税金

生前贈与の7年ルールは、2027年から効き始める

「生前贈与は7年前まで持ち戻される」と言われますが、いま相続が開始しても7年分は加算されません。

相続税法第19条は、たしかに「相続の開始前七年以内」と書いています。しかし3年を7年に延ばす改正の対象になるのは令和6年1月1日以後の贈与で、それより前へ遡ることはできません。国税庁は、被相続人の相続開始日に応じて加算対象期間を3つに分けています。

被相続人の相続開始日加算対象期間
~令和8年12月31日相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)
令和9年1月1日~令和12年12月31日令和6年1月1日から死亡の日までの間
令和13年1月1日~相続開始前7年以内(死亡の日から遡って7年前の日から死亡の日までの間)

いま2026年、つまり令和8年です。 この記事を読んでいる時点で相続が開始した場合、加算されるのは相続開始前3年以内の贈与だけです。加算対象期間が3年を超えるのは、令和9年(2027年)1月2日以後に相続が開始したときからです。

結論

変わったのは「何年分が加算されるか」だけではありません。「期間がどう決まるか」が変わりました。

改正前の3年ルールも、いまの経過措置も、境目は暦年の区切りではなく相続開始日から遡った応当日です。同じ年に贈与していても、月日によって扱いが分かれます。年単位で数えて安心していると、想定と結果がずれます。

経過措置の間は、加算対象期間の起点が固定されています。 終わりの日である相続開始日だけが動くので、相続開始が遅くなるほど、加算対象期間は一日ずつ伸びていきます。 期間が階段状に飛ぶのではなく、連続して伸びるということです。

延長された部分には控除がありますが、これは毎年使えるものではありません。 3年を超える部分の全体に対して、一度だけ使えます。したがって、贈与を続けた年数が長いほど、控除で吸収できる割合は小さくなります。

そして、加算されたぶんについて納めた贈与税は、相続税から差し引くことはできても、差し引ききれなければ戻ってきません。 還付の規定は相続時精算課税にだけ置かれており、暦年課税にはありません。

最後に、加算は加算された本人だけの問題ではありません。 相続税は法定相続分課税方式で計算するため、贈与を受けていない相続人の税額も動きます。

計算の前提

本記事の計算は、次の設例で行います。すべて架空の設定で、実在の家族ではありません。

項目条件
贈与令和6年3月10日から毎年3月10日に、110万円を暦年課税で贈与
贈与者父(被相続人)
受贈者子A(推定相続人。相続でも財産を取得する)
相続開始日各年の9月1日(記事の執筆日と同じ月日で揃えた)
法定相続人母(配偶者)・子A・子B の3人
正味の遺産額6,000万円(生前贈与加算を含まない額)
遺産の分割法定相続分どおり 母3,000万円・子A1,500万円・子B1,500万円
配偶者の税額軽減適用する(母の取得額は法定相続分相当額以下)
令和5年以前の贈与無いものとする
計算はすべてスクリプトで実行しました。国税庁が公表している設例(②で引用するもののほか、タックスアンサー No.4161 の具体例と、質疑応答事例の問1-1・問1-2)を同じスクリプトで再計算し、公表されている答えと一致することを確認しています。

① なぜ「令和9年1月2日以後」なのか

国税庁は、延長された部分の100万円の控除について、加算対象期間の区分とは1日ずれた日付を使っています。

相続開始の日が令和9年1月2日以後の場合には、加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その財産の贈与時の価額の合計額から総額100万円までは相続税の課税価格に加算されません。

加算対象期間の区分は「令和9年1月1日から」なのに、控除だけ「令和9年1月2日以後」です。 これは書き間違いではありません。

相続開始日が令和9年1月1日だったとして、2つの日付を並べてみます。

日付
加算対象期間の起点令和6年1月1日
死亡の日から遡って3年前の日令和6年1月1日

同じ日です。 つまり加算対象期間の全部が「相続開始前3年以内」に収まり、控除の対象になる部分が1日も存在しません。

相続開始日が1日ずれて令和9年1月2日になると、3年前の日は令和6年1月2日になります。加算対象期間の起点は令和6年1月1日のままなので、令和6年1月1日という1日分だけが3年以内から外れます。 ここではじめて控除の出番が生まれます。

この読み方は、国税庁自身が書いています。 質疑応答事例(令和6年7月2日、令和6年4月1日現在の法令等)は、加算対象期間の表に次の注を付けています。

相続又は遺贈により財産を取得した日が令和9年1月1日である場合には、相続の開始の日から遡って3年目の応当日が令和6年1月1日となることから、相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産に係る期間(100 万円控除が適用される期間)は生じない。

同じ資料は、境目の日を「3年前の日」ではなく「遡って3年目の応当日」と書いています。 相続開始日が令和10年6月21日の設例では、応当日は令和7年6月21日、100万円の控除が使える期間はその前日(令和7年6月20日)までとされています。日で数えるという点が、国税庁の書き方そのものに出ています。

この1日の差が、条文の作りをそのまま表しています。 国税庁のパンフレットは「延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、総額100万円まで加算されません」という書き方をしていますが、これは経過措置が終わった後の姿です。 条文と No.4161 の(注)が対象にしているのは4年間ではなく、**「相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産」**であり、経過措置の間、その部分は4年間もありません。

② 境目は「年」ではなく「日」

国税庁は「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」で、次の設例を示しています。

夫は、令和10年4月1日に亡くなり、長男と長女は相続により財産を取得しました。

贈与年月日長男長女
① 令和5年4月1日200万円200万円
② 令和6年3月10日200万円150万円
③ 令和7年3月15日100万円300万円
④ 令和7年5月20日100万円200万円
⑤ 令和8年5月15日200万円200万円

③と④は、どちらも令和7年の贈与です。 それでも扱いが分かれます。国税庁の答えはこうです。

長男:〔(②200万円+③100万円)-100万円〕+〔④100万円+⑤200万円〕= 500万円
長女:〔(②150万円+③300万円)-100万円〕+〔④200万円+⑤200万円〕= 750万円

②と③が「3年を超える部分」、④と⑤が「3年以内」に分けられています。 境目は令和7年4月1日です。相続開始日が令和10年4月1日なので、そこから遡って3年前の日がこの日になります。

  • ③ 令和7年3月15日 → 3年前の日より前 → 3年を超える部分(100万円の控除の対象)
  • ④ 令和7年5月20日 → 3年前の日以後 → 3年以内(全額が加算される)

同じ年の贈与でも、2か月の違いで扱いが変わります。 「令和7年分の贈与」という数え方では、この線は引けません。

そして100万円の控除は、受贈者ごとに判定されています。 長男の3年を超える部分は300万円、長女は450万円で、それぞれから100万円が引かれています。兄妹で1つの100万円を分け合うのではありません。

①の令和5年4月1日の贈与は加算されません。国税庁は「①の贈与により取得した財産の価額については、令和5年12月31日以前の贈与のため、相続税の課税価格に加算されません」としています。ただしこれは、令和5年以前の贈与が常に加算されないという意味ではありません。改正前から続く3年ルールにより、相続開始前3年以内であれば令和5年以前の贈与も加算されます。 この設例では①が3年より前だったため外れています。

③ 加算される額は、相続開始が遅いほど増える

毎年110万円を贈与している設例で、相続開始日ごとに加算額を計算します。

相続開始日加算対象期間の起点期間の長さ3年以内3年を超える部分100万円の控除加算額
令和8年9月1日令和5年9月1日1,097日330万円なしなし330万円
令和9年9月1日令和6年1月1日1,340日330万円110万円100万円340万円
令和10年9月1日令和6年1月1日1,706日330万円220万円100万円450万円
令和11年9月1日令和6年1月1日2,071日330万円330万円100万円560万円
令和12年9月1日令和6年1月1日2,436日330万円440万円100万円670万円
令和13年9月1日令和6年9月1日2,557日330万円440万円100万円670万円
令和13年9月1日より後に相続が開始した場合も、加算額は670万円のままです。加算対象期間が7年で固定され、毎年同じ日に贈与を続けている限り、その期間に入る贈与の回数が7回で一定になるからです。
3,300,000令和8年3,400,000令和9年4,500,000令和10年5,600,000令和11年6,700,000令和12年以後
令和8年令和9年令和10年令和11年令和12年以後
相続開始前3年以内の贈与3,300,0003,300,0003,300,0003,300,0003,300,000
3年を超える部分(100万円の控除後)0100,0001,200,0002,300,0003,400,000
合計3,300,0003,400,0004,500,0005,600,0006,700,000

下側(3年以内の330万円)はどの棒でも同じ高さです。伸びているのは上側だけです。左端の令和8年に上側が無いのは、加算対象期間が3年以内で終わっていて、3年を超える部分が存在しないからです。令和9年の上側が10万円しかないのは、そこに入る贈与110万円のうち100万円が控除で消えるためで、控除はここで使い切ります。以後は毎年110万円ずつまるごと積み上がります。

令和6年から毎年3月10日に110万円を贈与していた場合に、相続税の課税価格へ加算される額(相続開始日は各年の9月1日)。

注目すべきは令和9年です。 加算額は330万円から340万円へ、10万円しか増えていません。3年を超える部分に入る贈与が110万円の1回しかなく、そのほとんどを100万円の控除が吸収するためです。

しかし翌年からは、控除が効かなくなります。 3年を超える部分は毎年110万円ずつ積み上がるのに、控除は総額100万円のまま増えないからです。令和10年で450万円、令和12年で670万円まで伸びます。

もう一つ、この設例では令和12年で頭打ちになります。 贈与を始めたのが令和6年3月10日なので、令和12年9月1日の時点で加算対象期間はすでに7回分の贈与をすべて含んでおり、令和13年以後の「丸7年」を待つまでもなく上限に達しているためです。 加算対象期間の起点が令和6年1月1日に固定されている経過措置は、贈与を令和6年から始めた人にとっては、実質的に令和12年で完成します。

④ その加算が、相続税をいくら増やすか

「加算額 × 相続税の税率」という掛け算では出ません。 相続税は法定相続分課税方式で計算します。手順は次のとおりです。

  1. 各人の課税価格を合計する(ここに生前贈与加算も入る
  2. 基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を引く
  3. 残りを法定相続分で分けたものと仮定して、それぞれに税率を掛ける
  4. それを合計したものが相続税の総額
  5. 相続税の総額を、実際に取得した課税価格の割合で各人に割り振る

設例の法定相続人は3人なので、基礎控除は4,800万円です。加算額ごとに計算すると次のようになります。

課税価格の合計額相続税の総額子A子B
加算が無い場合(比較の基準)6,000万円1,200,000円0円300,000円300,000円
令和8年に相続が開始(加算330万円)6,330万円1,530,000円0円442,300円362,500円
令和12年以後に相続が開始(加算670万円)6,670万円1,870,000円0円608,300円420,500円
母の納付税額が0円なのは、配偶者の税額軽減によるものです。母の課税価格3,000万円は法定相続分相当額(課税価格の合計額の2分の1)以下なので、算出税額が全額軽減されます。子A・子Bの額は、相続税の総額を各人の課税価格の割合で按分し、100円未満を切り捨てたものです。実際の申告では按分割合の端数処理の仕方によって数百円前後することがあります。

ここで見るべきは子Bの列です。

子Bは贈与を1円も受けていません。 それでも負担は300,000円から420,500円に増えています。加算によって相続税の総額そのものが増え、その総額を全員で分け合うからです。

生前贈与加算は、贈与を受けた本人の税額だけを動かすものではありません。 きょうだいのうち一人だけに贈与していた場合、その事実は他のきょうだいの納税額に現れます。

⑤ 払った贈与税は、戻ってこない

加算された贈与について贈与税を納めていた場合、その贈与税は相続税から差し引けます。 相続税法第19条第1項はこう定めています。

第十五条から前条までの規定を適用して算出した金額(加算対象贈与財産の取得につき課せられた贈与税があるときは、当該金額から当該財産に係る贈与税の税額……として政令の定めるところにより計算した金額を控除した金額)をもつて、その納付すべき相続税額とする。

ここで注意すべき点が1つあります。差し引ける贈与税額は、100万円の控除をする前の価額をもとに計算します。 国税庁は質疑応答事例で、控除額の計算に使う加算対象贈与財産の価額について、こう注記しています。

相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産にあっては、100 万円控除をする前の価額となる。

つまり、100万円の控除で加算される額が減っても(ゼロになっても)、その贈与について納めた贈与税は差し引けます。 国税庁が No.4161 に載せている具体例では、3年を超える部分の贈与200万円のうち相続税の課税価格に加算されるのは100万円だけですが、差し引かれる贈与税は200万円に対応する9万円の全額です。「加算された額の分しか引けない」と考えると、引けるはずの額を取りこぼします。

しかし、差し引ききれなかった場合の定めがありません。

一方、相続時精算課税には**第33条の2「相続時精算課税に係る贈与税額の還付」**という条文があります。

当該金額を当該相続税額から控除してもなお控除しきれなかつた金額があるときは……相当する税額を還付する。

還付の規定は、相続時精算課税にだけ置かれています。 暦年課税で高い税率の贈与税を払っていた場合、その額が相続税を上回っても、上回った分は戻りません。

なお、年110万円の贈与を続けていた設例では、そもそも納めた贈与税がありません。 基礎控除以下なので贈与税はゼロで、差し引ける贈与税額もゼロです。 加算された額は、そのまま相続税の課税価格を増やします。

「贈与税を払っていないから加算もされない」と考えるのは誤りです。国税庁は「加算対象期間内に贈与されたものであれば贈与税がかかったかどうかに関係なく加算します。したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります」としています。なお、相続開始の年に受けた贈与で加算対象となるものは、相続税法第21条の2第4項により贈与税の課税価格には算入されません。

⑥ 加算されない贈与が4つある

すべての贈与が加算されるわけではありません。 国税庁は、加算しない贈与財産として4つを挙げています。

加算しない財産いま新しく使えるか(2026年9月時点)
(1)贈与税の配偶者控除の適用を受けているまたは受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額使える(相続税法の本則。期限の定めなし)
(2)直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額令和8年12月31日まで
(3)直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額使えない(令和8年3月31日で終了)
(4)直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額令和9年3月31日まで

左の2列は国税庁の記述そのままですが、右の列は別の話です。 加算されないという扱いは、過去に適用を受けた分について今も生きています。しかし、これから新しく使えるかどうかは、特例ごとの適用期限で決まります。

(3)の教育資金の一括贈与は、すでに終わっています。

この特例は、令和8年3月31日までとされていた適用期限が延長されずに終了することとされたため、令和8年4月1日以後については、この特例の適用を受けることはできません。ただし、令和8年3月31日までにこの特例の適用を受けた信託受益権または金銭等については、引き続きこの特例が適用されます。

新しく始めることはできませんが、すでに口座を開設している人には制度が続いています。 だから(3)は表から消えないのです。残額の扱いは「教育資金の一括贈与 ― 終わった制度の残額はどうなるか」で扱っています。

(3)と(4)には続きがあります。

(上記の金額のうち、贈与者死亡時の管理残額については、相続等により取得したものとみなして、相続税の課税価格に加算される場合があります。)

非課税の適用を受けた額そのものは加算されないが、使い残しは別の規定で加算されることがある、という二段構えです。教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与をすでに使っている場合は、この点を分けて考える必要があります。

もう一つ、加算の対象になるのは「相続等により財産を取得した人」への贈与だけです。

相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人から加算対象期間に暦年課税に係る贈与によって取得した財産があるときは、その人の相続税の課税価格にその財産の贈与時の価額を加算します。

判定するのは「相続人かどうか」ではなく「実際に財産を取得したかどうか」です。 この点は「贈与税の110万円は2種類ある」で詳しく扱っています。

この「取得した人」には例外が付いています。国税庁は上の文の「財産を取得した人」に※を付し、「被相続人から相続や遺贈により、……管理残額以外の財産を取得しなかった人(相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得している人を除きます。)は含まれません」としています。教育資金・結婚子育て資金の管理残額だけを取得した人は、それだけでは加算の対象になりません。

あなたの数字で確かめる手順

① 相続開始日を仮に置いて、加算対象期間の起点を出す

相続開始日が令和8年12月31日まで   → 起点 = 相続開始日の3年前の応当日
相続開始日が令和9年1月1日〜令和12年12月31日 → 起点 = 令和6年1月1日
相続開始日が令和13年1月1日以後     → 起点 = 相続開始日の7年前の応当日

② 3年以内の境目の日を出す

3年以内の境目 = 相続開始日から遡って3年前の日(その日を含む)

この日以後の贈与が「3年以内」、この日より前の贈与が「3年を超える部分」です。 年ではなく月日まで見てください。

③ 贈与を2つに仕分けて、加算額を出す

加算額 = 3年以内の贈与の合計
       + max(0、3年を超える部分の合計 - 100万円)

100万円は受贈者ごとに一度だけです。 年ごとではありません。

④ 加算した後の課税価格で、基礎控除と比べる

相続税の基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

比べるのは加算した後の金額です。 加算前は基礎控除以下でも、加算した結果で超えることがあります。判定は必ず加算後に行ってください。

⑤ 納めた贈与税があれば控除するが、上限は相続税額

差し引けるのは、加算対象贈与財産に対応する贈与税額です。3年を超える部分については、100万円の控除をする前の価額をもとに計算します。 加算税・延滞税・利子税は含まれません。そして差し引ききれない分は戻りません。

まとめ

  • 相続税法第19条は「相続の開始前七年以内」と定めているが、3年を7年に延ばす改正の対象は令和6年1月1日以後の贈与なので、いきなり7年分が加算されるわけではない
  • 相続開始日が令和8年12月31日までなら、加算されるのは相続開始前3年以内の贈与だけ。 令和9年1月1日から令和12年12月31日までは「令和6年1月1日から死亡の日までの間」、丸7年になるのは令和13年1月1日以後
  • 100万円の控除だけ「令和9年1月2日以後」とされているのは、令和9年1月1日に相続が開始すると、加算対象期間の起点と3年前の日が同じ令和6年1月1日になり、控除の対象が1日も存在しないため
  • 境目は年ではなく日。 国税庁の設例では、相続開始日が令和10年4月1日のとき、令和7年3月15日の贈与と令和7年5月20日の贈与で扱いが分かれる
  • 100万円は総額であり、かつ受贈者ごと。 同じ設例で長男は500万円、長女は750万円が加算されている
  • 毎年110万円を令和6年から贈与している場合、加算額は令和8年330万円 → 令和9年340万円 → 令和10年450万円 → 令和11年560万円 → 令和12年670万円と伸び、この設例では令和12年で頭打ちになる
  • 令和9年の増え方が小さい(330万円→340万円)のは、3年を超える部分が110万円しかなく、100万円の控除がほぼ吸収するため。控除は増えないので、翌年以降は効かなくなる
  • 加算は相続税の総額を動かすので、贈与を受けていない相続人の税額も増える。 設例では子Bの負担が300,000円から420,500円になった
  • 納めた贈与税は相続税から差し引けるが、差し引ききれなくても還付されない。 還付の規定(第33条の2)は相続時精算課税にだけある
  • 差し引ける贈与税額は、3年を超える部分については100万円の控除をする前の価額で計算する。 100万円の控除で加算される額がゼロになっても、その贈与について納めた贈与税は差し引ける
  • 贈与税がかからなかった贈与も加算される。 110万円以下の贈与も、死亡した年の贈与も対象
  • 加算しない贈与財産は4つ(配偶者控除・住宅取得等資金・教育資金・結婚子育て資金)。ただし教育資金と結婚・子育て資金は、管理残額が別の規定で加算されることがある
  • 「加算されない」ことと「これから使える」ことは別。 教育資金の一括贈与は令和8年3月31日で終了しており令和8年4月1日以後は新たに使えない。住宅取得等資金の非課税は令和8年12月31日まで、結婚・子育て資金の一括贈与は令和9年3月31日まで

加算対象期間は、これから4年かけて少しずつ伸びていきます。 「まだ3年だから」と「もう7年だから」のどちらも、いまの時点では正確ではありません。

よくある質問

生前贈与の7年ルールは、もう始まっているのですか。

条文としては始まっていますが、加算される期間はまだ3年です。国税庁は相続開始日に応じて加算対象期間を3つに分けており、被相続人の相続開始日が令和8年12月31日までであれば「相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)」とされています。したがって2026年中に相続が開始した場合、加算されるのは3年以内の贈与だけです。相続開始日が令和9年1月1日から令和12年12月31日までであれば、加算対象期間は「令和6年1月1日から死亡の日までの間」になります。ただしこの区分の初日である令和9年1月1日は、期間の起点(令和6年1月1日)と死亡の日から遡って3年前の日(令和6年1月1日)が同じ日になるため、期間はちょうど3年です。加算対象期間が3年を超えるのは令和9年1月2日以後に相続が開始したときからです。丸7年になるのは令和13年1月1日以後に相続が開始したときからです。なお改正の対象は令和6年1月1日以後の贈与なので、令和5年12月31日以前の贈与は、3年以内であれば加算され、3年より前であれば加算されません。

なぜ国税庁は「令和9年1月2日以後」と書いているのですか。令和9年1月1日ではないのですか。

100万円の控除が意味を持つ最初の日が令和9年1月2日だからです。この控除は「加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産」に対するものです。相続開始日が令和9年1月1日の場合、加算対象期間の起点は令和6年1月1日で、死亡の日から遡って3年前の日も令和6年1月1日です。つまり加算対象期間の全部が「相続開始前3年以内」に収まり、控除の対象になる部分が1日も存在しません。相続開始日が1日ずれて令和9年1月2日になると、令和6年1月1日という1日分だけが3年以内から外れ、そこではじめて控除の出番が生まれます。国税庁が加算対象期間の区分を「令和9年1月1日から」と書きながら、100万円の控除だけ「令和9年1月2日以後」と書き分けているのは、この1日の差によるものです。

延長された部分の100万円は、毎年100万円ですか。

いいえ、総額100万円です。国税庁は「加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その財産の贈与時の価額の合計額から総額100万円までは相続税の課税価格に加算されません」としています。年ごとに100万円ずつ引けるのではなく、3年を超える部分をすべて合計したうえで、そこから一度だけ100万円を引きます。ただしこの控除は受贈者ごとに判定します。国税庁の設例では、同じ被相続人から贈与を受けていた長男と長女それぞれについて100万円を控除し、長男は500万円、長女は750万円が加算されるとしています。なお、この控除には相続開始前3年以内の贈与は含まれません。3年以内の贈与は金額にかかわらず全額が加算されます。

加算されるかどうかは、贈与した年で決まりますか。

決まりません。年ではなく日で決まります。相続開始前3年以内とは「死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間」なので、境目は暦年の区切りではなく相続開始日の応当日です。国税庁の設例では、相続開始日が令和10年4月1日のとき、令和7年3月15日の贈与は3年以内に入らず100万円の控除の対象となる一方、令和7年5月20日の贈与は3年以内に入って全額が加算されています。同じ令和7年の贈与でも扱いが分かれるということです。加算対象期間の起点も同じで、経過措置の期間中は令和6年1月1日に固定されているため、相続開始が遅くなるほど加算対象期間は1日ずつ伸びていきます。

110万円以下の贈与なら、贈与税がかからないので加算もされないのではありませんか。

加算されます。国税庁は「加算対象期間内に贈与されたものであれば贈与税がかかったかどうかに関係なく加算します。したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります」としています。贈与税がかからなかったことと、相続税の課税価格に加算されないことは別の話です。むしろ年110万円ちょうどの贈与を続けていた場合、納めた贈与税がゼロなので相続税から差し引ける贈与税額もゼロで、加算された額はそのまま相続税の課税価格を増やします。なお、相続開始の年に受けた贈与で加算の対象となるものは、相続税法第21条の2第4項により贈与税の課税価格には算入されません。贈与税ではなく相続税で扱う、ということです。

加算されたぶんについて払った贈与税は、返ってきますか。

相続税から差し引くことはできますが、差し引ききれなくても還付されません。相続税法第19条第1項は、加算対象贈与財産について課された贈与税がある場合に「当該金額から当該財産に係る贈与税の税額……を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする」と定めるだけで、控除しきれない場合の扱いを置いていません。一方、相続時精算課税には第33条の2に「相続時精算課税に係る贈与税額の還付」という条文があり、「当該金額を当該相続税額から控除してもなお控除しきれなかつた金額があるときは……相当する税額を還付する」と定められています。還付の規定は精算課税にだけ置かれています。暦年課税で高い税率の贈与税を払っていた場合、その税額が相続税を上回っても、上回った分は戻ってきません。なお、差し引ける贈与税額は、3年を超える部分については100万円の控除をする前の価額をもとに計算します。国税庁は「相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産にあっては、100 万円控除をする前の価額となる」としており、100万円の控除で加算される額がゼロになった場合でも、その贈与について納めた贈与税は相続税額から差し引けます。

加算されない贈与もあるのですか。

あります。国税庁は加算しない贈与財産として4つを挙げています。①贈与税の配偶者控除の適用を受けているまたは受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額、②直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち非課税の適用を受けた金額、③直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち非課税の適用を受けた金額、④直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち非課税の適用を受けた金額です。ただし③と④については、贈与者が亡くなった時点の管理残額が、相続等により取得したものとみなして相続税の課税価格に加算される場合があります。非課税の適用を受けた額そのものは加算されないが、使い残しは別の規定で加算されることがある、という二段構えになっています。なお、この4つは「加算されない」という扱いの話であって、これから新しく使えるかどうかは別です。②の住宅取得等資金の非課税は令和8年12月31日まで、④の結婚・子育て資金の一括贈与は令和9年3月31日までであり、③の教育資金の一括贈与は「令和8年3月31日までとされていた適用期限が延長されずに終了することとされたため、令和8年4月1日以後については、この特例の適用を受けることはできません」(国税庁)。すでに適用を受けた分については、いずれも加算されない扱いがそのまま続きます。

贈与を受けていない相続人の相続税は、変わらないのではありませんか。

変わります。相続税は各人の財産にそれぞれ税率を掛けるのではなく、法定相続分課税方式で計算するためです。まず全員の課税価格を合計し、そこに生前贈与加算を含めたうえで基礎控除を引き、残りを法定相続分で分けたと仮定して税率を掛け、合計して相続税の総額を出します。その総額を、実際に取得した課税価格の割合で各人に割り振ります。したがって誰か一人への贈与が加算されると相続税の総額そのものが増え、贈与を受けていない相続人にもその増えた総額の一部が回ってきます。本記事の設例では、贈与を1円も受けていない子Bの負担が300,000円から420,500円に増えました。加算は、加算された本人だけの問題ではありません。

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