税金(教育費)

保育料は9月に切り替わる ― ふるさと納税では下がらない

保育料は、4月に年度が変わっても変わりません。変わるのは9月です。 政令にそう書かれています。

特定教育・保育のあった月の属する年度(特定教育・保育のあった月が四月から八月までの場合にあっては、前年度)分の地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による市町村民税 子ども・子育て支援法施行令第4条第2項第2号

4月から8月までは前年度分、9月からは当年度分です。保育料の年度は、9月に始まって翌年8月に終わります。

そして同じ号の少し後ろ、所得割の額に付いた括弧書きが、こう続きます。

(同法附則第五条の四第五項その他の内閣府令で定める規定による控除をされるべき金額があるときは、当該金額を加算した額とする。) 同号

ここで名指しされている地方税法附則第5条の4第5項は、住民税の住宅ローン控除です。 そして「その他の内閣府令で定める規定」を受けた子ども・子育て支援法施行規則第21条には、ふるさと納税が3か所に分けて並んでいます。

結論

保育料を決めているのは、所得そのものではありません。市町村民税の所得割額です。 だから、所得税だけが減っても保育料は動きません。

そして所得割額には、2種類の減り方があります。課税所得が小さくなって減る場合と、計算し終えた税額から直接引かれて減る場合です。保育料の判定では、後者だけが元に戻されます。 税額控除は加算して戻し、所得控除は戻さない、という線が引かれています。

したがって、ふるさと納税と住宅ローン控除では保育料は下がりません。ふるさと納税は確定申告でもワンストップ特例でも結果が同じです。どちらの経路も列挙されているからです。

逆に、iDeCoや医療費控除のような所得控除は判定額を小さくします。ただし階層の幅が広いので、境目の近くにいない世帯では、控除を積んでも階層は動きません。

そして切り替わりは9月です。4月に年度が変わっても保育料は変わらず、9月に変わります。 昇給や共働きへの切り替えが保育料に効いてくるのは、その年ではなく翌年の9月からです。

計算の前提

項目置いた条件
対象満3歳未満保育認定子どもの利用者負担額(満3歳以上は施行令第4条第1項で零。ただし3歳になった後の最初の3月31日までは「特定満三歳以上保育認定子ども」として満3歳未満の側で扱う)
金額の出どころ子ども・子育て支援法施行令第4条第2項の国の基準額。同項の柱書は、各号の額と「特定教育・保育に係る標準的な費用の額として内閣総理大臣が定める基準により算定した額」のいずれか低い額としている。実際の額は「政令で定める額を限度として市町村が定める額」(法第27条第3項第2号)
保育必要量保育標準時間(短時間認定の額も表に併記する)
住民税の年度判定額は令和9年度分の市町村民税(令和8年中の所得)で計算した。これが効くのは2027年9月から2028年8月までの保育料
市町村民税の所得割課税総所得金額 × 6% − 調整控除の市町村民税分(調整控除は3%)。指定都市でも施行規則第21条の2のみなし規定により6%・3%で計算する
モデル世帯(片働き)給与収入は夫のみ。控除対象配偶者1人、16歳未満の子2人(年少扶養なので扶養控除は無い)。社会保険料は給与収入の15%
モデル世帯(共働き)妻の給与収入を3,000,000円に固定し、夫の給与収入を動かす。配偶者控除は無し
住宅ローン控除のモデル居住年は令和8年以後を置いた。居住年が平成28年から令和7年までの場合は、控除限度額の基礎に「所得税の基礎控除の額から48万円を控除した額」が加算される(地方税法附則第5条の4第5項)ので、同じ年収でも控除限度額は大きくなる
含めないもの生命保険料控除・地震保険料控除・医療費控除(別に触れる場合を除く)

数字はすべてスクリプトで計算しました(scripts/calc-hoikuryo-kirikae.mjs)。税額の計算は、ふるさと納税シミュレーターと共通の src/lib/tax.js を使っています。和暦と西暦の対応は、令和7年=2025年、令和8年=2026年、令和9年=2027年、令和10年=2028年です。

① 保育料の階層は、国の基準では8つの号に分かれている

施行令第4条第2項が定める国の基準額です。号の番号が降順に並ぶのは、各号が「次号から第八号までに掲げる者を除く」と書いているためで、当てはまる号のうち最も後ろの号が優先されます。

号市町村民税所得割合算額標準時間短時間年額(標準時間)
第八号市町村民税世帯非課税0円0円0円
第七号48,600円未満19,500円19,300円234,000円
第六号77,101円未満(要保護者等)9,000円9,000円108,000円
第五号48,600円以上 97,000円未満30,000円29,600円360,000円
第四号97,000円以上 169,000円未満44,500円43,900円534,000円
第三号169,000円以上 301,000円未満61,000円60,100円732,000円
第二号301,000円以上 397,000円未満80,000円78,800円960,000円
第一号397,000円以上104,000円102,400円1,248,000円

第七号にはただし書が付いています。 「ただし、特定教育・保育給付認定保護者にあっては、九千円とする」とあるので、要保護者等の世帯は48,600円未満でも9,000円です。第六号(77,101円未満で9,000円)と合わせると、要保護者等は77,101円未満なら一律9,000円になります。

この「合算額」は世帯の合計です。 施行令は「教育・保育給付認定保護者及び当該教育・保育給付認定保護者と同一の世帯に属する者について……所得割の額……を合算した額」と書いています。共働きなら2人分を足します。

ただし、退職金にかかる住民税は入りません。 施行令が「同法第三百二十八条の規定によって課する所得割を除く」と書いているためです。地方税法第328条は退職所得の分離課税を定めた規定で、退職した年の保育料がこれで跳ね上がることはありません。

351,000年収300万540,000年収400万801,000年収500万1,098,000年収700万1,440,000年収1,000万1,872,000年収1,200万
年収300万年収400万年収500万年収700万年収1,000万年収1,200万
1人目234,000360,000534,000732,000960,0001,248,000
2人目(50%)117,000180,000267,000366,000480,000624,000
合計351,000540,000801,0001,098,0001,440,0001,872,000

高さは階段状に増えます。年収500万と年収700万のあいだにある境目は、所得割額169,000円の1本だけです。その1本を越えるかどうかで、2人分の年額が801,000円から1,098,000円へ297,000円ふえます。棒の高さが年収に比例していないのは、階層が7段しかないからです。

国の基準額で計算した年間の利用者負担額。片働きモデル(控除対象配偶者1人・16歳未満の子2人・社会保険料は給与収入の15%)で、満3歳未満の子を2人同時に預けた場合。2人目は施行令第13条により50%。

階段の段差が大きいことが、この制度のいちばん効くところです。 年収500万円と年収700万円のモデルでは、2人分の年額が801,000円と1,098,000円で、差は297,000円です。境目をまたぐかどうかで、この額が決まります。

② 9月に切り替わる ― 4月ではない

施行令第4条第2項第2号の括弧書きをもう一度置きます。

特定教育・保育のあった月の属する年度(特定教育・保育のあった月が四月から八月までの場合にあっては、前年度)分

個人住民税は前年の所得で計算されます。これを組み合わせると、こうなります。

保育料の期間使う市町村民税その住民税が見ている所得
2026年4月〜8月令和7年度分令和6年(2024年)中の所得
2026年9月〜2027年8月令和8年度分令和7年(2025年)中の所得
2027年9月〜2028年8月令和9年度分令和8年(2026年)中の所得

いま払っている保育料が見ているのは、2025年の所得です。 そして2026年に稼いだ分が効いてくるのは、2027年9月からです。2026年1月に受け取った給与で言えば、20か月後です。

住民税そのものが6月に切り替わるのに、保育料は9月に切り替わります。 3か月のずれがある理由は、施行令にも内閣府令にも書かれていません。書かれているのは「四月から八月までの場合にあっては、前年度」という結果だけです。 住民税の仕組みのほうは「住民税は6月に切り替わる」で扱っています。

育休に入った年と、復職した年のずれ

上の表をそのまま当てはめると、こうなります。2026年中ずっと育休で給与が少なければ、その年の所得で計算される令和9年度分の住民税が小さくなり、効いてくるのは2027年9月からの保育料です。2027年4月に復職して預け始めた人なら、最初の5か月(4月から8月まで)は育休前の所得で計算された令和8年度分で判定され、9月に育休中の所得へ切り替わります。

復職した年の給与が効いてくるのは、その翌年の9月からです。 「いまの収入と保育料が合っていない」と感じるのは、仕組みのとおりです。

③ 加算して戻される控除は、9つ列挙されている

判定額の括弧書きは「附則第五条の四第五項その他の内閣府令で定める規定」でした。その内閣府令が、子ども・子育て支援法施行規則第21条です。

令第四条第二項第二号の内閣府令で定める規定は、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百十四条の七、第三百十四条の八及び第三百十四条の九並びに附則第五条第三項、附則第五条の四第五項、附則第五条の五第二項、附則第七条の二第四項及び第五項、附則第七条の三第二項並びに附則第四十五条とする。 子ども・子育て支援法施行規則第21条

条文番号だけが並んでいて中身が分かりません。地方税法で1つずつ引き当てると、こうなります。

施行規則第21条が挙げる規定地方税法の見出し何の控除か
第314条の7寄附金税額控除ふるさと納税(確定申告した場合)ほかの寄附金
第314条の8外国税額控除外国で課された所得税等
第314条の9配当割額又は株式等譲渡所得割額の控除特定口座の源泉徴収分を申告した場合
附則第5条第3項個人の道府県民税及び市町村民税の配当控除配当控除
附則第5条の4第5項個人の道府県民税及び市町村民税の住宅借入金等特別税額控除住宅ローン控除の住民税分
附則第5条の5第2項寄附金税額控除における特例控除額の特例ふるさと納税の特例控除額の読替
附則第7条の2第4項・第5項(見出しなし。申告特例控除額の規定)ふるさと納税のワンストップ特例
附則第7条の3第2項(見出しなし。前条の割合の読替)同上の読替
附則第45条東日本大震災に係る住宅借入金等特別税額控除の適用期間等の特例震災特例の住宅ローン控除

9つはいずれも、所得割の額から直接引く税額控除か、その読替の規定です。 所得控除はひとつも入っていません。

そして、ふるさと納税が3か所に分かれて挙げられています。 確定申告をしたときの第314条の7、ワンストップ特例を使ったときの附則第7条の2第4項・第5項、そして特例控除額の読替である附則第5条の5第2項と附則第7条の3第2項です。どの経路で控除を受けても、判定額には戻ります。

④ ふるさと納税で判定額はいくら減るのか、そして戻されるのか

片働きモデルで、限度額まで寄附した場合に市町村民税から引かれる額を出します。

市町村民税の寄附金税額控除は2つの部分からできています。基本分は「(寄附金の合計額−2,000円)× 6%」で、地方税法第314条の7第1項が定めています。特例分は同条第11項で、所得税の税率に応じた割合を掛けた額の5分の3(残りの5分の2は道府県民税)で、市町村民税の所得割額の20%が上限です。

年収限度額市町村民税の控除額所得割額控除後
4,000,000円33,000円17,650円81,000円63,350円
6,000,000円69,000円36,095円160,500円124,405円
8,000,000円120,000円56,342円246,900円190,558円
10,000,000円167,000円78,784円345,900円267,116円

保育料の判定では、この「控除後」ではなく「所得割額」を使います。 控除額は加算して戻されるからです。

では、戻されなかったとしたらどうなっていたか。 4つのうち階層が動いたのは1つだけでした。

年収階層(正しい判定)控除後の額で判定したら年額の差
4,000,000円30,000円30,000円0円
6,000,000円44,500円44,500円0円
8,000,000円61,000円61,000円0円
10,000,000円80,000円61,000円228,000円

低い年収帯では、控除額が階層の幅に届きません。 年収600万円のモデルでは控除額が36,095円で、97,000円から169,000円までの段の幅72,000円の半分です。足し戻しの規定が無くても階層は動きませんでした。

効いているのは年収1,000万円のモデルです。 控除額78,784円が301,000円という境目をまたぐので、足し戻しが無ければ年228,000円下がっていました。この規定は、寄附できる額が大きい世帯に対して働いています。

⑤ 住宅ローン控除のほうが、階層をまたぎやすい

住民税の住宅ローン控除は、所得税から引ききれなかった額を住民税の所得割から引く仕組みです。市町村民税分は5分の3で、控除限度額は所得税の課税総所得金額等の3%(上限58,500円)です。道府県民税分が5分の2・2%(上限39,000円)で、合わせて97,500円になります。

ふるさと納税と違い、金額が年収に比例しません。 課税総所得金額が195万円に達すれば上限に張り付くので(58,500円 ÷ 3% = 195万円ちょうどで上限)、年収が低めの世帯でも58,500円まで効きます。

年収課税総所得金額市町村分の控除限度額所得割額控除後階層(正しい判定)控除後の額で判定したら年額の差
4,000,000円740,000円22,200円81,000円58,800円30,000円30,000円0円
5,000,000円1,390,000円41,700円121,500円79,800円44,500円30,000円174,000円
6,000,000円2,040,000円58,500円160,500円102,000円44,500円44,500円0円
7,000,000円3,100,000円58,500円201,900円143,400円61,000円44,500円198,000円
8,000,000円3,850,000円58,500円246,900円188,400円61,000円61,000円0円

年収500万円と年収700万円のモデルで、階層が1つ動く計算になりました。 年174,000円と年198,000円です。足し戻しの規定が無ければ、住宅ローンのある世帯だけ保育料が1段安くなっていました。

この表は居住年が令和8年以後の場合です。 地方税法附則第5条の4第5項は、控除限度額を「所得税の課税総所得金額等」の3%としつつ、居住年が平成28年から令和7年までの各年である場合には、そこに「所得税の基礎控除の額から48万円を控除して得た額」を加算すると定めています。令和8年分の基礎控除は合計所得489万円以下で104万円ですから、加算は56万円です。これを入れて計算し直すと、年収400万円のモデルの控除限度額は22,200円ではなく39,000円になり、年収400万円でも階層が1つ動く(30,000円→19,500円。年126,000円)計算になります。居住年によって、控除限度額の基礎が違います。

住宅ローン控除は「所得税で引ききれなかった額」なので、年ごとに変わります。 繰り上げ返済をすれば残高が減って控除額も減ります。判定額が控除前で固定されているおかげで、保育料のほうは住宅ローンの返し方に左右されません。

⑥ 所得控除は効く ― ただし境目の近くだけ

加算して戻す列挙に入っていないもの、つまり所得控除は、判定額を本当に下げます。市町村民税の所得割の標準税率は6%なので、所得控除が1万円増えると所得割額は600円下がります。

iDeCoを例にします。確定拠出年金の拠出限度額は2026年12月1日に見直され、第2号加入者(国民年金第2号被保険者である加入者。会社員や公務員)の共通拠出限度額が月6.2万円になります。施行期日は政令で指定済みですが、厚生労働省のページの見出しはいまも「施行予定」です。ここでは年744,000円(6.2万円×12か月)を拠出した場合を置きます。

2つ断っておきます。 6.2万円は企業年金等と共通の限度額なので、企業型確定拠出年金や確定給付企業年金のある人は、その掛金相当額を引いた残りしかiDeCoに回せません。そして見直しが2026年12月1日なので、年744,000円をまるまる拠出できるのは2027年(令和9年)分からです。 その所得が保育料に効くのは令和10年度分の住民税、つまり2028年9月からの保育料です。

年収所得割額(拠出なし)拠出あり減少額階層
3,000,000円45,600円1,980円43,620円変わらない(19,500円)
4,000,000円81,000円36,360円44,640円30,000円 → 19,500円
5,000,000円121,500円75,360円46,140円44,500円 → 30,000円
6,000,000円160,500円114,360円46,140円変わらない(44,500円)
7,000,000円201,900円157,260円44,640円61,000円 → 44,500円
8,000,000円246,900円202,260円44,640円変わらない(61,000円)

同じ744,000円を拠出しても、階層が動く年収と動かない年収が交互に並びます。 境目との距離だけで決まるためです。年収400万円では年126,000円、年収500万円では年174,000円、年収700万円では年198,000円の差になりますが、年収300万円・600万円・800万円では1円も変わりません。

減少額が44,640円でそろわないのは、調整控除の計算式が切り替わるためです。 地方税法第314条の6は、合計課税所得金額が200万円を超える場合の調整控除を「人的控除の差額から(合計課税所得金額−200万円)を引いた額(5万円を下回る場合は5万円)の3%」としています。拠出によって課税所得が200万円を下回ると式が変わるので、年収500万円と600万円のモデルでは46,140円になりました。

年収300万円だけ逆に小さい(43,620円)のも、同じ条が理由です。 200万円以下の場合の調整控除は「人的控除の差額と合計課税所得金額のうち少ないほうの3%」なので、拠出で課税所得が人的控除の差額10万円を下回ると、調整控除の市町村民税分が3,000円から1,980円へ縮みます(道府県民税分と合わせた全体では5,000円から3,300円)。所得割の減り44,640円から、調整控除の減り1,020円が差し引かれて43,620円です。

階層を1つ下げるのに必要な所得控除の額を出すと、こうなります。

境目階層の幅所得控除に直すと
48,600円 〜 97,000円48,400円806,667円
97,000円 〜 169,000円72,000円1,200,000円
169,000円 〜 301,000円132,000円2,200,000円
301,000円 〜 397,000円96,000円1,600,000円

最も広い段は、所得控除220万円分の幅があります。 段の中央にいる世帯が、控除を積んで階層を動かすことは現実的ではありません。自分が境目からどれだけ離れているかを先に確かめるほうが早いです。

⑦ 階層の境目になる年収 ― 共働きのほうが有利に出る

モデル世帯で、各境目にちょうど届く世帯年収を出しました。

市町村民税所得割合算額片働き(夫のみ)共働き(妻300万円+夫)差
48,600円3,091,000円妻だけで66,900円なので超えている—
97,000円4,411,000円4,997,000円586,000円
169,000円6,219,000円6,996,000円777,000円
301,000円9,120,000円10,276,000円1,156,000円
397,000円11,003,000円12,303,000円1,300,000円

共働きのほうが、世帯年収で見ると上の階層に入りにくい計算になりました。 判定額は世帯で合算するので一見不利に見えますが、給与所得控除と基礎控除が2人分使えることが、配偶者控除を失う不利を上回ります。

住民税の所得割は一律の税率なので、累進は関係ありません。 世帯年収700万円で内訳を見ると、給与所得控除は片働きが1,800,000円、共働きが980,000円+1,240,000円で2,220,000円、住民税の基礎控除は430,000円と860,000円です。合わせて850,000円ぶん控除が多く、そこから配偶者控除330,000円を引いた520,000円が差の正体です。6%を掛けると31,200円で、調整控除の差1,500円を足した32,700円が、上の表の差と一致します。

世帯年収をそろえて並べると、こうなります。

世帯年収片働き共働き(妻300万円+夫)差
6,000,000円160,500円(44,500円)133,800円(44,500円)26,700円
7,000,000円201,900円(61,000円)169,200円(61,000円)32,700円
9,000,000円294,900円(61,000円)247,200円(61,000円)47,700円

ただし、どの行も階層は同じです。 判定額には26,700円から47,700円の差が出ているのに、保育料は変わりません。階層が7段しかないので、差のほとんどが段の中で吸収されます。

逆に言えば、境目をまたぐ位置では小さな差が大きく効きます。 世帯年収700万円の片働きモデルは201,900円で、169,000円の境目を32,900円超えています。妻が働いて同じ世帯年収になっていれば169,200円で、境目のわずか200円上です。あと201円低ければ第四号(44,500円)に入り、年間198,000円安くなります。

一方、第八号の「市町村民税世帯非課税」だけは別の扱いです。 所得割がゼロであるだけでは足りず、世帯の全員が市町村民税を課されない必要があります(施行令第4条第2項第8号イ)。所得割がゼロでも均等割が課されていれば、非課税世帯には当たりません。 なお同号ロは、生活保護法の被保護者である保護者と、小規模住居型児童養育事業を行う者・里親である保護者も零としています(施行令第15条の3第2項第2号・第3号)。

⑧ 令和8年の減税は、保育料を下げない

令和8年度税制改正で所得税の基礎控除が上がりました。しかし保育料の判定額は動きません。

大綱の(国 税)は基礎控除について「合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額を4万円引き上げる」として62万円とし、別に特例で合計所得金額489万円以下には42万円を加算して104万円にしています。

一方、同じ「1 物価上昇局面における基礎控除等の対応」の(地方税)には、項目が3つしかありません。

(地方税) (1)給与所得控除 ① 給与所得控除について、65 万円の最低保障額を69 万円に引き上げる。② 令和9年度分及び令和10 年度分の個人住民税に係る給与所得控除の最低保障額について、①に加え、5万円引き上げる。 (2)所得税における(1)から(5)までの見直しに伴う所要の措置 (3)ひとり親控除 財務省「令和8年度税制改正の大綱」4〜5ページ

基礎控除の引上げは、(地方税)には入っていません。 大綱の「一 個人所得課税」は2ページから34ページまであり、(地方税)の塊はこのほかに住宅・土地税制(16ページ)・租税特別措置等(27ページ)・その他(32ページ)にもありますが、基礎控除の語が出てくるのは(国 税)の2〜3ページだけです。個人住民税の基礎控除は43万円のままです。保育料を決めるのは市町村民税の所得割額なので、所得税だけが減っても階層は1段も動きません。

ただし給与所得控除のほうは住民税にもあります。 令和8年度分の最低保障額65万円が、令和9年度分からは69万円+5万円の74万円になります。差は9万円です。

給与収入給与所得(令和8年度分)令和9年度分差市町村民税の所得割の減少
1,200,000円550,000円460,000円90,000円5,400円
1,900,000円1,250,000円1,160,000円90,000円5,400円
2,100,000円1,390,000円1,360,000円30,000円1,800円
2,200,000円1,460,000円1,460,000円0円0円
5,000,000円3,560,000円3,560,000円0円0円

給与収入が220万円以上になると、差はゼロになります。 国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」の給与所得控除の表は、改正後「令和8・9年分」の欄で190万円以下の行と190万円超220万円以下の行が縦に結合されていて、その値が74万円です。つまり改正後の控除額が74万円なのは220万円以下までですが、220万円ちょうどでは改正前の式(収入×30%+8万円)も74万円になるので、差そのものは消えます。219万円ではまだ3,000円の差が残るので、境目は「220万円を超えたら」ではなく「220万円に届いたら」です。 この改正で保育料の判定額が動くのは、パート収入の世帯に限られます。

⑨ 政令指定都市でも不利にならない ― みなし規定がある

市町村民税の所得割の標準税率は6%ですが、政令指定都市では8%です。 地方税法第314条の3が「百分の六(所得割の納税義務者が……指定都市の区域内に住所を有する場合には、百分の八)」と書いています。税源移譲の調整で、道府県民税が4%から2%に下がり、その分が市町村民税に移っているためです。

ということは、指定都市に住むと同じ年収でも所得割額が3分の4になり、上の階層に入ってしまうのではないか。 そう思って施行規則を読み進めると、次の条がありました。

市町村民税所得割合算額を算定する場合には、教育・保育給付認定保護者又は当該教育・保育給付認定保護者と同一の世帯に属する者が指定都市の区域内に住所を有する者であるときは、これらの者を指定都市以外の市町村の区域内に住所を有する者とみなして、市町村民税所得割合算額を算定するものとする。 子ども・子育て支援法施行規則第21条の2

みなし規定が置かれていました。 指定都市に住んでいても、6%で計算し直した額で判定します。調整控除も指定都市では4%ですが、同じみなし規定により3%で計算されます。

実務上の注意はここです。 住民税の納税通知書に書かれている市民税の所得割額は、指定都市では8%で計算された実際の税額です。その額をそのまま階層表に当てはめると、1段上に出ます。 指定都市に住んでいる人は、通知書の市民税と道府県民税を足した所得割額の6割を見るほうが近い値になります。

⑩ 3歳以上は0円。ただし給食費は別で、線が2本ある

施行令第4条第1項は、満3歳以上の教育・保育給付認定子どもについて「法第二十七条第三項第二号の政令で定める額は、零とする」と定めています。こども家庭庁も「3歳から5歳までの全てのこどもたちの利用料が無料」「0歳から2歳までのこどもたちについては、住民税非課税世帯を対象として利用料が無料」と説明しています。

ただし「3歳から」は誕生日からではありません。 同項第2号の括弧書きは「特定満三歳以上保育認定子ども」を除いていて、これは「満三歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある教育・保育給付認定子ども」のことです。しかも第2項の柱書は、満3歳未満保育認定子どもにこの子を含むと書いています。5月に3歳になった子の保育料が0円になるのは、翌年の4月からです。 こども家庭庁の説明が「3歳から5歳児クラス」という書き方をしているのは、このためです。

保育料が0円になっても、食事の費用は残ります。 根拠は「特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準」第13条第4項第3号で、施設は食事の提供に要する費用の支払を受けることができます。ただし、同号は3つを括弧書きで除いています。

除かれるもの対象線
イ(1)満3歳以上の教育認定子ども(幼稚園など)の副食の提供市町村民税所得割合算額 77,101円未満
イ(2)満3歳以上の保育認定子ども(保育所など。特定満三歳以上保育認定子どもを除く)の副食の提供57,700円未満(要保護者等は77,101円未満)
ロ(1)教育認定子どものうち、負担額算定基準子ども又は小学校第3学年修了前子どもで、最年長者と2番目の年長者を除いた子の副食の提供所得の要件なし
ロ(2)保育認定子どものうち、負担額算定基準子どもで、最年長者と2番目の年長者を除いた子の副食の提供所得の要件なし
ハ満3歳未満保育認定子どもに対する食事の提供所得の要件なし

ロが働くのは、どちらも「負担額算定基準子ども又は小学校第3学年修了前子どもが同一の世帯に三人以上いる場合」です。 ただし、その中で誰が免除されるかは(1)と(2)で違います。

ここには読み落としやすい点が3つあります。

1つ目は「副食」とだけ書かれていることです。 イとロで除かれるのは副食費だけで、主食費は対象外です。ご飯やパンの分は、免除の対象になった世帯でも徴収されます。

2つ目は、線が認定区分で違うことです。 幼稚園などの教育認定子どもは77,101円未満、保育所などの満3歳以上保育認定子どもは57,700円未満です。同じ3歳児でも、どちらに通っているかで19,401円ぶん線の位置が違います。

3つ目は、ロの「3人目」の数え方も認定区分で違うことです。 ロ(1)の教育認定子どもは「負担額算定基準子ども又は小学校第三学年修了前子ども(そのうち最年長者及び二番目の年長者である者を除く。)である者」が対象ですが、ロ(2)の保育認定子どもは「負担額算定基準子ども(そのうち最年長者及び二番目の年長者である者を除く。)である者」だけです。保育認定の側は、小学生を数に入れたうえでの3番目ではありません。 小学2年生・小学1年生・3歳児という世帯なら、3歳児が幼稚園(教育認定)ならロ(1)で副食費が免除されますが、保育所(保育認定)なら負担額算定基準子どもが3歳児1人しかいないのでロ(2)に当たらず、免除されません。 「3人目から無料」という言い方を、保育所にそのまま当てはめないでください。

そしてハは、0歳から2歳の子については施設が食事の費用を別に取れないと定めています。保育料に含まれているためです。3歳の誕生日ではなく、3歳になった後の最初の4月から、給食費が別建てで出てきます。

⑪ きょうだいの数え方には、規定が2つある

2人目半額・3人目以降無償は広く知られていますが、数え方の規定が2本あります。

施行令第13条は、負担額算定基準子どもが同一の世帯に2人以上いる場合、2番目の年長者である満3歳未満保育認定子どもを50%、3番目以降を零とします。この「負担額算定基準子ども」は第13条第2項が5つ挙げています。①認定こども園・幼稚園・特別支援学校の幼稚部・保育所に在籍する子、②地域型保育または特例保育を受ける子、③施行令第1条に規定する施設を利用する子、④児童発達支援または居宅訪問型児童発達支援を受ける子、⑤児童心理治療施設に通う子の5つで、いずれも小学校就学前子どもに限られます。小学生の兄姉は数に入りません。 逆に、保育所などに通っていなくても④⑤に当たれば数に入ります。

施行令第14条は、市町村民税所得割合算額が57,700円未満(要保護者等は77,101円未満)のときだけ適用され、在籍を問わず特定被監護者等で数えます。条文は「教育・保育給付認定保護者に監護される者その他これに準ずる者として内閣府令で定める者であって、教育・保育給付認定保護者と生計を一にするもの」と定義しています。この場合は小学生以上の兄姉も数に入ります。 そして第14条第1号には括弧書きがあり、要保護者等(特定教育・保育給付認定保護者)の世帯では、2番目の子は50%ではなく零です。

つまり、所得が低い世帯では多子のカウントが広くなる構造です。 57,700円という線は、副食費の免除(運営基準第13条第4項第3号イ(2)。⑩の表)と同じ金額です。施行令第13条とは別の法令の第13条です。

国の基準額で、2人同時に預けた場合の年額を出します。

年収(片働き)所得割合算額1人目2人目月額合計年額合計
4,000,000円81,000円30,000円15,000円45,000円540,000円
6,000,000円160,500円44,500円22,250円66,750円801,000円

なお、多子のカウントは市町村が独自に広げていることが多い部分です。 国の基準は上限なので、市町村は自分の条例でより有利な扱いを置けます。

あなたの数字で確かめる手順

① 住民税の納税通知書を出す

6月ごろに届く「市町村民税・道府県民税 特別徴収税額の決定通知書」(給与から引かれている人)または「納税通知書」を見ます。見るのは市町村民税(市民税・特別区民税)の「所得割額」です。 均等割は使いません。

② 税額控除の前の額に戻す

通知書の所得割額から、ふるさと納税の寄附金税額控除と住宅ローン控除が引かれていれば、それを足し戻します。 通知書には「税額控除額」の欄があります。戻すのは市町村民税側の額だけで、道府県民税の欄の額は足しません。

③ 世帯で合算する

配偶者も住民税を払っているなら、同じ手順で出した額を足します。同一の世帯に属する者について合算するのが施行令の定めです。

④ 指定都市なら6%に直す

政令指定都市に住んでいる場合、通知書の市民税の所得割は8%で計算されています。施行規則第21条の2により判定は6%なので、市民税と道府県民税の所得割を合計して0.6を掛けた額のほうが、判定額に近くなります。 正確な額は市町村が計算するので、境目に近いときは窓口で確認してください。

⑤ 市町村の保育料表に当てはめる

国の基準額ではなく、お住まいの市町村の「利用者負担額表」を使います。 階層の数も金額も市町村ごとに違います。検索するなら「(市区町村名)利用者負担額」が確実です。

⑥ 9月で表が切り替わることを確認する

4月から8月までは前年度分、9月からは当年度分です。年度の途中で額が変わるのは誤りではありません。

まとめ

  • 保育料を決めるのは所得ではなく、市町村民税の所得割額。 階層は国の基準で7段(非課税を含む。ほかに要保護者等だけの第六号・第七号ただし書がある)。48,600円・97,000円・169,000円・301,000円・397,000円が境目で、満3歳未満の標準時間なら19,500円から104,000円まで
  • 切り替わるのは9月。 施行令第4条第2項第2号が「四月から八月までの場合にあっては、前年度」と定めている。2026年9月から2027年8月までの保育料は令和8年度分の市町村民税、つまり2025年中の所得で決まっている
  • ふるさと納税と住宅ローン控除では下がらない。 施行規則第21条が9つの税額控除を挙げ、控除された金額を加算して戻す。ふるさと納税は確定申告・ワンストップ特例・特例控除額の読替の3経路すべてが挙がっている
  • 足し戻しが無かった場合の差は大きい。 片働きモデルでは、ふるさと納税を限度額まで使った年収1,000万円で年228,000円、住宅ローン控除が上限まで効いた年収500万円で年174,000円、年収700万円で年198,000円
  • 所得控除は効く。 所得控除1万円で所得割額は600円下がる。ただし階層の幅は48,400円から132,000円あり、所得控除に直すと806,667円から2,200,000円。境目の近くにいる世帯だけが動く
  • 令和8年の減税では動かない。 所得税の基礎控除は62万円・104万円に上がったが、大綱の(地方税)に基礎控除の項目はなく、住民税は43万円のまま。住民税にもある給与所得控除の引上げ(65万円→74万円)が効くのは、給与収入が220万円未満の世帯だけで(220万円ちょうどでは改正前後の控除額が一致する)、所得割額の減少は最大5,400円
  • 指定都市でも不利にならない。 所得割の税率は8%だが、施行規則第21条の2が指定都市以外に住所があるものとみなして算定すると定めている。ただし納税通知書の額をそのまま表に当てはめると1段上に出る
  • 3歳以上は0円だが給食費は別。 0円になるのは3歳になった後の最初の4月から(それまでは「特定満三歳以上保育認定子ども」)。免除されるのは副食費だけで主食費は残る。線は教育認定子どもが77,101円未満、満3歳以上保育認定子どもが57,700円未満。「3人目から無料」の数え方も違い、保育認定の側は小学生の兄姉を数に入れない。満3歳未満は食事の費用を別に取れない
  • 実額は市町村が決める。 法第27条第3項第2号は「政令で定める額を限度として……市町村が定める額」。国の基準は上限で、多くの市町村はこれより低い

よくある質問

保育料はいつの所得で決まるのですか。

直接決めているのは所得ではなく、市町村民税の所得割額です。子ども・子育て支援法施行令第4条第2項第2号は「特定教育・保育のあった月の属する年度(特定教育・保育のあった月が四月から八月までの場合にあっては、前年度)分」の市町村民税の所得割額を合算すると定めています。つまり4月から8月までは前年度分、9月から翌年3月までは当年度分を使います。保育料が切り替わるのは年度初めの4月ではなく9月です。個人住民税は前年の所得で計算されるので、2026年9月から2027年8月までの保育料は令和8年度分の市町村民税、すなわち令和7年中の所得で決まっています。いま稼いでいる令和8年中の所得が効いてくるのは、2027年9月からです。なお、6月に切り替わる住民税と9月に切り替わる保育料のあいだに3か月のずれがある理由は、施行令にも内閣府令にも書かれていません。

ふるさと納税をすると保育料は下がりますか。

下がりません。判定に使う「市町村民税所得割合算額」は、子ども・子育て支援法施行令第4条第2項第2号の括弧書きで「内閣府令で定める規定による控除をされるべき金額があるときは、当該金額を加算した額とする」とされています。そして子ども・子育て支援法施行規則第21条が、その内閣府令で定める規定として地方税法第314条の7(寄附金税額控除)、第314条の8(外国税額控除)、第314条の9(配当割額又は株式等譲渡所得割額の控除)、附則第5条第3項(配当控除)、附則第5条の4第5項(住宅借入金等特別税額控除)、附則第5条の5第2項(寄附金税額控除における特例控除額の特例)、附則第7条の2第4項及び第5項(ワンストップ特例の申告特例控除)、附則第7条の3第2項、附則第45条の9つを挙げています。ふるさと納税については、確定申告をした場合の寄附金税額控除、ワンストップ特例の申告特例控除、特例控除額の特例という3つの経路がすべて挙がっているので、どの方法で申告しても判定額は元に戻されます。住宅ローン控除も同じです。

iDeCoや医療費控除なら保育料は下がるのですか。

下がりうる、というのが答えです。加算して戻す対象として挙がっているのは、すべて所得割の額から直接差し引く税額控除です。iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)、医療費控除、生命保険料控除、社会保険料控除、扶養控除のような所得控除は挙がっていません。所得控除は課税所得そのものを小さくするので、市町村民税の所得割額が下がり、判定に使う金額も下がります。市町村民税の所得割の標準税率は6%(地方税法第314条の3)ですから、所得控除が1万円増えると所得割額は600円下がります。ただし階層の幅は広く、97,000円から169,000円までの段をまたぐには72,000円、169,000円から301,000円までなら132,000円の所得割額を動かす必要があります。所得控除に直すとそれぞれ1,200,000円、2,200,000円です。したがって階層が実際に動くのは、境目の近くにいる世帯だけです。

令和8年の減税で基礎控除が上がったのに、保育料が変わらないのはなぜですか。

引き上がったのが所得税の基礎控除だけだからです。令和8年度税制改正の大綱は、「一 個人所得課税」の「1 物価上昇局面における基礎控除等の対応」の(国 税)で基礎控除を62万円に引き上げ、合計所得金額489万円以下には42万円を加算して104万円としていますが、同じ項目の(地方税)は(1)給与所得控除、(2)所得税における見直しに伴う所要の措置、(3)ひとり親控除の3つだけで、基礎控除の引上げは入っていません。大綱の「一 個人所得課税」で基礎控除の語が出てくるのは(国 税)の2〜3ページだけです。個人住民税の基礎控除は43万円のままです。保育料の判定に使うのは市町村民税の所得割額なので、所得税だけが減っても判定額は動きません。ただし給与所得控除は住民税にもあり、大綱の(地方税)(1)は最低保障額を69万円に引き上げ、令和9年度分及び令和10年度分についてさらに5万円引き上げるとしています。令和8年度分の65万円から令和9年度分の74万円へ9万円増えるので、給与収入が190万円以下の人は市町村民税の所得割額が最大5,400円下がります。最低保障額74万円が効くのは給与収入220万円以下までで、220万円ちょうどでは改正前の式(収入×30%+8万円)も74万円になるため、**給与収入が220万円以上になると効果はゼロ**です。219万円ではまだ3,000円の差が残ります。

3歳以上の保育料は無料だと聞きました。給食費も無料ですか。

保育料は0円ですが、給食費は別です。子ども・子育て支援法施行令第4条第1項は、満3歳以上の教育・保育給付認定子どもに係る利用者負担額を零としています。ただし同項第2号の括弧書きは「特定満三歳以上保育認定子ども」を除いているので、**3歳の誕生日を迎えても、その後の最初の3月31日までは満3歳未満の側(第4条第2項)の保育料がかかります。** こども家庭庁も「3歳から5歳**児クラス**」という書き方をしていて、0歳から2歳児クラスまでは住民税非課税世帯が対象と説明しています。一方で食事の費用は、特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準第13条第4項第3号により実費徴収の対象です。ただし同号は3つの除外を置いています。満3歳以上で市町村民税所得割合算額が一定額未満の世帯の副食費、同一世帯に3人以上いる場合の3人目以降の副食費、そして満3歳未満保育認定子どもに対する食事の提供です。注意すべき点が3つあります。1つ目は、免除されるのは副食費だけで主食費は対象外であること。2つ目は、免除の線が認定区分で違うことです。幼稚園などの教育認定子どもは77,101円未満、保育所などの満3歳以上保育認定子どもは57,700円未満です。3つ目は、同号ロの「3人目以降」の数え方も認定区分で違うことです。ロ(1)の教育認定子どもは「負担額算定基準子ども又は小学校第三学年修了前子ども」のうち最年長者と2番目の年長者を除いた子が対象ですが、ロ(2)の保育認定子どもは「負担額算定基準子ども」のうち最年長者と2番目の年長者を除いた子だけです。つまり保育所に通う子については、小学生の兄姉を数に入れたうえでの3番目ではありません。小学2年生・小学1年生・3歳児という世帯なら、3歳児が幼稚園なら副食費が免除されますが、保育所なら免除されません。

政令指定都市に住んでいると、保育料の階層は不利になりませんか。

なりません。市町村民税の所得割の標準税率は通常6%ですが、政令指定都市では税源移譲の調整により8%です(地方税法第314条の3)。そのまま当てはめると同じ年収でも所得割額が3分の4になり、上の階層に入ってしまいます。これを防ぐため、子ども・子育て支援法施行規則第21条の2が「指定都市の区域内に住所を有する者であるときは、これらの者を指定都市以外の市町村の区域内に住所を有する者とみなして、市町村民税所得割合算額を算定するものとする」と定めています。つまり指定都市に住んでいても6%で計算した額に置き換えて判定します。調整控除も指定都市では4%ですが、同じみなし規定により3%で計算されます。なお、住民税の納税通知書に書かれている市民税の所得割額は8%で計算された実際の税額なので、指定都市に住んでいる人が通知書の額をそのまま階層表に当てはめると、答えを間違えます。

きょうだいが2人いると保育料はどうなりますか。

2人目は半額、3人目以降は0円になりますが、数え方の規定が2つあります。子ども・子育て支援法施行令第13条は、負担額算定基準子どもが同一の世帯に2人以上いる場合、2番目の年長者である満3歳未満保育認定子どもの額を50%に、3番目以降を零にすると定めています。ここでいう負担額算定基準子どもは第13条第2項が5つ挙げていて、①認定こども園・幼稚園・特別支援学校の幼稚部・保育所に在籍する子、②地域型保育または特例保育を受ける子、③施行令第1条に規定する施設を利用する子、④児童発達支援または居宅訪問型児童発達支援を受ける子、⑤児童心理治療施設に通う子です。いずれも小学校就学前子どもに限られるので、小学生の兄姉は数に入りません。逆に、保育所などに通っていなくても④⑤に当たれば数に入ります。もう1つが第14条で、市町村民税所得割合算額が57,700円未満(要保護者等は77,101円未満)のときは、在籍を問わず「教育・保育給付認定保護者に監護される者その他これに準ずる者であって生計を一にするもの」を特定被監護者等として数えます。この場合は小学生以上の兄姉も数に入ります。さらに第14条第1号の括弧書きにより、要保護者等(特定教育・保育給付認定保護者)の世帯では2番目の子も50%ではなく零になります。所得が低い世帯では多子のカウントが広くなる、という構造です。実際の数え方は市町村が独自に広げていることが多いので、自治体の条例と要綱を確認してください。

この記事の金額をそのまま自分の保育料として使えますか。

使えません。子ども・子育て支援法第27条第3項第2号は、利用者負担額を「政令で定める額を限度として当該教育・保育給付認定保護者の属する世帯の所得の状況その他の事情を勘案して市町村が定める額」としています。政令の額は上限であって、実際の保育料は市町村が条例などで定めます。多くの市町村は国の基準より細かい階層を置き、国の基準より低い額を設定しています。この記事の金額は、階層の境目がどこにあり、どの控除が判定額を動かすかを示すための国の基準額です。自分の保育料は、お住まいの市町村の保育料表(利用者負担額表)と住民税の納税通知書を突き合わせて確認してください。判定に使うのは所得ではなく市町村民税の所得割額であること、その額にはふるさと納税や住宅ローン控除の控除前の額を使うこと、という2点はどの市町村でも共通です。

出典

制度の内容は改正されることがあります。判断の際は必ず出典元の最新情報をご確認ください。