す

所得税の控除限度額 = ②の所得税額 ×(国外所得の金額 / 所得総額)
復興特別所得税の控除限度額 = ②の所得税額 × 2.1% ×(同じ割合)
地方税の控除限度額 = 所得税の控除限度額 × 30%

この3つの合計と、①の外国所得税額を比べます。 少ないほうが、その年に控除できる額です。

④ 合計所得金額の境目をまたがないか確かめる

配当所得を足した合計所得金額が489万円を超えないかを確認してください。またぐ場合は、基礎控除が37万円減る影響と、③で出した控除額を比べます。

まとめ

  • 米国株の配当は米国で10%、その残りに日本で20.315%。合計28.2835%が引かれ、手取りは71.7%。配当30万円なら手元に残るのは215,150円
  • 外国税額控除の控除限度額は**「その年分の所得税額 ×(調整国外所得金額/所得総額)」**。配当にかかった税率ではなく、所得全体に対する所得税の負担割合で決まる
  • 給与収入500万円・共働きの設例では、米国で引かれた30,000円のうち控除できたのは13,704円(45.7%)。**給与収入800万円でも95.7%**で、満額にはならない
  • 「その年分の所得税額」は住宅ローン控除を適用した後の金額(国税庁 No.1240 注1)。住宅ローン控除で所得税がゼロなら、控除限度額もゼロ
  • ただし申告する意味はある。配当にかかる所得税45,000円も住宅ローン控除の対象になり、源泉徴収された41,350円が戻る。同じ設例で手取りは39,850円増えた。得をする理由が外国税額控除ではなく住宅ローン控除の余り枠である点が違う。ただし所得税から引ききれない住宅ローン控除は住民税からも減額される(課税総所得金額等の5%・最高97,500円)ので、その枠が埋まっていない世帯では逆に損をすることがある
  • NISA口座では外国税額控除の対象外(措置法9条の8の配当等)。日本の税はゼロだが、米国の10%は残る
  • 申告すると配当所得が合計所得金額に入る。令和8年分は489万円が基礎控除の加算(42万円/5万円)の境目で、給与収入629万円〜665万円の帯では申告するとかえって手取りが減る(給与650万円で**▲23,590円**)。加算自体が合計所得655万円以下に限られる点にも注意
  • 住民税だけ申告不要にする使い分けは、令和6年度分以後できない
  • 控除しきれない分は翌年以後3年内に繰り越せるが、住宅ローン控除で所得税がゼロの間は余裕が生まれない。控除期間は13年あるので、その前半の繰越しは余裕が生まれるより先に期限が来る

制度の名前は「二重課税の排除」ですが、排除しきれるとは限りません。 どれだけ排除できるかは、その年にあなたが日本へ納める所得税がいくら残っているかで決まります。

よくある質問

米国株の配当は、結局どれだけ税金を引かれているのですか?

米国で10%、その残りに日本で20.315%が課されます。日米租税条約第十条2(b)は、一般の配当について源泉地国が課せる税を「当該配当の額の十パーセント」に制限しています。日本側の源泉徴収は、租税特別措置法9条の2第3項により「国外株式の配当等の額から当該外国所得税の額に相当する金額を控除した後の金額」を基礎に行われるため、100に対して10ではなく90に対して20.315%がかかります。合計すると10%+90%×20.315%=28.2835%で、手取りは71.7%です。配当30万円なら、米国に30,000円、日本に54,850円で、手元に残るのは215,150円になります。

確定申告すれば、米国で引かれた10%は全額戻ってくるのですか?

戻りません。外国税額控除には控除限度額があり、国税庁は「所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)」としています。つまり控除できる上限は、配当そのものにかかった税率ではなく、あなたの所得全体に対する平均的な所得税の負担率で決まります。給与収入500万円・共働き・配当30万円の設例では、控除限度額は所得税10,375円・復興特別所得税217円・地方税3,112円の合計13,704円で、米国で引かれた30,000円の45.7%にとどまりました。給与収入800万円でも95.7%です。

住宅ローン控除を受けていると、外国税額控除はどうなりますか?

所得税が住宅ローン控除でゼロになっていれば、外国税額控除の控除限度額もゼロになり、1円も控除できません。国税庁は控除限度額の計算に使う「その年分の所得税額」について、「配当控除や(特定増改築等)住宅借入金等特別控除、所得税に係る分配時調整外国税相当額控除などの税額控除(令和6年分特別税額控除は除きます。)、災害減免額を適用した後の所得税額をいいます」と定めています。住宅ローン控除を先に引いた残りが基礎になるため、そこがゼロなら比例計算の結果もゼロです。ただし控除しきれなかった外国所得税は、翌年以後3年内に繰り越せます。

NISA口座で米国株を持っていれば、外国税額控除は使えますか?

使えません。国税庁は「居住者に係る外国税額控除の対象とならない外国所得税額」として「租税特別措置法第9条の8に規定する非課税口座内上場株式等の配当等または同法第9条の9第1項に規定する未成年者口座内上場株式等の配当等に対して課される外国所得税額」を挙げています。NISA口座では日本の税金がかからない代わりに、日本の税金から差し引くという外国税額控除の仕組みそのものが働きません。米国で引かれる10%はそのまま負担になります。二重課税ではないため制度としては筋が通っていますが、「NISAなら非課税」と考えていると10%分だけ想定より手取りが少なくなります。

申告すると損になることがあると聞きました。どういう場合ですか?

配当を申告すると、その配当所得が合計所得金額に入ります。令和8年分の所得税では、基礎控除への加算額が合計所得金額489万円以下なら42万円、超えると5万円に下がります。申告によってこの境目をまたぐと、基礎控除が37万円減ります。給与収入だけで他に所得がなく、配当30万円を申告する設例では、給与収入629万円から665万円の帯がこれに当たり、外国税額控除で戻る額より基礎控除が減る影響のほうが大きくなります。給与収入650万円では、申告したほうが手取りが23,590円少なくなりました。なお、この加算はそもそも合計所得金額655万円以下の人に限られ、655万円を超えると基礎控除は本則の62万円だけになります。申告するかどうかは1回に受け取る配当ごと、源泉徴収選択口座なら口座ごとに選べます。

申告不要のままにしておくのと、申告するのと、どちらが有利ですか?

所得の水準と住宅ローン控除の有無で変わります。給与収入500万円・共働き・配当30万円の設例では、申告しない場合の日本の税は54,850円(所得税41,350円+住民税13,500円)、申告分離課税で申告した場合は47,241円で、申告したほうが7,609円多く残りました。外国税額控除で13,704円が戻る一方、課税の基礎が米国の税を引く前の30万円に戻るため6,095円だけ税が増え、差引きがこの額になります。住宅ローン控除(年末残高3,357万円で控除可能額234,900円)がある場合は、配当にかかる所得税がその控除に吸収されて日本の税が住民税15,000円だけになり、39,850円多く残ります。この場合に得をしている理由は外国税額控除ではなく、住宅ローン控除の余った枠です。ただし所得税から引ききれない住宅ローン控除は住民税からも減額されるため、その枠がまだ埋まっていない世帯では申告してかえって損をすることがあります。上に挙げた基礎控除の境目の帯でも損をします。

総合課税を選べば配当控除が使えますか?

外国株の配当には配当控除は使えません。国税庁は「日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当…で、確定申告において総合課税の適用を受けた配当所得に限られます。したがって、外国法人から受ける配当等は、配当控除の対象となりません」としています。日本株の配当なら総合課税を選んで配当控除を受ける余地がありますが、米国株の配当にはその余地がありません。総合課税を選ぶと住民税の税率も5%から10%に上がるため、税率の低い人でも有利になるとは限りません。なお申告する場合、上場株式等の配当所得は総合課税か申告分離課税かをその年に申告する全額について統一して選ぶ必要があります。

令和6年度から、住民税だけ申告不要にすることはできなくなったと聞きました。

できません。令和4年度税制改正の大綱(地方税)は「個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとする」とし、「上記の改正は、令和6年度分以後の個人住民税について適用する」としています。以前は所得税で申告して外国税額控除を受けつつ、住民税では申告不要を選んで合計所得金額を増やさない、という使い分けができましたが、いまはできません。したがって申告すると、住民税の合計所得金額も増え、保育料や各種の所得判定に影響する可能性があります。申告の前に、その影響も含めて判断してください。

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