税金(住宅ローン・金利)

住宅取得資金の贈与が非課税になる特例 ― 期限は2026年12月31日

親や祖父母から住宅資金を出してもらうとき、最大1,000万円まで贈与税がかからない特例があります。「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」(租税特別措置法70条の2)です。

この制度について、いま押さえておくべきことが1つあります。期限です。

項目内容
適用期限2026年(令和8年)12月31日までの贈与
令和8年度税制改正大綱での扱い延長の記載なし
次に延長の可否が判明する時期2026年12月公表の令和9年度税制改正大綱

2026年7月時点で、延長は決まっていません。

「これまで何度も延長されてきたから今回も延長されるだろう」と考えたくなりますが、その前提は崩れつつあります。 教育資金の一括贈与の非課税制度は、令和8年3月末の期限到来をもって廃止されることが決まりました。贈与関連の特例が当然に延長される時代ではなくなっています。

結論

この特例は、資金を出す側と受け取る側の関係、住宅の性能、受け取った資金の使い道と時期、そのすべてが要件を満たしたときにだけ適用されます。 どれか1つを外すと、非課税枠は使えません。

そして非課税であっても、申告をしなければ適用を受けられません。 税額がゼロだから何もしなくてよい制度ではありません。

住宅ローン控除については、併用できます。「控除が減る」と説明されることが多い制度ですが、実際に減るのは、住宅の取得に必要な額を超えて借りた場合だけです。 もらった資金を取得に充てる限り、借入はその分だけ少なくて済むため、通常は減りません。

一方で、使わない方がよい場合もあります。 もらう額が基礎控除の範囲に収まるなら、特例を使っても払う税金は変わらないのに、一度しか使えない枠を消費してしまいます。

したがって判断は金額しだいです。 以下、それぞれを計算して示します。

計算の前提

具体的な条件で計算します。

項目条件
住宅の取得対価4,000万円
親からの贈与1,000万円
住宅ローン借入額3,500万円
借入条件35年・元利均等・年1.400%(2026年の実勢水準)
住宅の種別省エネ等住宅(非課税限度額1,000万円)
受贈者18歳以上・合計所得金額2,000万円以下

このケースでは贈与1,000万円と借入3,500万円の合計が4,500万円で、取得対価4,000万円を500万円上回ります。差額は諸費用や家具に充てる想定です。この「はみ出した500万円」が、後述する住宅ローン控除の論点になります。

なお住宅ローン控除の借入限度額(認定住宅の場合)はこのケースでは影響しません。借入額3,500万円が限度額を下回っているためです。

非課税になる金額

非課税限度額は住宅の性能で2段階に分かれます。

住宅の種別非課税限度額
省エネ等住宅1,000万円
それ以外の住宅500万円

これに暦年課税の基礎控除110万円を上乗せできるので、省エネ等住宅なら合計1,110万円まで贈与税がかかりません。

「省エネ等住宅」の要件は2024年から厳しくなった

ここは見落とされやすい部分です。令和6年1月1日以後の贈与について、要件が引き上げられました。

住宅要件(いずれかを満たす)
新築(建築後未使用)断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上 / 耐震等級2以上 / 高齢者等配慮対策等級3以上
既存住宅・増改築等断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上

新築は「かつ」で、既存住宅は「または」です。 新築で1,000万円枠を使うつもりなら、契約前にその住宅が等級を満たすかを確認してください。500万円と1,000万円では、枠が倍違います。

「住宅ローン控除が減る」は、ほとんどの人に当てはまりません

この特例を扱った記事の多くに「住宅ローン控除が減るので注意」と書かれています。制度としては事実ですが、実際に減る人はかなり限られます。 理由を構造から説明します。

併用できること自体は、国税庁の質疑応答事例で明示されています。 そのうえで、住宅ローン控除の計算基礎となる借入金の額に上限がかかります。

住宅ローン控除の対象 = 次のうち最も小さい金額
  ① 住宅ローンの年末残高
  ② 住宅の取得対価 − 住宅取得等資金の贈与額
  ③ 住宅ローン控除の借入限度額

②が効くのは、年末残高が「取得対価 − 贈与額」を上回るときです。式を整理すると、次の条件になります。

借入額 + 贈与額 > 住宅の取得対価

なぜ、ほとんど当てはまらないのか

この特例の要件そのものが、条件の成立を妨げます。

特例を受けるには、もらった資金を住宅の取得に充てる必要があります。手元に残したり、家具を買ったりした分は対象外です。

したがって贈与を取得対価に充てた場合、取得のために借りる額は「取得対価 − 贈与額」以下になります。取得に必要な額が、その分だけ減っているからです。

金額
住宅の取得対価4,000万円
親からの贈与(取得に充てる)1,000万円
借入で用意すべき額3,000万円

この形なら、②の上限(3,000万円)に年末残高が届きません。 控除は1円も減りません。

「借入額 + 贈与額 > 取得対価」になるのは、家の代金より多くのお金を用意したときだけです。 贈与を取得に充てたうえで、なお余分がある状態を指します。

注意すべきなのは、これは「借入額が取得対価を超えること」とは違うという点です。 借入だけを見れば取得対価に収まっていても、贈与と合わせて超えていれば該当します。

国税庁が示している設例

この点は、国税庁の質疑応答事例に具体的な数字で示されています。

項目金額
家屋の取得対価4,000万円
銀行からの借入金2,000万円
住宅取得資金の贈与(全額を取得対価に充当)2,600万円
取得対価 − 贈与額1,400万円
控除の対象になる借入金1,400万円
対象から外れる部分600万円

借入金2,000万円は取得対価4,000万円を下回っています。それでも600万円が対象から外れます。 合計4,600万円を用意して4,000万円の家を買っているため、600万円は家の代金以外に回った計算になるからです。

国税庁は外れる理由をこう説明しています。600万円相当部分は「住宅の取得等に要する資金」に充てられていないことになる、と。

つまりこの調整は、特例を使った罰ではありません。 借りたお金のうち家の代金に充てていない部分を特定する仕組みです。そしてその部分は、もともと住宅ローン控除の対象になる借入金ではありません。

では、どんなときに超えるのか

家の代金より多くのお金を用意する形は、主に2つです。

内容
諸費用まで借入でまかなう登記費用、仲介手数料、ローン事務手数料、火災保険料は取得対価に含まれません。これらを住宅ローンに含めると超えます
贈与が実際の不足額を上回る親が非課税枠いっぱいの金額を出す一方、借入は自分の返済計画で決める。結果として合計が代金を超えます

上の国税庁の設例は後者の形です。「枠があるから限度まで」ともらうと、この状態になりやすくなります。

頭金を自己資金で払ってから借りた場合は、対象になります

同じ質疑応答事例に、実務上重要な但し書きがあります。

自己資金をもって頭金等の支払に充て、その後頭金等の金額を含めて借入れを行っているような場合には、その借入金を自己資金に充当したと考えられることから、その借入金は実質的に「住宅の取得等に要する資金」に充てられており、住宅借入金等特別控除の対象になります。

支払いの順序で結論が変わります。 先に自己資金で頭金を払い、あとからその分を含めて借り入れた場合は、実質を見て控除の対象と扱われます。

以下、実際に超えた場合にいくら減るのかを計算します。該当しない方は読み飛ばして構いません。

前提は「取得対価4,000万円・贈与1,000万円・借入3,500万円」です。取得に必要な3,000万円より500万円多く借りている状態で、②の上限は3,000万円になります。

同じ家・同じ借入で、1,000万円の出どころだけを変えて比べます。

1,000万円の出どころ控除対象の上限
ケースA自己資金年末残高(制限なし)
ケースB親からの贈与(特例適用)3,000万円

13年間の住宅ローン控除額を計算しました。

年末残高A:控除額B:控除額
1年目34,219,504円239,500円210,000円29,500円
2年目33,428,011円233,900円210,000円23,900円
3年目32,625,365円228,300円210,000円18,300円
4年目31,811,410円222,600円210,000円12,600円
5年目30,985,986円216,900円210,000円6,900円
6年目30,148,932円211,000円210,000円1,000円
7年目29,300,084円205,100円205,100円0円
8〜13年目同額同額0円
合計2,658,000円2,565,800円92,200円
住宅ローン控除額は、年末残高に控除率を掛けた後、100円未満の端数を切り捨てて計算しています。

減るのは13年間で92,200円です。 そして差が出るのは最初の6年間だけでした。7年目には年末残高が3,000万円を下回るため、上限②が効かなくなります。

92,200円特例を使う非課税1,770,000円使わない暦年課税
特例を使う非課税使わない暦年課税
贈与税01,770,000
住宅ローン控除の減少(13年)92,2000
合計92,2001,770,000

左が特例を使った場合です。控除が減っても棒がほとんど見えません。負担は約19分の1で、しかもこの減少自体、取得に必要な額を超えて借りた場合にしか起きません。

1,000万円を親からもらう2つの方法の実質負担。取得対価4,000万円・借入3,500万円・年1.400%・35年で計算。住宅ローン控除の減少は13年間の合計。

特例を使わず暦年課税で1,000万円を受け取ると、贈与税はこうなります。

(1,000万円 − 基礎控除110万円)× 30% − 90万円 = 177万円
直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与は「特例贈与財産」の税率が適用されます。
贈与税住宅ローン控除の減少実質負担
特例を使う0円92,200円92,200円
特例を使わない1,770,000円0円1,770,000円
1,677,800円

控除が減ることを理由に特例を避ける判断にはなりません。

諸費用を自己資金で払えば、減少はゼロになります

上限②は「取得対価 − 贈与額」です。したがって借入額を3,000万円以下に抑えれば、控除の減少は起きません。

つまり諸費用の500万円を自己資金で払い、住宅ローンは取得対価の範囲内(3,000万円)に収めるという形です。これが冒頭で述べた「通常の資金計画」に当たります。

29,5001年目23,9002年目18,3003年目12,6004年目6,9005年目1,0006年目07年目
1年目2年目3年目4年目5年目6年目7年目
控除が減る額29,50023,90018,30012,6006,9001,0000
合計29,50023,90018,30012,6006,9001,0000

影響は最初の6年間に限られ、7年目にゼロになります。年末残高が控除対象の上限(3,000万円)を下回るためです。借入額そのものを3,000万円以下にすれば、この6年分も発生しません。

住宅ローン控除が減る額の年別推移。取得対価4,000万円・贈与1,000万円・借入3,500万円のケース。

贈与1,000万円 + 借入3,000万円 = 取得対価4,000万円にちょうど収まるためです。諸費用を借入に含めるかどうかだけで、控除が減るかどうかが決まります。

特例を使わない方がいい人

前章のとおり、住宅ローン控除の減少は取得に必要な額を超えて借りた場合にしか起きません。 したがって「控除が減るから使わない」という判断が当てはまる人は、ごく限られます。

それとは別に、明確に「使わない方がいい」ケースが1つあります。 こちらは住宅ローン控除とは無関係です。

① もらう額が110万円以下なら、使う意味がありません

暦年課税の基礎控除110万円だけで、贈与税はゼロです。 特例を使っても、払う税金は同じゼロです。

にもかかわらず、失うものがあります。

特例を使うと内容
枠を消費するこの特例は過去に適用を受けていないことが要件。一度使うと二度使えない
申告が必要になる非課税でも贈与税の申告書の提出が必須(暦年の基礎控除内なら申告不要)
資金の使途と時期が縛られる翌年3月15日までに取得、翌年12月31日までに居住

得るものがゼロで、失うものがある状態です。

とくに枠の消費は軽視できません。いま110万円で使い切ると、数年後に親が500万円や1,000万円を出せる状況になっても、この特例は使えません。

② 数年に分けてもらえるなら、暦年贈与で足りる場合があります

暦年課税の基礎控除は毎年110万円です。3年に分ければ330万円、5年なら550万円を無税で移せます。

急がないのであれば、特例の枠を残しておく方が選択肢が広くなります。

ただしこれには前提があります。 特例の適用期限は2026年12月31日で、延長は決まっていません。待っている間に枠自体が消える可能性があります。取得の予定が近いなら、待つ判断はとりにくくなります。

③ 家の代金より多くのお金を用意する予定で、もらう額が小さい場合

前章の条件(借入額 + 贈与額 > 取得対価)に当てはまり、かつもらう額が小さい場合は、計算して比べる価値があります。

理由は2つの金額の決まり方が違うことにあります。

何で決まるか
住宅ローン控除の減少はみ出し額(借入額 − 取得対価 + 贈与額)
払わずに済む贈与税贈与額のみ(しかも累進)

贈与税は累進なので、額が小さいほど税率が下がります。 一方、控除の減少は借入の組み方で決まるため、贈与額が小さくても大きくなり得ます。ここで逆転が起きます。

取得対価3,000万円のケースで、借入額がいくらを超えると逆転するかを計算しました。

贈与額贈与税逆転する借入額取得対価との差
110万円0円3,000万円超超えたら即
200万円90,000円3,277万円超+277万円
300万円190,000円3,392万円超+392万円
500万円485,000円3,633万円超+633万円
800万円1,170,000円4,177万円超+1,177万円
1,000万円1,770,000円4,742万円超+1,742万円

もらう額が大きいほど、逆転までの距離が遠くなります。 1,000万円もらう場合は取得対価より1,742万円多く借りないと逆転しないので、現実的には起こりません。

逆に110万円のケースは、取得対価を超えて借りた時点で逆転します。①で述べたとおり、この額ならそもそも特例を使う必要がありません。

0円使わない基礎控除内99,900円特例を使う非課税
使わない基礎控除内特例を使う非課税
贈与税00
住宅ローン控除の減少(13年)099,900
合計099,900

どちらも贈与税はゼロです。暦年課税の基礎控除内なので、特例を使う必要がありません。使うと住宅ローン控除が減り、しかも一度しか使えない枠を消費します。

贈与が110万円で、取得に必要な額を超えて借りた場合。取得対価3,000万円・借入3,400万円・年1.400%・35年で計算。

まとめると

こんな人判断
もらう額が110万円以下使わない(贈与税はゼロのまま。枠も温存できる)
取得までまだ数年あり、分けてもらえる暦年贈与も検討(ただし期限切れのリスクあり)
もらう額が小さく、諸費用まで借入でまかなう計算して比べる(逆転する領域)
借入が取得に必要な額に収まる(=通常の形)使う(控除は減らない)
もらう額が大きい使う
住宅ローン控除を受けない(現金購入など)使う(失うものがない)

大半の人は「使う」に該当します。 使わない判断が正解になるのは、①のようにそもそも贈与税がかからない額のときです。

相続時精算課税との違い

混同されやすいので整理します。3つは性質がまったく違います。

制度課税相続時の扱い
住宅取得等資金の非課税課税されない生前贈与加算の対象外
相続時精算課税贈与時は課税されない(2,500万円の特別控除)相続財産に加算される(先送り)
暦年課税基礎控除110万円を超えると課税相続開始前7年内の贈与は加算

住宅取得等資金の非課税だけが、本当の意味で課税されません。 相続時精算課税は免除ではなく先送りです。

したがって順序が決まります。まず住宅取得等資金の非課税枠を使い切り、それを超える部分について相続時精算課税や暦年課税を検討します。 両方の併用も可能です。

相続時精算課税でも、住宅ローン控除の調整は同じように入ります

ここは誤解しやすい点です。 「非課税ではなく相続時精算課税を選べば、住宅ローン控除の調整を避けられるのではないか」と考えたくなりますが、避けられません。

取得対価から控除される金額を定めている租税特別措置法施行令26条6項は、住宅取得等資金の非課税(措法70条の2)と、住宅取得等資金に係る相続時精算課税選択の特例(措法70条の3)の両方を対象にしています。前掲の国税庁の設例も、この2つを併せて適用したケースです。

制度住宅ローン控除の取得対価から控除されるか
住宅取得等資金の非課税(70条の2)される
住宅取得等資金に係る相続時精算課税の特例(70条の3)される
通常の暦年課税(贈与税を払う)されない

調整を受けないのは、贈与税を払う暦年課税だけです。 制度を選び替えて回避する余地はありません。

見落としやすい要件

金額よりも、ここで失敗する方が損失が大きくなります。

① 贈与者は「直系尊属」に限られる

自分の父母・祖父母だけです。配偶者の父母は対象外です。

夫の親から資金をもらって妻名義で取得する形も使えません。資金を受け取る人と、その人の持分を一致させる必要があります。ここを外すと、非課税どころか通常の贈与税が課税されます。

② 「資金」の贈与でなければならない

住宅そのものをもらった場合は対象外です。現金の贈与を受けて、それを住宅の取得に充てるという形が必要です。

③ 翌年3月15日までに「取得」まで済ませる

もらった資金を手元に置いたままでは適用されません。贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、遅滞なく居住する(または居住することが確実である)ことが必要です。

居住は翌年12月31日までに実現しなければならず、間に合わない場合は修正申告が必要になります。

年末に贈与を受けると、この期限が一気に近づきます。 2026年12月に駆け込みで贈与を受ける場合、2027年3月15日までに取得を終える必要があります。

④ 申告しないと適用されない

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書を提出する必要があります。非課税だから申告不要、ではありません。

⑤ その他の要件

要件内容
年齢贈与を受けた年の1月1日において18歳以上
所得合計所得金額2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)
床面積40㎡以上240㎡以下、かつ2分の1以上が居住用
過去の適用過去にこの特例の適用を受けていないこと
取得先配偶者・親族など特別の関係がある人からの取得でないこと

あなたの数字で確かめる手順

① もらう額が110万円以下かどうかを確認する

110万円以下なら、ここで判断が終わります。 暦年課税の基礎控除だけで贈与税はゼロなので、特例を使わないという結論になります。申告も不要で、枠も温存できます。

110万円を超える場合は②へ進みます。

② 住宅ローン控除が減るかどうかを確認する

必要な数字は3つです。住宅の取得対価・贈与を受ける額・借入額。

借入額 + 贈与額 ≦ 住宅の取得対価  → 減らない(通常はこちら)
借入額 + 贈与額 > 住宅の取得対価  → 減る(次の計算へ)

取得対価には諸費用(登記費用、仲介手数料、ローン事務手数料、火災保険料など)は含まれません。 諸費用を借入でまかなうと、上の式の左辺が膨らみます。

減る場合の金額はこう求めます。

控除対象の上限 = 住宅の取得対価 − 贈与額
はみ出す額     = 借入額 − 控除対象の上限

はみ出す額に控除率0.7%を掛けると、1年あたりの減少額の上限が出ます。ただし年末残高が控除対象の上限を下回った年から、減少はなくなります。 記事の例では、はみ出す額500万円で1年目29,500円、13年合計92,200円でした。

③ 減る場合は、払わずに済む贈与税と比べる

暦年課税で受け取った場合の贈与税を計算します(特例贈与財産の税率)。

基礎控除後の金額税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円

贈与税の方が大きければ特例を使う、控除の減少の方が大きければ使わないという判断になります。

ここまでを整理すると、こうなります。

条件判断
もらう額が110万円以下使わない(贈与税がゼロなので比べる必要すらない)
借入額 + 贈与額 ≦ 取得対価使う(控除は減らない。通常はこちら)
それ以外控除の減少と贈与税を計算して比べる

④ 住宅の等級を確認する

省エネ等住宅に該当するかどうかで、非課税枠が500万円か1,000万円かに分かれます。契約前に、建築会社や不動産会社に等級を確認してください。 該当する場合は、証明書類(住宅性能証明書、建設住宅性能評価書の写しなど)が申告時に必要になります。

⑤ 期限から逆算する

やること期限
贈与を受ける2026年12月31日(現行の適用期限)
住宅を取得する贈与の翌年3月15日
居住を開始する贈与の翌年12月31日
贈与税の申告贈与の翌年2月1日〜3月15日

2026年中に贈与を受けるなら、2027年3月15日までに取得を終える段取りが必要です。 逆に、取得が2027年になる見込みなら、贈与も2027年に受ける形が自然ですが、その時点で特例が存続しているかは分かりません。

延長を前提に待つべきではない

この記事で最も重要な点を繰り返します。

適用期限は2026年12月31日で、令和8年度税制改正大綱に延長の記載はありません。

判明するのは2026年12月に公表される令和9年度税制改正大綱です。取得の予定がその前後にある人は、延長される前提で計画を立てない方が安全です。

判断の材料は2つあります。

  1. 教育資金の一括贈与の非課税制度は、令和8年3月末で廃止が決まった。 贈与関連の特例が自動的に延長される状況ではない
  2. 一方で住宅ローン控除は令和12年末まで5年延長された。 住宅取得支援そのものが縮小しているわけではない

どちらに転ぶかは読めません。 だからこそ、2026年中に取得の目処が立っているなら年内の贈与で確定させ、そうでないなら「使えなくなる場合の資金計画」も用意しておく、という二段構えが現実的です。

まとめ

  • 非課税枠は省エネ等住宅で1,000万円、それ以外で500万円(基礎控除110万円を上乗せ可)
  • 適用期限は2026年12月31日。令和8年度税制改正大綱に延長の記載はない
  • 新築の省エネ等住宅の要件は「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上」
  • 住宅ローン控除とは併用できるが、控除対象の上限が「取得対価 − 贈与額」になる
  • 住宅ローン控除とは併用できる。ただし**「控除が減る」のは、取得に必要な額を超えて借りた場合だけ**。もらった資金を取得に充てる限り、借入はその分少なくて済むので通常は減らない
  • 減るのは家の代金より多くのお金を用意した場合。諸費用まで借入でまかなうか、贈与が実際の不足額を上回るときに起こる。借入だけを見て取得対価に収まっていても該当する(国税庁の設例では借入2,000万円・取得対価4,000万円で600万円が対象外)
  • 外れる部分は「住宅の取得等に要する資金」に充てていない金額であり、もともと控除の対象借入金ではない。ただし先に自己資金で頭金を払い、あとからその分を含めて借りた場合は対象になる
  • 相続時精算課税を選んでも、この調整は同じように入る(施行令26条6項は70条の2と70条の3の両方を対象にしている)
  • 減る場合でも額は小さい。贈与1,000万円の例では13年で92,200円に対し、払わずに済む贈与税が1,770,000円約19倍の差で特例が有利
  • もらう額が110万円以下なら使わない方がよい。 暦年課税の基礎控除で贈与税はゼロなので得るものがなく、一度しか使えない枠を消費するだけになる
  • 贈与者は直系尊属のみ。配偶者の父母は対象外
  • 非課税でも申告が必須(翌年2月1日〜3月15日)

大半の人にとっては、使う方が有利です。 「住宅ローン控除が減る」という理由で見送るのは、多くの場合あてはまりません。判断が必要になるのはもらう額が基礎控除の範囲に収まるときと、期限です。

よくある質問

住宅取得等資金の贈与の非課税は、いくらまで非課税になりますか?

省エネ等住宅なら1,000万円まで、それ以外の住宅なら500万円までです。これに暦年課税の基礎控除110万円を上乗せできるので、省エネ等住宅なら合計1,110万円まで贈与税がかからない計算になります。ただし省エネ等住宅の要件は令和6年1月1日以後の贈与について厳しくなっており、新築の場合は「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上」(または耐震等級2以上、または高齢者等配慮対策等級3以上)が必要です。契約前に、その住宅がどちらに該当するかを必ず確認してください。

期限はいつまでですか。延長されないのですか?

適用期限は2026年(令和8年)12月31日までの贈与です。令和8年度税制改正大綱にこの特例の延長は記載されていないため、2026年7月時点で延長は決まっていません。この期限を延長するかどうかは、2026年12月に公表される令和9年度税制改正大綱で判明します。なお教育資金の一括贈与の非課税制度は令和8年3月末の期限到来をもって廃止されることが決まっており、贈与関連の特例が当然に延長される状況ではなくなっています。予定があるなら、延長を前提に待たない方が安全です。

住宅ローン控除と併用できますか?

併用できます。住宅ローン控除の計算基礎となる借入金の額に「住宅の取得対価 − 贈与を受けた金額」という上限がかかりますが、これが効くのは借入額と贈与額の合計が取得対価を超えるとき、つまり住宅の取得に必要な額を超えて借りたときだけです。特例はもらった資金を取得に充てることが要件なので、充てた分だけ借入は少なくて済みます。したがって通常の資金計画では控除は減りません。実際に減るのは諸費用まで住宅ローンに含めて借りた場合ですが、諸費用に対応する部分はもともと控除の対象借入金ではありません。減る場合でも額は小さく、取得対価4,000万円・贈与1,000万円・借入3,500万円の例では13年で92,200円でした。

義理の親(配偶者の父母)からもらう場合も使えますか?

使えません。この特例の贈与者は受贈者の直系尊属に限られます。つまり自分の父母・祖父母からの贈与だけが対象で、配偶者の父母は直系尊属に当たりません。夫の親から資金をもらって妻の名義で住宅を取得する、という形も対象外です。義理の親から資金を出してもらう場合は、資金を受け取る人とその人の持分を一致させる必要があります。ここを間違えると、非課税どころか贈与税の課税対象になります。

非課税になるなら、贈与税の申告は不要ですか?

申告が必要です。非課税の適用を受けるには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、この特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書を提出しなければなりません。申告をしないと、非課税の適用そのものが受けられません。税額がゼロだから申告も不要、という制度ではない点に注意してください。あわせて戸籍謄本、登記事項証明書、契約書の写し、省エネ等住宅であることを証する書類などの添付が必要です。

特例を使わない方がいいのは、どんな場合ですか?

もらう額が110万円以下の場合です。暦年課税の基礎控除だけで贈与税はゼロになるので、特例を使っても払う税金は変わりません。その一方で、この特例は過去に適用を受けていないことが要件なので、一度使うと二度使えません。110万円で枠を消費すると、数年後に親がもっと大きな額を出せる状況になっても使えなくなります。非課税でも申告が必要になる手間も増えます。得るものがなく失うものがある状態なので、この額なら使わない方がよいと考えられます。取得までまだ数年あり分けてもらえる場合も、毎年110万円の基礎控除を積み上げる方が枠を残せますが、特例の期限が2026年12月31日である点は考慮が必要です。

相続時精算課税とはどちらが有利ですか?

性質が違うので比較の軸が変わります。住宅取得等資金の非課税は本当に課税されない制度で、非課税となった部分は相続開始前の生前贈与加算の対象にもなりません。一方の相続時精算課税は、贈与時に課税されない代わりに、その金額が将来の相続財産に加算されます。つまり免除ではなく先送りです。したがって、まず住宅取得等資金の非課税枠を使い切り、それを超える部分について相続時精算課税や暦年課税を検討するという順序になります。両方を併用することもできます。なお住宅ローン控除の取得対価から控除される点は、非課税(措置法70条の2)でも住宅取得等資金に係る相続時精算課税の特例(同法70条の3)でも同じです。制度を選び替えて避けることはできません。

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