税金(教育費)

教育資金の一括贈与 ― 終わった制度の残額はどうなるか

「教育資金の一括贈与」を調べると、使うべきかどうかを論じた記事が並びます。

ところが、この制度はもう使えません。

(注1)この特例は、令和8年3月31日までとされていた適用期限が延長されずに終了することとされたため、令和8年4月1日以後については、この特例の適用を受けることはできません。

国税庁のタックスアンサーに、はっきり書かれています。 そしてこの注書きには、続きがあります。

ただし、令和8年3月31日までにこの特例の適用を受けた信託受益権または金銭等については、引き続きこの特例が適用されます。

すでに契約している人にとっては、まだ終わっていません。

結論

終わったのは入口だけです。 新しく口座を開くことはできなくなりましたが、すでに開いている口座の中では、制度がそのまま動いています。

そして、その口座には出口が3つあります。 使い切るか、贈与者が亡くなるか、契約が終わるかです。このうち使い切る以外の2つは、課税につながります。

どちらの課税になるかは、いつ拠出したかで変わります。 制度は途中で何度も改正されており、同じ口座の中でも、拠出の時期によって扱いが分かれます。

さらに、受贈者が孫かどうかでも変わります。 この制度は祖父母から孫へという使われ方が多いため、多くの人がこの分岐に当たります。

本記事は課税の仕組みを整理するもので、口座の解約や使い方を勧めるものではありません。実際の残高と拠出時期は、取扱金融機関の営業所等でご確認ください。

計算の前提

項目条件
制度直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税(措法70条の2の2)
非課税の限度1,500万円(学校等以外への支払は500万円が限度)
受贈者契約時30歳未満
贈与税の計算他に贈与がない前提。基礎控除110万円

① 終わったのは「入口」だけ

令和8年3月31日まで令和8年4月1日以後
新しく口座を開くできたできない
すでにある口座続く続く

したがって、いま問題になるのは「これから使うべきか」ではありません。 すでに口座を持っている人が、残高をどう着地させるかです。

② 出口は3つ

出口何が起きるか
教育資金として使い切る課税されない
贈与者が死亡する原則として管理残額が相続等により取得したものとみなされる(相続税
契約が終了する残額が贈与があったこととされる(贈与税

使い切る以外の2つは、どちらも課税につながります。

③ 贈与者が死亡した場合 ― 拠出の時期で3つに分かれる

あらましは、管理残額をこう定義しています。

契約期間中に贈与者が死亡した場合には、原則として、その死亡日における非課税拠出額から教育資金支出額(学校等以外の者に支払われる金銭については、500万円を限度とします。)を控除した残額のうち、一定の計算をした金額(以下「管理残額」といいます。)を、その贈与者から相続等により取得したものとみなされます。

そして、いつ拠出したかで扱いが分かれます。

拠出の時期相続税の課税対象になるか
平成31年3月31日以前ならない
平成31年4月1日〜令和3年3月31日死亡前3年以内の取得に限ってなる
令和3年4月1日以後なる(下の例外に当たる場合を除く)

同じ口座の中でも、拠出した時期によって結論が違います。 何年かに分けて拠出した場合は、それぞれを分けて見る必要があります。

23歳未満などの例外

あらましは3つの例外を挙げています。

受贈者が贈与者の死亡日において、①23歳未満である場合、②学校等に在学している場合又は③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合(②又は③に該当する場合は、その旨を明らかにする書類を上記の届出と併せて提出した場合に限ります。……)は、相続等によって取得したものとはみなされません。

②と③は、書類を出さなければ例外になりません。 該当するだけでは足りません。

その例外が外れる場合

ここが見落とされやすいところです。

ただし、令和5年4月1日以後に贈与者から信託受益権等の取得をし、この非課税制度の適用を受けた場合で、同日以後にその贈与者が死亡したときにおいて、その贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるとき(管理残額を加算する前の相続税の課税価格の合計額で判定します。)は、その信託受益権等に対応する部分が、相続等により取得したものとみなされます。

贈与者の遺産が5億円を超えると、23歳未満でも例外が使えません。

孫が受け取っている場合は2割加算

受贈者が贈与者の**子以外(孫など)**の一定の者である場合には、管理残額のうち、令和3年4月1日以後に贈与により取得した信託受益権等に対応する部分の相続税額について、相続税額の2割に相当する金額を加算する規定……が適用されます。

Q&Aは、拠出の時期でさらに分けています。

拠出の時期2割加算
平成31年4月1日〜令和3年3月31日(死亡前3年以内の取得に限る)適用はありません
令和3年4月1日以後適用されます

ただし、この区分けは「23歳未満である場合等」に当たらない人の話です。 あらましの注書きにこうあります。

贈与者の死亡日において、受贈者が孫等であり、かつ、23歳未満である場合等に該当し、管理残額が相続等により取得したものとみなされる場合には、その管理残額の全額が2割加算の対象となります。

つまり、23歳未満なのに5億円超で課税される場合は、上の表の「適用はありません」の分も含めて全額が2割加算になります。 例外が外れたときは、二重に不利に働きます。

この制度は祖父母から孫への贈与が典型です。 つまり2割加算に当たるケースが多くなります。

相続税は、加算された金額に税率を掛けて出すものではありません。課税価格の合計額から基礎控除を引き、法定相続分で分けたと仮定して計算します。手順は「贈与税の110万円は2種類ある」で扱っています。

管理残額しか受け取っていないなら、暦年贈与の加算は受けない

ここは見落とされやすい取扱いです。 Q&Aはこう書いています。

相続税の課税価格の計算に当たって、贈与者から相続(遺贈)により管理残額以外の財産を取得しなかった受贈者(注2)については、加算対象期間内に被相続人から暦年贈与に係る贈与によって取得した財産の相続税の課税価格への加算の規定(相続税法第19条)の適用はありません

つまり、管理残額だけを取得した人は、暦年課税の生前贈与加算の対象になりません。

ここでいう加算対象期間は、Q&Aによれば相続開始日が令和8年12月31日までなら相続開始前3年以内、令和9年1月1日から令和12年12月31日までなら令和6年1月1日から死亡の日まで、令和13年1月1日以後なら相続開始前7年以内です。「7年ルール」と呼ばれますが、7年まで遡るのは令和13年以後の相続からです。

ただし条件があります。

(注)2 死亡保険金等や死亡退職金等のみなし相続(遺贈)財産を取得している場合には、その受贈者は、上記の「贈与者から相続(遺贈)により管理残額以外の財産を取得しなかった受贈者」には当たりませんのでご注意ください。

生命保険金を受け取っていれば、この扱いは使えません。 暦年贈与の加算も受けることになります。

生前贈与加算そのものは「贈与税の110万円は2種類ある」で扱っています。

④ 契約が終了した場合 ― 残額に贈与税

あらましは5つの終了事由を挙げています。

終了事由終了の日
受贈者が30歳に達したこと(その日に学校等に在学または教育訓練を受けていて届け出た場合を除く)30歳に達した日
30歳以上の受贈者が、その年中に学校等に在学した日または教育訓練を受けた日があることを届け出なかったことその年の12月31日
受贈者が40歳に達したこと40歳に達した日
口座の残高が0になり、契約を終了させる合意があったこと合意に基づき終了する日
受贈者が死亡したこと死亡した日

⑴〜⑷の事由に該当したことにより、教育資金口座に係る契約が終了した場合に、非課税拠出額から教育資金支出額を控除(相続等により取得したものとみなされた管理残額がある場合には、その管理残額も控除します。)した残額があるときは、その残額が終了の日の属する年の受贈者の贈与税の課税価格に算入されます(⑸の場合には、贈与税の課税価格に算入されるものはありません)。

受贈者が死亡した場合だけ、課税されません。

期限が3つあります

いつまでに何を
30歳に達した日の属する月の翌月末日まで在学中・教育訓練中で契約を続けるなら、取扱金融機関へ届け出る
契約が終了する日の属する月の翌月末日までまだ出していない領収書等を提出する
終了の日の属する年の翌年2月1日〜3月15日贈与税の申告

30歳の届出を忘れると、その日で契約が終わります。 在学中であっても、届け出ていなければ終了事由に当たります。

贈与者が亡くなった場合の「確認書類等」は、その贈与者に係る相続税の期限内申告書の提出期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月)を経過した後、速やかに提出することとされています。

特例税率が使えないことがある

※ 暦年課税で申告を行う場合、令和5年4月1日以後に取得した信託受益権等に対応する部分は、一般税率が適用されます。

直系尊属からの贈与なのに、18歳以上の子や孫に使う特例税率が適用されません。

残額基礎控除後一般税率特例税率
100万円0円0円0円0円
200万円90万円90,000円90,000円0円
300万円190万円190,000円190,000円0円
500万円390万円530,000円485,000円45,000円
800万円690万円1,510,000円1,170,000円340,000円
1,000万円890万円2,310,000円1,770,000円540,000円
1,500万円1,390万円4,505,000円3,660,000円845,000円

残額が大きいほど差が開きます。

530,000円残額500万円1,510,000円残額800万円2,310,000円残額1,000万円
残額500万円残額800万円残額1,000万円
特例税率で計算した場合の贈与税485,0001,170,0001,770,000
一般税率になることで増える分45,000340,000540,000
合計530,0001,510,0002,310,000

下の色が特例税率で計算した贈与税、上に乗っているのが一般税率になることで増える分です。残額が大きくなるほど、上の色の割合も増えます。使い切れずに残すと、税率の面でも不利になります。

契約終了時に残額があった場合の贈与税(他に贈与がない前提・基礎控除110万円)。令和5年4月1日以後に取得した信託受益権等に対応する部分には一般税率が適用される。

⑤ 「使い道」の範囲も年齢で狭まる

23歳を過ぎると、学校等以外への支払の範囲が狭くなります。

(注)受贈者が23歳に達した日の翌日以後に支払われる③〜⑤の金銭については、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用に限ります。

③〜⑤は、学習塾・そろばんなどの役務の提供の対価、スポーツや文化芸術の指導への対価、それらで使用する物品の購入費です。

つまり23歳を過ぎると、習い事や塾では使えなくなります。 学校等への支払(入学金・授業料など)は引き続き対象です。

残高を使い切る計画を立てるときは、この年齢が効いてきます。

あなたの数字で確かめる手順

① 残高と拠出の時期を金融機関に確認する

必要なのは「いまの残高」と「いつ、いくら拠出したか」の2つです。 どちらも取扱金融機関の営業所等で確認できます。拠出の時期が③の3区分のどれに当たるかで、相続税の扱いが変わります。

② 受贈者の年齢から、いつ契約が終わるかを出す

30歳に達する日 … 在学中・教育訓練中で届け出れば延長できる
40歳に達する日 … ここが最終

23歳を過ぎると使い道が狭まるので、そこも合わせて見てください。

③ 使い切れるかを見積もる

残高 ÷ 残りの期間で、年あたりいくら使う必要があるかが出ます。 学校等への支払で消化できる見込みがあるかを確認してください。

④ 使い切れない場合の税額を、両方で出す

贈与者が先に亡くなるなら相続税、契約が先に終わるなら贈与税です。 どちらになるかで税額が変わるため、両方を出したうえで比べることになります。

贈与税は上の表で概算できます。 相続税は遺産全体で計算するため、単独では出せません。

⑤ 孫が受贈者なら2割加算を織り込む

令和3年4月1日以後の拠出に対応する部分には、相続税額の2割加算があります。

まとめ

  • この特例は令和8年3月31日で終了した。令和8年4月1日以後は新しく使えない
  • ただしすでに適用を受けたものには引き続き適用される。終わったのは入口だけ
  • 出口は3つ。使い切る(課税なし)/贈与者の死亡(相続税)/契約終了(贈与税)
  • 贈与者が死亡した場合、拠出の時期で3つに分かれる。平成31年3月31日以前は対象外、平成31年4月1日〜令和3年3月31日は死亡前3年以内、令和3年4月1日以後は原則として対象
  • 23歳未満・在学中・教育訓練中は例外。ただし在学中・教育訓練中は書類の提出が要る
  • 贈与者の遺産が5億円を超えると、その例外が使えない(令和5年4月1日以後の拠出分)
  • 孫などが受贈者なら相続税額の2割加算(令和3年4月1日以後の拠出分)。ただし23歳未満などで例外が外れて課税される場合は、管理残額の全額が2割加算の対象になる
  • 契約終了時の残額には贈与税。令和5年4月1日以後の拠出分には一般税率が適用される。 残額1,000万円なら特例税率との差は540,000円
  • 23歳を過ぎると、学習塾や習い事では使えなくなる(教育訓練給付金の対象となる教育訓練に限られる)
  • 管理残額しか受け取っていない人は、暦年贈与の生前贈与加算を受けない。 ただし死亡保険金等を受け取っていれば対象になる
  • 期限が3つある。30歳の届出は翌月末日まで、領収書の提出は終了月の翌月末日まで、贈与税の申告は翌年2月1日〜3月15日

制度が終わったからこそ、口座の出口を先に決めておく意味があります。 まず残高と拠出の時期を、金融機関で確認してみてください。

よくある質問

教育資金の一括贈与は、まだ使えますか?

使えません。国税庁は「この特例は、令和8年3月31日までとされていた適用期限が延長されずに終了することとされたため、令和8年4月1日以後については、この特例の適用を受けることはできません」としています。ただし同じ注書きで「令和8年3月31日までにこの特例の適用を受けた信託受益権または金銭等については、引き続きこの特例が適用されます」ともされています。つまり新しく始めることはできませんが、すでに教育資金口座を開設している人には制度がそのまま続いています。

すでに契約している場合、これから何が起きますか?

出口が3つあります。ひとつは教育資金として使い切ること。この場合は課税されません。ふたつめは契約期間中に贈与者(祖父母や父母)が死亡した場合で、原則として管理残額を相続等により取得したものとみなされ、相続税の対象になります。みっつめは契約そのものが終了した場合で、残額があれば契約終了の日の属する年に贈与があったこととされ、贈与税の対象になります。使い切る以外の2つは課税につながるため、残高と使い道を早めに確認しておく意味があります。

「管理残額」とは何ですか?

贈与者が死亡した日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、一定の計算をした金額をいいます。非課税拠出額は教育資金非課税申告書などに記載された金額の合計(1,500万円が限度)、教育資金支出額は金融機関等で領収書等により支払の事実が確認され記録された金額の合計です。学校等以外の者に支払われる金銭については500万円が限度とされています。贈与者の死亡日における管理残額は、各金融機関等の営業所等で確認できます。

贈与者が死亡すると、残額には必ず相続税がかかりますか?

いつ拠出したかで扱いが3つに分かれます。平成31年3月31日以前の拠出分は相続税の課税対象になりません。平成31年4月1日から令和3年3月31日までの拠出分は、死亡前3年以内の取得に限って課税対象になります。令和3年4月1日以後の拠出分は、原則として課税対象です。ただし受贈者が死亡日において23歳未満である場合、学校等に在学している場合、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合は、相続等により取得したものとはみなされません。

23歳未満なら安心なのですか?

例外に当たらない場合があります。国税庁のあらましは「令和5年4月1日以後に贈与者から信託受益権等の取得をし、この非課税制度の適用を受けた場合で、同日以後にその贈与者が死亡したときにおいて、その贈与者に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるとき(管理残額を加算する前の相続税の課税価格の合計額で判定します。)は、その信託受益権等に対応する部分が、相続等により取得したものとみなされます」としています。つまり贈与者の遺産が5億円を超えると、23歳未満などの例外が適用されません。

孫が受け取っている場合は何か違いますか?

相続税額の2割加算があります。国税庁のあらましは「受贈者が贈与者の子以外(孫など)の一定の者である場合には、管理残額のうち、令和3年4月1日以後に贈与により取得した信託受益権等に対応する部分の相続税額について、相続税額の2割に相当する金額を加算する規定が適用されます」としています。平成31年4月1日から令和3年3月31日までの拠出に対応する部分には適用がありません。ただしこの区分けは「23歳未満である場合等」に当たらない場合の話です。あらましの注は「贈与者の死亡日において、受贈者が孫等であり、かつ、23歳未満である場合等に該当し、管理残額が相続等により取得したものとみなされる場合には、その管理残額の全額が2割加算の対象となります」としています。祖父母から孫へという典型的な使われ方をしている制度なので、この2割加算に該当するケースは少なくありません。なお相続税は加算された金額に税率を掛けて出すものではなく、遺産全体から基礎控除を引き、法定相続分で分けたと仮定して計算します。

契約はいつ終わりますか?

国税庁のあらましは5つの終了事由を挙げています。受贈者が30歳に達したこと(その日に学校等に在学しているか教育訓練を受けていて、その旨を金融機関等に届け出た場合を除きます)、30歳以上の受贈者がその年中に学校等に在学した日または教育訓練を受けた日があることを届け出なかったこと(その年の12月31日に終了)、受贈者が40歳に達したこと、口座の残高がゼロになり契約を終了させる合意があったこと、受贈者が死亡したことの5つです。受贈者が死亡した場合を除き、残額があれば贈与税の課税価格に算入されます。

契約終了時の残額には、直系尊属からの贈与として特例税率が使えますか?

拠出の時期によります。国税庁のあらましは「暦年課税で申告を行う場合、令和5年4月1日以後に取得した信託受益権等に対応する部分は、一般税率が適用されます」としています。一般税率は、18歳以上の子や孫が直系尊属から受けた贈与に使う特例税率より高くなります。たとえば残額500万円を一度に贈与税の対象とする場合、基礎控除後390万円に対して一般税率なら530,000円、特例税率なら485,000円で、45,000円の差が出ます。残額1,000万円なら差は540,000円です。

出典