住宅ローン・金利(税金)

住宅ローン控除は2030年入居まで延びた ― 2028年からZEH水準が条件に

住宅ローン控除の期限が、令和12年12月31日まで5年延びました。 令和8年度税制改正によるもので、財務省の解説は「それぞれ適用期限が令和12年12月31日まで5年延長されるとともに」と書いています。国税庁のタックスアンサーNo.1211-1も、令和8年4月1日現在の法令等として「令和4年1月1日から令和12年12月31日までの間に自己の居住の用に供したとき」と書き換わっています。

ただし、同じ改正に次の一文があります。

令和8 年度税制改正においては、住宅ローン税額控除について、引き続き環境性能等が高い良質な住宅に対する支援措置の充実を図ることとしていますが、2050年カーボンニュートラルの実現や、2030年新築住宅でのZEH 水準の義務化を見据え、新築住宅については、令和10年入居分(2028年入居分)から原則としてZEH 水準省エネ住宅以上の省エネ性能を有することを要件化することとされました。

財務省「令和8年度 税制改正の解説」租税特別措置法等(所得税関係)の改正、230ページ。太字は引用者。

そして、国土交通省が令和8年8月28日に公表した「令和9年度国土交通省税制改正要望事項」(38ページ)には、「住宅ローン」も「住宅借入金」も一度も出てきません。 住宅関係の要望は、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置、登録免許税、空き家、買取再販、マンションの大規模修繕などです。住宅ローン控除の期限は、令和12年12月31日まであります。

結論

延長されたのは期限であって、中身は同じではありません。 同じ改正で、新築には性能の下限が設けられました。下限に届かない住宅は、期限を待たずに対象から外れます。

そして新築の一部は、区切りが「いつ入居したか」ではなく「いつ建築確認を受けたか」で決まるようになりました。 入居の予定だけを見ていると読み違えます。

中古は、逆に広がりました。 性能の下限は新築だけの話で、中古にはかかりません。それどころか、これまで一律だった枠が住宅の性能で分かれ、控除期間も延びました。

子育て世帯への上乗せは、性格が変わりました。 これまでは1年ごとに延長される時限の措置でしたが、今回は延長された期限と同じ年まで、まとめて置かれています。対象も新築だけでなく中古に広がりました。

ただし上乗せは、全員に効くものではありません。 上乗せは借入限度額を引き上げる措置なので、そもそも限度額に届いていない人には何も起きません。誰に効くのかは、住宅の性能区分と借入額の組み合わせで決まります。

計算の前提

項目置いた条件
金利年3.460%(住宅金融支援機構【フラット35】の2026年9月の「最も多い金利」。借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下)
返済方法元利均等・35年・ボーナス返済なし
借入額新築の例は3,500万円、中古の例は3,000万円(説明のための架空の例示)
取得対価借入額を下回らないものとする(下回ると対価が上限になる)
控除額年末残高と借入限度額の低い方 × 0.7%、100円未満切捨て(租税特別措置法41条)
世帯19歳未満の扶養親族がいる世帯=特例対象個人にあたるものとする
計算していないもの所得税額・住民税額による頭打ち。ここで出すのは制度上の控除額で、実際に受け取れる額ではない
計算は scripts/calc-jutaku-loan-koujo-2028-zeh.py で行い、出力を転記しました。借入3,500万円の毎月返済額は143,842円、借入3,000万円では123,293円です。和暦と西暦の対応は、令和4年=2022年、令和5年=2023年、令和6年=2024年、令和7年=2025年、令和8年=2026年、令和9年=2027年、令和10年=2028年、令和12年=2030年です。

実際に受け取れる額は、納めた税額が上限になります。 その仕組みは「住宅ローン控除とは ― 戻ってくる額は年収で決まる」に書きました。この記事は、その手前にある「枠がいくらか」の話です。

① 新築の借入限度額は、令和8年入居から変わった

住宅の性能区分ごとの借入限度額です。新築(認定住宅等の新築等)の場合を、改正前と改正後で並べます。買取再販認定住宅等の取得には別の定めがあるので、②の末尾で分けて書きます。

住宅の区分令和6年・令和7年入居令和8年〜令和12年入居
認定住宅(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅)4,500万円4,500万円
ZEH水準省エネ住宅3,500万円3,500万円
省エネ基準適合住宅3,000万円2,000万円(令和8年・令和9年入居のみ)
上記のどれにも当たらない住宅適用なし適用なし

控除率はいずれも0.7%、控除期間は13年です。最後の行は令和6年入居分から対象外で、令和8年度税制改正でも戻っていません(令和5年12月31日までに建築確認を受けたもの、または令和6年6月30日までに建築されたものは、借入限度額2,000万円・控除期間10年で受けられる経過措置があります)。子育て世帯等(特例対象個人)の上乗せ後は次のとおりです。

住宅の区分令和6年・令和7年入居令和8年〜令和12年入居
認定住宅5,000万円5,000万円
ZEH水準省エネ住宅4,500万円4,500万円
省エネ基準適合住宅4,000万円3,000万円(令和8年・令和9年入居のみ)
改正前の数字は財務省「令和8年度 税制改正の解説」の(表2)(表3)、改正後は同じ資料の改正の内容②④から取りました。

動いたのは省エネ基準適合住宅だけです。 認定住宅とZEH水準省エネ住宅は、令和12年まで同じ額のまま置かれました。そして省エネ基準適合住宅には、令和8年・令和9年という2年間の区切りが付いています。

同じ改正で、「省エネ基準適合住宅に当たるか」の物差しも変わった

金額の表だけを見ていると気づきませんが、区分の判定そのものが令和8年入居分から変わっています。 改正前は住宅性能表示制度の評価方法基準(断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上)で判定していましたが、いまは建築物省エネ法の省エネ基準で判定します。

令和8年度税制改正においては、令和4年3月国土交通省告示第456号が見直され、住宅ローン税額控除制度の対象となるエネルギー消費性能向上住宅の適合性を図る省エネ基準について、評価方法基準に代えて建築物省エネ法に基づく省エネ基準によることとされ、これによりいわゆる気候風土適応住宅については、エネルギー消費性能向上住宅の対象とすることとされました(令8.3国土交通告493②)。

財務省「令和8年度 税制改正の解説」232ページ。太字は引用者。「エネルギー消費性能向上住宅」が省エネ基準適合住宅のことです。

効くのは、土塗壁や大きな開口部を持つ伝統的構法の家です。 建築物省エネ法は、こうした住宅を「気候風土適応住宅」として位置づけ、省エネ基準のうち断熱性能に関する基準の適用を除外しています。改正前はそのために断熱等性能等級4を満たせず、等級で判定する限り住宅ローン控除の対象外でした。国税庁も「省エネ基準適合住宅」の説明に、この一文を足しています。

令和8年1月1日以後に居住の用に供した場合、いわゆる気候風土適応住宅が対象となります。

国税庁「No.1211-1」の「用語の説明」の「省エネ基準適合住宅」の欄。気候風土適応住宅の位置づけと、断熱性能に関する基準が適用除外であることは、国土交通省「住宅ローン減税」の用語解説による。

等級の数字だけで自分の家を判定すると、ここを取りこぼします。 ただし対象になるのは省エネ基準適合住宅としてなので、次に見る令和10年以後の区切りは、気候風土適応住宅にもそのままかかります。

② 省エネ基準適合住宅は、入居年ではなく建築確認の日で切られる

令和10年以後の入居がどうなるかは、条文の書き方が独特です。財務省の解説は、同じ2つの要件を、2回、逆向きに使っています。

上記の「対象外エネルギー消費性能向上住宅」とは、エネルギー消費性能向上住宅のうち、次に掲げる要件のいずれにも該当しないものとされています。 ① そのエネルギー消費性能向上住宅が令和9年12月31日以前に建築確認を受けたものであること。 ② そのエネルギー消費性能向上住宅が令和10年6月30日以前に建築されたものであること。

上記の「対象エネルギー消費性能向上住宅」とは、エネルギー消費性能向上住宅のうち、次に掲げる要件のいずれかに該当するものとされています。 ① そのエネルギー消費性能向上住宅が令和9年12月31日以前に建築確認を受けたものであること。 ② そのエネルギー消費性能向上住宅が令和10年6月30日以前に建築されたものであること。

財務省「令和8年度 税制改正の解説」231ページ。太字は引用者。①②は2つの引用で同じ文です。「エネルギー消費性能向上住宅」が省エネ基準適合住宅のことです。

要件は同じで、「いずれにも該当しない」か「いずれかに該当する」かだけが違います。 結果は反対になります。整理すると、令和10年から令和12年に入居する省エネ基準適合住宅は、次の3つに分かれます。

建築確認・建築の時期呼び名令和10年〜令和12年入居の扱い
令和9年12月31日以前に建築確認を受けた、または令和10年6月30日以前に建築された対象エネルギー消費性能向上住宅「認定住宅等以外の住宅」として借入限度額2,000万円・控除期間10年。子育て世帯の上乗せは付かない
どちらにも当てはまらない対象外エネルギー消費性能向上住宅適用なし
(中古の取得の場合)—令和10年1月1日以後の入居でも引き続き適用できる

3行目は、解説に次のように書かれています。

なお、対象外エネルギー消費性能向上住宅又は対象エネルギー消費性能向上住宅に該当する家屋であっても、その住宅の取得等が既存住宅の取得等の場合にはその家屋を令和10年1月1日以後に自己の居住の用に供した場合であっても引き続き本特例の適用を受けることができます。

建築確認の日が基準なので、逆算すると期限は入居予定より前に来ます。 令和10年に入居する家を省エネ基準適合住宅の水準で建てるなら、建築確認を令和9年12月31日までに受けているか、令和10年6月30日までに建てられている必要があります。設計の段階で決まる話です。

買取再販は、上の3つのどれとも違います。 宅地建物取引業者が一定の増改築等をした中古を買う「買取再販認定住宅等の取得」は、省エネ基準適合住宅でも令和10年から令和12年までの入居で枠が残ります。

なお、個人がエネルギー消費性能向上住宅に係る買取再販認定住宅等の取得をして、そのエネルギー消費性能向上住宅を令和10年から令和12年までの間に居住の用に供した場合の借入限度額は2,000万円と、控除率は0.7%と、控除期間は13年とされました(措法41⑦六)。

財務省「令和8年度 税制改正の解説」225ページ。子育て世帯等(特例対象個人)の場合の3,000万円は同225〜226ページ(措法41⑨四)。

控除期間が13年のままである点が、新築との違いです。 新築が「認定住宅等以外の住宅」の枠に落ちて10年になるのに対し、買取再販は認定住宅等の枠に残り、子育て世帯等の上乗せも3,000万円として付きます。①の表に買取再販を含めなかったのはこのためです。

③ 効くのは「1,000万円下がったこと」ではない

省エネ基準適合住宅の借入限度額は、子育て世帯で4,000万円から3,000万円へ、1,000万円下がりました。ではこれが控除額をいくら減らすのか。 借入3,500万円・年3.460%・35年で計算します。

2,799,200円令和7年入居限度4,000万円2,662,900円令和8年入居限度3,000万円1,400,000円令和10年入居限度2,000万円
令和7年入居限度4,000万円令和8年入居限度3,000万円令和10年入居限度2,000万円
1〜10年目2,225,1002,088,8001,400,000
11〜13年目574,100574,1000
合計2,799,2002,662,9001,400,000

左の2本の差(136,300円)より、真ん中と右の差(1,262,900円)のほうがはるかに大きくなっています。限度額が1,000万円下がったことより、認定住宅等の枠から外れて控除期間が13年から10年になることのほうが効きます。右の棒は令和9年中に建築確認を受けた場合で、受けていなければ0円です。

新築・省エネ基準適合住宅を子育て世帯が買った場合の、控除期間を通じた控除額の合計。借入3,500万円・年3.460%・35年・元利均等で計算。控除率0.7%、100円未満切捨て。

令和7年入居と令和8年入居の差は136,300円です。 1,000万円下がったわりに小さいのは、控除額が年末残高に0.7%を掛けて計算されるからです。借入3,500万円なら年末残高は1年目で34,476,651円、10年目で28,856,020円ですから、限度額4,000万円には最初から届いていません。届いていない限度額をいくら下げても、下げた分がそのまま減るわけではありません。 減るのは、残高が限度額を超えている期間の超過分だけです。

実際、この条件では控除額の推移がこうなります。

年令和7年入居(限度4,000万円)令和8年入居(限度3,000万円)
1年目241,300円210,000円
5年目225,300円210,000円
8年目211,800円210,000円
9年目206,900円206,900円
13年目185,900円185,900円

9年目からは同額です。 残高が3,000万円を下回り、限度額が効かなくなるためです。

一方、令和10年入居(令和9年中に建築確認を受けた場合)は1,400,000円で、令和8年入居の2,662,900円と1,262,900円の差が付きます。借入限度額が2,000万円になることに加えて、控除期間が13年から10年に3年短くなるためです。 建築確認が令和10年以後なら控除そのものがないので、差は2,662,900円になります。

下がった限度額の数字より、どの枠に入るかのほうが大きい、というのがこの計算の結論です。

④ 中古は、令和8年入居から広がった

改正前、認定住宅等である既存住宅(中古)の枠は一律3,000万円・控除期間10年でした。改正後はこうです。

住宅の区分(中古)借入限度額上乗せ後(子育て世帯等)控除期間
認定住宅3,500万円4,500万円13年
ZEH水準省エネ住宅3,500万円4,500万円13年
省エネ基準適合住宅2,000万円3,000万円13年
認定住宅等に当たらない中古2,000万円上乗せなし10年

子育て世帯への上乗せが中古にも広がった理由を、解説はこう書いています。

既存住宅の利活用の促進や子育て支援の充実を図るため、特例対象個人が、上記④の認定住宅等の新築等又は買取再販認定住宅等の取得をした場合に加えて、既存認定住宅等の取得をした場合についても子育て世帯等に対する住宅ローン税額控除の借入限度額の特例の対象とされました。

借入3,000万円・年3.460%・35年で、既存の認定住宅を買った場合を計算します。

入居年借入限度額控除期間控除額の合計
令和7年3,000万円10年1,907,300円
令和8年(子育て世帯)4,500万円13年2,399,400円

差は492,100円です。 ただし内訳を見ると、1〜10年目はどちらも1,907,300円で同額、増えたのは11〜13年目の492,100円だけでした。効いているのは上乗せではなく、控除期間が3年延びたことです。 借入3,000万円では、1年目の年末残高がすでに29,551,415円で、13年を通じて一度も3,000万円に届きません。上乗せ前の3,500万円でも足りているので、4,500万円の上乗せは出番がありません。

⑤ 上乗せは、限度額に残高が届いている人にしか効かない

上乗せがいくら効くのかを、借入額を変えて並べます。新築の認定住宅(一般4,500万円・子育て世帯5,000万円)に令和8年に入居した場合の、13年間の控除額の合計です。

借入額一般(4,500万円)子育て世帯(5,000万円)差
3,000万円2,399,400円2,399,400円0円
3,500万円2,799,200円2,799,200円0円
4,000万円3,199,200円3,199,200円0円
4,500万円3,599,300円3,599,300円0円
5,000万円3,906,100円3,999,300円93,200円

借入4,500万円まで、上乗せの効果は0円です。 年末残高が4,500万円に届かないので、限度額を5,000万円に上げても掛ける対象が変わらないためです。

同じ計算を、借入限度額が低い省エネ基準適合住宅(一般2,000万円・子育て世帯3,000万円)で行うと、様子が変わります。

借入額一般(2,000万円)子育て世帯(3,000万円)差
3,000万円1,820,000円2,399,400円579,400円
3,500万円1,820,000円2,662,900円842,900円
4,000万円1,820,000円2,730,000円910,000円

上乗せは、限度額が低い区分ほど効きます。 一般の2,000万円では、13年間ずっと限度額で頭打ちになり、各年の控除額が140,000円で一定になるためです。「子育て世帯は上乗せがある」という説明は正しいのですが、効くかどうかは住宅の性能区分と借入額の組み合わせで決まります。

利息の削減と控除の減少を、あなたの数字で同時に計算できます繰り上げ返済シミュレーター(住宅ローン控除つき) 上の表の「借入限度額」の欄に、自分が当てはまる額を入れて試せます。繰り上げ返済をしたときに控除がいくら減るかも同時に出ます。

⑥ 40平方メートル台を選ぶと、上乗せは使えない

令和8年度税制改正では、床面積要件の緩和措置も拡充されました。40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅について、新築に付いていた建築確認の期限(令和7年12月31日以前)が撤廃され、中古の取得や増改築等にも対象が広がっています。

ただし、上乗せとの併用はできません。

なお、住宅ローン税額控除における家屋の床面積要件については、居住水準の向上を図る観点から原則として50㎡以上とされていることを踏まえ、この床面積要件の緩和措置の適用を受ける場合には、子育て世帯を始めとするファミリー向けの住宅取得を支援する観点から措置されている上記⑴④、⑤及び⑦の子育て世帯等に対する住宅ローン税額控除の借入限度額の特例の適用はできないこととされました

財務省「令和8年度 税制改正の解説」228ページ。太字は引用者。

床面積の緩和措置には、その年分の合計所得金額が1,000万円以下であることという条件も付きます。この緩和措置を使う年は、上乗せ前の借入限度額で計算することになります。

⑦ 令和10年入居分から、災害ハザードエリアの新築は対象外

もうひとつ、令和10年入居分から始まる制限があります。災害危険区域等の中で居住用家屋や認定住宅等を新築した場合(建築後使用されたことのないものの取得を含みます)、令和10年1月1日以後に居住の用に供したときは、原則として控除が使えません。

災害危険区域等とは、建築基準法39条1項の災害危険区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害特別警戒区域、浸水被害防止区域です。

ただし、災害危険区域には括弧書きの限定が付いています。 5つを並べただけでは読み違えます。

(注3) 災害危険区域(地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害特別警戒区域又は浸水被害防止区域と重複していない区域に限ります。)内にある居住用家屋等にあっては、その居住用家屋等の建築に係る都市再生特別措置法第88条第1項の規定による届出に係る同条第3項の規定による勧告を受けた者が、同条第5項の規定によりその勧告に従わなかった旨を公表された場合におけるその勧告に従わないで建築をした居住用家屋等に限ります。

財務省「令和8年度 税制改正の解説」232ページ。太字は引用者。

つまり、他の4区域と重なっていない災害危険区域は、区域内だというだけでは対象外になりません。 都市再生特別措置法88条の届出に対する勧告を受け、それに従わなかったことを公表されたうえで、なお建てた家屋だけが外れます。国税庁も「災害レッドゾーン」の説明で、災害危険区域を「都市再生特別措置法に基づく勧告に従わないものとして公表の対象となった区域のみ」と書いています。

ほかに、建築確認の日で決まる例外があります。 建築確認を受けた時点でその土地の全部が災害危険区域等の外にあった場合は、適用できるとされています。また、5年以上居住していた家屋の建替え(特定建替え)は除かれます。中古の取得にはこの規定はかかりません。

⑧ 令和10年入居分からは、確定申告の添付書類が増える

②と⑦で見た2つの制限は、確定申告の書類にも表れます。令和10年1月1日以後に居住の用に供した家屋で控除を受けるときは、次の書類を確定申告書に添付しなければならないこととされました。

添付する書類何で証明するか
その家屋が対象外エネルギー消費性能向上住宅に該当しないことを明らかにする書類令和9年12月31日以前に確認を受けたことを証する確認済証・検査済証の写し、令和10年6月30日以前に建築されたことを証する登記事項証明書、または認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH水準であることを示す書類(令和8年3月国土交通省告示第477号)
その居住用家屋等が災害危険区域等内において新築されたものでないこと等を明らかにする書類建築士が証する「立地要件証明書」(令和8年3月国土交通省告示第475号)。建築確認時に土地の全部が区域外だった場合、特定建替えの場合も、それぞれ対応する書類が要る
財務省「令和8年度 税制改正の解説」233ページ(措法41㊱、措規18の21⑧一リ・ヌ)。立地要件証明書を書けるのは、建築士事務所に属する建築士に限られます。

証明書は、入居してから慌てて取れるものばかりではありません。 確認済証・検査済証・住宅省エネルギー性能証明書は、家を建てる過程で出る書類です。令和10年以後の入居を予定しているなら、この2つの書類を誰がいつ用意するかを、契約の段階で決めておくことになります。

あなたの数字で確かめる手順

  1. 住宅の性能区分を確認する。 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅か、ZEH水準省エネ住宅(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)か、省エネ基準適合住宅(断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上)か。証明書の名称と等級で分かります(等級のうち結露の発生を防止する対策に関する基準は除いて判定します)。伝統的構法で断熱等性能等級が取れない家も、「気候風土適応住宅」として建築物省エネ法の省エネ基準に適合していれば、令和8年入居分から省エネ基準適合住宅に当たります
  2. 新築か中古かを確認する。 令和10年入居分からの性能要件と災害ハザードエリアの制限は、新築だけにかかります
  3. 省エネ基準適合住宅で令和10年以後の入居なら、建築確認の日を確認する。 令和9年12月31日以前に受けていれば2,000万円・10年、受けていなければ適用なしです(買取再販認定住宅等の取得なら2,000万円・13年)。令和10年以後の入居では、⑧の2つの書類を確定申告書に添付します
  4. 借入限度額を決める。 ①の表で性能区分と入居年を引き、19歳未満の扶養親族がいる世帯(または夫婦のどちらかが40歳未満の世帯)なら上乗せ後の額を使います
  5. 各年の控除額を計算する。 年末残高と借入限度額の低い方に0.7%を掛け、100円未満を切り捨てます
  6. 納める税額と突き合わせる。 ここまでは枠の話で、実際に戻る額は所得税額と住民税からの控除の上限で頭打ちになります

まとめ

  • 住宅ローン控除の適用期限は、令和7年12月31日から令和12年12月31日まで5年延長された
  • ただし新築は、令和10年入居分から原則としてZEH水準省エネ住宅以上であることが要件になる
  • 省エネ基準適合住宅の借入限度額は、令和8年入居から一般2,000万円・子育て世帯3,000万円に下がり、令和8年・令和9年入居が本来の期限
  • 同じ改正で判定の物差しも変わった。 省エネ基準適合住宅は建築物省エネ法の省エネ基準で判定することになり、断熱性能に関する基準が適用除外される気候風土適応住宅(土塗壁などの伝統的構法)が、令和8年入居分から対象に入った
  • 令和10年以後の入居は、令和9年12月31日以前の建築確認(または令和10年6月30日以前の建築)があれば2,000万円・10年の枠で残る。無ければ適用なし。買取再販認定住宅等の取得だけは別で、2,000万円・13年(子育て世帯等は3,000万円)
  • 借入3,500万円で計算すると、限度額が1,000万円下がったことによる差は13年間で136,300円。枠から外れることによる差は1,262,900円で、桁が違う
  • 中古は広がった。 既存の認定住宅は一律3,000万円・10年から、3,500万円・13年(子育て世帯は4,500万円)になった。借入3,000万円の例では492,100円増えたが、増えた分はすべて11〜13年目だった
  • 上乗せは、年末残高が元の限度額に届いている人にしか効かない。 認定住宅では借入4,500万円まで差は0円、省エネ基準適合住宅では借入3,000万円で579,400円の差が出る
  • 40平方メートル以上50平方メートル未満の緩和措置を使う年は、子育て世帯等の上乗せは使えない
  • 令和10年入居分から、災害危険区域等での新築は原則として対象外になる(建築確認時に区域外だった場合を除く)。ただし他の4区域と重ならない災害危険区域は、都市再生特別措置法の勧告に従わなかったことを公表されてなお建てた家屋に限られる
  • 令和10年入居分からは、確定申告に2つの書類が増える。対象外エネルギー消費性能向上住宅に当たらないことを示す書類と、建築士が証する立地要件証明書

よくある質問

住宅ローン控除はいつまで使えますか?

令和12年(2030年)12月31日までに居住の用に供した場合までです。令和8年度税制改正で、それまでの適用期限だった令和7年12月31日から5年延長されました。国税庁のタックスアンサーNo.1211-1(令和8年4月1日現在法令等)も「令和4年1月1日から令和12年12月31日までの間に自己の居住の用に供したとき」と書いています。ただし5年間ずっと同じ条件が続くわけではありません。新築については令和10年入居分から原則としてZEH水準省エネ住宅以上であることが要件になり、省エネ基準適合住宅は令和8年・令和9年の入居が本来の期限です。中古(既存住宅)にはこの要件はかかりません。

2028年からZEH水準が必要というのは、どういう意味ですか?

令和10年(2028年)1月1日以後に居住の用に供する新築住宅について、省エネ基準適合住宅の水準にとどまるものは、原則として住宅ローン控除が使えなくなるという意味です。財務省の解説は「新築住宅については、令和10年入居分(2028年入居分)から原則としてZEH水準省エネ住宅以上の省エネ性能を有することを要件化することとされました」としています。ZEH水準省エネ住宅とは断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の住宅で、省エネ基準適合住宅(建築物省エネ法の省エネ基準に適合するもの。住宅性能表示制度でいえば断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上)より一段上の水準です。なお令和8年度税制改正で省エネ基準適合住宅の判定の物差しが評価方法基準から建築物省エネ法の省エネ基準に変わり、断熱性能に関する基準の適用が除外される「気候風土適応住宅」(土塗壁などの伝統的構法の住宅)も、令和8年1月1日以後の入居から対象になりました。認定長期優良住宅・認定低炭素住宅はこれより上の扱いなので影響を受けません。

省エネ基準適合住宅でも、経過措置で使える場合があると聞きました。

あります。ただし全部が残るわけではありません。令和9年12月31日以前に建築確認を受けたもの、または令和10年6月30日以前に建築されたもののいずれかに該当すれば、令和10年から令和12年までの入居でも控除を受けられます。財務省の解説はこれを「対象エネルギー消費性能向上住宅」と呼んでいます。ただし新築の場合、適用されるのは認定住宅等の枠ではなく「認定住宅等以外の住宅」の枠で、借入限度額2,000万円・控除期間10年になります。子育て世帯の上乗せも付きません。買取再販認定住宅等の取得の場合はこれと別で、借入限度額2,000万円・控除期間13年、子育て世帯等は3,000万円とされています。逆に、この2つの要件のいずれにも該当しないもの(財務省の解説でいう「対象外エネルギー消費性能向上住宅」)は、令和10年1月1日以後の入居で控除そのものが使えません。「いずれか」と「いずれにも」で結論が反対になるので、読み分けが必要です。

中古住宅を買う場合も、2028年から不利になりますか?

なりません。財務省の解説は「その住宅の取得等が既存住宅の取得等の場合にはその家屋を令和10年1月1日以後に自己の居住の用に供した場合であっても引き続き本特例の適用を受けることができます」と明記しています。それどころか令和8年度税制改正では中古が広がりました。認定住宅等である既存住宅(既存認定住宅等)の借入限度額は、改正前の一律3,000万円・控除期間10年から、認定住宅で3,500万円・13年になり、子育て世帯等への上乗せの対象にもなりました。上乗せ後は認定住宅で4,500万円です。なお認定住宅等に当たらないふつうの中古は、従来どおり借入限度額2,000万円・控除期間10年です。

子育て世帯の上乗せは、いくら得になるのですか?

借入額によります。上乗せは借入限度額を引き上げるものなので、年末残高が元の限度額に届いていない人には1円も効きません。新築の認定住宅(一般4,500万円・子育て世帯5,000万円)の場合、金利年3.460%・35年・元利均等で計算すると、借入4,500万円までは13年間の控除額が一般と同額で、差は0円です。借入5,000万円で初めて93,200円の差が付きました。一方、借入限度額が低い区分ほど上乗せは効きます。新築の省エネ基準適合住宅(一般2,000万円・子育て世帯3,000万円)では、借入3,000万円で579,400円、借入3,500万円で842,900円の差が出ます。上乗せの効果は住宅の性能区分と借入額の組み合わせで決まります。

40平方メートル台のマンションでも住宅ローン控除は使えますか?

使えます。令和8年度税制改正で床面積要件の緩和措置が拡充され、新築だけでなく中古(特例既存住宅の取得)や増改築等にも広がり、新築について付いていた建築確認の期限(令和7年12月31日以前)も撤廃されました。ただし条件が2つあります。ひとつは、その年分の合計所得金額が1,000万円を超える年は適用されないこと。もうひとつは、この緩和措置の適用を受ける場合、子育て世帯等に対する借入限度額の上乗せは使えないことです。財務省の解説は「この床面積要件の緩和措置の適用を受ける場合には、…子育て世帯等に対する住宅ローン税額控除の借入限度額の特例の適用はできないこととされました」としています。40平方メートル台を選ぶか、上乗せを取るかの二者択一になります。

土砂災害の危険がある区域だと、控除が使えないというのは本当ですか?

令和10年1月1日以後に居住の用に供する新築については、原則そのとおりです。令和8年度税制改正で、災害危険区域等の中で居住用家屋や認定住宅等を新築した場合(建築後使用されたことのないものの取得を含みます)、令和10年1月1日以後に居住の用に供したときは控除が使えないこととされました。災害危険区域等とは、建築基準法39条1項の災害危険区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害特別警戒区域、浸水被害防止区域をいいます。ただし災害危険区域には括弧書きの限定が付いていて、他の4区域と重複していない区域については、都市再生特別措置法88条1項の届出に対する同条3項の勧告を受けた者が、同条5項によりその勧告に従わなかった旨を公表された場合に、その勧告に従わないで建築した家屋だけが対象とされています。国税庁も「災害レッドゾーン」の説明で、災害危険区域を「都市再生特別措置法に基づく勧告に従わないものとして公表の対象となった区域のみ」と書いています。このほかに例外があります。建築確認を受けた時点でその土地の全部が災害危険区域等の外にあった場合は、後から区域に指定されても控除を受けられます。また5年以上住んでいた家屋の建替え(特定建替え)は除かれます。中古の取得は対象外なので、この規定はかかりません。

出典