教育費(税金)まとめ

教育費は結局いくらか ― 幼稚園から大学までを実額で並べる

文部科学省の「子供の学習費調査」は、2年に一度、保護者が実際に支出した額を集計しています。

令和5年度の調査(令和8年1月16日に訂正版が公表)によれば、幼稚園3歳から高校3年までの15年間にかかった学習費の総額は、次のとおりでした。

ケース15年間の学習費
すべて公立614万円
幼稚園だけ私立665万円
幼稚園と高校が私立838万円
すべて私立1,969万円

「教育費は1人1,000万円」と言われますが、どこを私立にするかで3倍以上の幅があります。

そしてこの金額には、授業料以外のものが大量に含まれています。

結論

教育費の総額は、進路の組み合わせでほとんど決まります。 同じ「子ども1人」でも、公立中心か私立中心かで倍以上の差がつきます。

ただし差の出どころは、多くの人が思っている場所とは違います。 授業料の差が大きいのは事実ですが、公立を選んだ家庭でも、学校に払わないお金がまとまった額で出ていきます。 通学のための費用、学用品、部活動、そして塾です。

とくに公立中学校では、学校に払う費用より塾などの費用の方が大きくなっています。 「公立なら安い」という前提は、この費目を見ると崩れます。

大学は別枠です。 入学時に金額が集中し、自宅外から通えば生活費が加わります。負担が重なる年を先に把握しておくことが、総額を眺めるより実務的です。

本記事は、公立と私立のどちらを選ぶべきかには踏み込みません。実額を並べるところまでを扱います。

計算の前提

項目内容
学習費のデータ文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(令和8年1月16日訂正版
集計の対象保護者が学校教育・学校外活動のために支出した経費
15年間の金額各学年の平均年額を合計したもの(文部科学省の集計。1年分を3倍したものではない)
授業料の集計就学支援金や減免を差し引いた後の、実際に家庭が負担した額
大学の費用国立は省令の標準額、私立は令和7年度入学者の平均(授業料・入学料・施設設備費・実験実習料・その他の総計)。生活費・住居費は含まない
大学の2年目以降調査は初年度の納付金を集計したもの。2年目以降は入学料を除いた額が毎年かかるものとして試算

15年間の内訳を見る

6,140,466すべて公立6,646,376幼のみ私立8,382,842幼・高が私立19,688,737すべて私立
すべて公立幼のみ私立幼・高が私立すべて私立
幼稚園532,1771,038,0871,038,0871,038,087
小学校2,197,2612,197,2612,197,26110,457,700
中学校1,626,1331,626,1331,626,1334,671,589
高校(全日制)1,784,8951,784,8953,521,3613,521,361
合計6,140,4666,646,3768,382,84219,688,737

右端だけが突出しています。私立小学校の1,046万円が効いているためで、6年間の在学期間が長いことと、私立小学校の学習費が高いことが重なります。左の3本の差は、幼稚園と高校の部分だけです。

幼稚園3歳から高校3年までの15年間の学習費総額。文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の各学年の平均年額を合計したもの。

「すべて私立」が突出するのは、私立小学校の影響です。 6年間で1,046万円かかる一方、公立小学校は220万円です。

ただし私立小学校に通うのは全体の1.3%です。 私立の割合は幼稚園88.3%、小学校1.3%、中学校7.9%、高校(全日制)35.5%となっており、現実に多いのは左から2番目と3番目のパターンです。

学校種公立(在学期間の合計)私立(同)
幼稚園(3年)532,177円1,038,087円
小学校(6年)2,197,261円10,457,700円
中学校(3年)1,626,133円4,671,589円
高校・全日制(3年)1,784,895円3,521,361円

差がつくのは授業料だけではない

1年あたりの内訳を見ると、学校外活動費(塾・習い事など)の大きさが分かります。

学習費総額学校教育費学校給食費学校外活動費総額に占める割合
公立小学校366,599円74,336円35,774円256,489円70.0%
私立小学校1,741,516円978,271円53,578円709,667円40.7%
公立中学校542,450円150,761円35,671円356,018円65.6%
私立中学校1,560,359円1,128,061円9,317円422,981円27.1%
公立高校(全日制)596,954円351,523円245,431円41.1%
私立高校(全日制)1,179,261円832,650円346,611円29.4%

公立小学校では総額の70.0%、公立中学校では65.6%が学校外活動費です。 学校に払う費用より、塾や習い事の方が大きくなっています。

この費目は家庭による差が最も大きいところでもあります。 平均値をそのまま自分の家に当てはめるのは、ここだけは避けた方が実態に合います。

大学を足す

授業料等だけで計算します。生活費は含みません。

私立大学は、授業料と施設設備費のほかに実験実習料などがあります。

項目(私立大学・学部の平均)金額
授業料968,069円
入学料240,365円
施設設備費172,550円
実験実習料30,290円
その他96,374円
初年度学生納付金等の総計1,507,647円
文部科学省の公表値。項目を足すと1,507,648円になりますが、これは四捨五入によるものです。
初年度2年目以降(年)4年間の合計
国立大学(省令の標準額)817,800円535,800円2,425,200円
私立大学(学部の平均)1,507,647円1,267,283円5,309,496円
国立の初年度は入学料282,000円+授業料535,800円。私立の2年目以降は総計から入学料を除いた額で、毎年同額がかかるものとして計算した試算です(調査は初年度の納付金を集計したものなので、2年目以降は調査されていません)。国立の標準額は「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」で定められた額で、各国立大学法人はこれを標準として定めるため、標準額より高い大学もあります。

差は288万4296円です。

15年分と足すと、こうなります。

ケース15年間大学4年合計
すべて公立+国立大学6,140,466円2,425,200円8,565,666円
すべて私立+私立大学19,688,737円5,309,496円24,998,233円

「1人1,000万円」という言い方は、公立中心のケースにほぼ当てはまります。 自宅外から通う場合は、ここに家賃と生活費が加わります。

税金・支援制度との接点

教育費そのものを所得から差し引く仕組みは、所得税にはありません。 関係するのは次のあたりです。

制度内容
扶養控除16歳以上の扶養親族で38万円。19歳以上23歳未満は63万円(特定扶養親族)
高等学校等就学支援金2026年4月から所得制限が撤廃。私立(全日制)は年最大45万7200円
高校生等奨学給付金授業料以外の教育費に充てる給付。年収490万円程度まで対象が拡大
教育資金の一括贈与の非課税2026年3月31日で新規の受付は終了しました(下記)

扶養親族の所得要件は、令和8年分から合計所得62万円以下(給与収入136万円以下)に上がりました。 アルバイトをしているお子さんがいる場合、以前より外れにくくなっています。

教育資金の一括贈与は、新規の受付が終わりました

祖父母などから教育資金をまとめて贈与しても非課税になる制度は、2026年3月31日で終了しました。 令和8年度税制改正の大綱に、こう書かれています。

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、令和8年3月31日までとされている教育資金管理契約に基づく信託等可能期間を延長せずに終了することとし、同日までに拠出された金銭等については、引き続き本措置を適用できることとする。

2026年4月以降に新しく契約することはできません。 すでに契約して拠出済みの分は、引き続きこの制度が適用されます。

なお、扶養義務者が必要な都度支払う教育費は、この制度とは別に、もともと贈与税がかかりません。

就学支援金で置き換わるのは授業料の部分だけです。 高校の学習費のうち授業料が占める割合は公立で7.6%、私立で23.7%にすぎません。詳しくは「高校無償化で家計はどう変わるか」で扱っています。

あなたの数字で確かめる手順

① 進路の組み合わせを決めて、表から拾う

15年間の学習費 = 幼稚園 + 小学校 + 中学校 + 高校(それぞれ公立か私立か)

上の「学校種別の合計」の表から、該当するものを足すだけです。

② 学校外活動費だけは、自分の家の実績で置き換える

平均値との差が最も大きい費目です。 いま塾や習い事に月いくら払っているかを、そのまま12倍して当てはめる方が実態に合います。

③ 大学の分を足す

国立 = 282,000円 + 535,800円 × 4年
私立 = 1,507,647円(初年度) + 1,267,283円 × 3年

自宅外から通う場合は、ここに家賃・食費などの生活費が加わります。

④ 支出が集中する年を書き出す

総額より、こちらの方が家計の実務では効きます。 入学金等がかかる年(私立中学・私立高校・大学の入学年)と、大学の初年度が重なる時期を先に把握しておきます。

まとめ

  • 幼稚園から高校までの15年間の学習費は、すべて公立で614万円、すべて私立で1,969万円(令和5年度)
  • 現実に多いのは「幼稚園だけ私立」665万円、「幼稚園と高校が私立」838万円。私立小学校に通うのは1.3%
  • 「すべて私立」が突出するのは私立小学校の1,046万円が効いているため
  • 公立小学校では総額の70.0%、公立中学校では65.6%が学校外活動費(塾・習い事)。学校に払う費用より大きい
  • 大学4年は大学に納める費用だけで国立242万5200円、私立530万9496円(生活費を含まない)
  • 私立には授業料・施設設備費のほかに実験実習料30,290円・その他96,374円があり、初年度の総計は1,507,647円
  • 15年分と足すと、公立+国立で857万円、私立+私立大学で約2,500万円
  • 教育資金の一括贈与の非課税は、2026年3月31日で新規の受付が終了した
  • 教育費を直接差し引く所得控除はない。19歳以上23歳未満の扶養控除63万円が最も大きい
  • 令和8年分から**扶養親族の所得要件が合計所得62万円以下(給与収入136万円以下)**に上がった

平均値は「自分の家の数字」ではありません。 とくに学校外活動費は家庭差が大きい費目です。本記事の内訳を、ご自身の実績に置き換えて使ってください。

よくある質問

幼稚園から高校まで、公立と私立でいくら違いますか?

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、幼稚園3歳から高校3年までの15年間の学習費総額は、すべて公立で約614万円、すべて私立で約1,969万円です。差は約1,355万円になります。ただし全て私立というケースは実際には多くありません。私立に通う割合は幼稚園が88.3%と高い一方、小学校は1.3%、中学校は7.9%、高校(全日制)は35.5%です。現実に多いのは「幼稚園だけ私立」で約665万円、「幼稚園と高校が私立」で約838万円というパターンです。

学習費にはどこまで含まれますか?

学校教育費・学校給食費・学校外活動費の3つです。学校教育費には授業料のほか、入学金等、修学旅行費等、学校納付金等、図書・学用品・実習材料費等、教科外活動費、通学関係費が含まれます。学校外活動費は塾や習い事、家庭内学習の費用です。つまり学校に払うお金だけでなく、制服代・定期代・塾代まで入った金額です。なお授業料は、就学支援金や学校独自の減免を差し引いた後の、実際に家庭が負担した額として集計されています。

塾や習い事の費用はどのくらいですか?

学校外活動費として集計されています。令和5年度の1年あたりの平均は、公立小学校256,489円、私立小学校709,667円、公立中学校356,018円、私立中学校422,981円、公立高校(全日制)245,431円、私立高校(全日制)346,611円です。公立中学校では学習費総額542,450円のうち65.6%を学校外活動費が占めており、学校に払う費用より塾などの費用の方が大きくなっています。この費目は家庭による差が最も大きいところです。

大学の費用はいくらですか?

国立大学は入学料282,000円・授業料年535,800円が省令で定める標準額で、4年間では2,425,200円になります。私立大学(学部)は令和7年度入学者の平均で、初年度の学生納付金等の総計が1,507,647円です。内訳は授業料968,069円・入学料240,365円・施設設備費172,550円・実験実習料30,290円・その他96,374円です。2年目以降も入学料を除いた1,267,283円が毎年かかるとして計算すると、4年間で5,309,496円になります。差は約288万円です。ただしこれは大学に納める費用だけで、下宿の家賃や生活費は含みません。また国立大学の授業料は各大学が標準額を踏まえて定めるため、標準額より高い大学もあります。

幼稚園から大学まで、合計するといくらですか?

すべて公立・国立で約857万円、すべて私立で約2,500万円という計算になります。前者は15年間の学習費614万円に国立大学4年の242万円を足した金額、後者は1,969万円に私立大学4年の531万円を足した金額です。ただし大学の金額には生活費が含まれていないため、自宅外から通う場合はさらに家賃・食費などが加わります。また15年分の金額は令和5年度の各学年の平均額を合計したもので、実際には物価や制度の変化で変わります。

高校無償化で教育費は下がりますか?

授業料の部分は下がります。2026年4月から高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃され、私立(全日制)の支給上限は年45万7200円になりました。ただし就学支援金は授業料に充てるためのもので、支給されるのは授業料の額までです。そして高校の学習費のうち授業料が占める割合は、公立で7.6%、私立で23.7%にすぎません。通学関係費・学校納付金等・塾代は残ります。詳しくは「高校無償化で家計はどう変わるか」で扱っています。

教育費は税金の面で何か軽くなりますか?

教育費そのものを所得から差し引く仕組みは、所得税にはありません。関係するのは扶養控除で、16歳以上の扶養親族がいる場合に38万円(19歳以上23歳未満の特定親族は63万円)が所得から引かれます。令和8年分からは、扶養親族の合計所得金額の要件が62万円以下(給与収入136万円以下)に引き上げられました。なお、祖父母などから教育資金の一括贈与を受けたときの非課税制度は、令和8年度税制改正により2026年3月31日で新規の受付が終了しています(同日までに拠出された分は引き続き適用されます)。このほか高校生等奨学給付金・就学支援金などの給付がありますが、申請しないと受けられないものが多いので、対象になるか確認してください。

いつまでにいくら貯めればよいですか?

本記事は目標額を示すものではありませんが、金額の集中する時期は指摘できます。学習費は毎年ほぼ一定に出ていく一方、大学は入学時にまとまった支出があります。国立で入学料282,000円と初年度授業料535,800円、私立(学部平均)で入学料240,365円と初年度の授業料・施設設備費1,140,619円です。また私立中学・私立高校に進む場合は、その入学年に入学金等が集中します。令和5年度の平均で私立中学校の入学金等は119,829円、私立高校(全日制)は80,290円でした。家計の負担が重なる年を先に把握しておくことが実務的です。

出典